求人内容と違う労働条件の表示は違法?転職時・転職後の注意点も紹介します

転職活動に関連するトラブルの一つとして求人票に記載されていた内容と実際の仕事内容が異なることが挙げられます。この記事では、求人票に記載された情報と相違が発生してしまう理由から、相違を回避するポイントなどをご紹介します。

そもそも求人票とは?

求人票とは、企業が人材を募集する際に用いる情報提供ツールのひとつで、おもにハローワークや民間の人材紹介会社などで提示されています。求人票には具体的な職種や仕事内容、賃金や福利厚生など、求職者が求める情報が網羅されています。ただ、稀に求人票に掲載されている情報と実際の労働条件が違うなどのトラブルが発生することもあり注意が必要です。

求人票と労働条件の違い

「求人票」とは、求人時に提示される労働条件を記載したツールのことです。一方「労働条件」は雇用契約書に記載された労働時間や賃金など、契約上必要となる重要な要素のことです。

労働条件には次のような要素が含まれます。

・業務内容

・就業場所、労働契約の期間、始業時刻と終業時刻、休日

・賃金(金額や支払方法、締め支払日)

・福利厚生

求人票に記載されている情報と実際の労働条件とは同一の情報が望ましいです。しかし、雇用する側の内部状況も日々変わることが多く、実際の労働条件と求人票の内容が相違するケースが発生します。

求人票の内容と労働条件に相違があると違法?

求人票の内容と実際の労働条件が相違している場合、法的に問題となる可能性はあるものの、一概に違法とは言い切れません。労働契約は、雇用契約書に記載されている条件を労働者と雇用主が合意してはじめて成立します。雇用契約書に書かれた条件と実際の労働条件が違うと違法ですが、労働者側も面接時や雇用契約書へのサイン時に条件を確認する機会があるわけですから、一概に雇用主に過失があるとはいえません。

雇用主側に悪意があるなど、虚偽の求人広告を出すことは法律で禁止されています。ただ、採用の過程で雇用条件が変わったのなら、雇用主は労働者へ新しい条件を提示したうえで納得してもらい、入社手続きを行えば良いのです。

参考:職業安定法 第5章「罰則」第65条第9号

第六十五条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、これを六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

九 虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事したとき

引用:法令検索 e-GOV職業安定法

職安法や労基法に違反した場合はどうなる?

もし求人票が労基法に違反している場合、使用者は法律に基づく処罰の対象となります。場合によっては損害賠償の請求を受ける可能性もあるため、雇用主側にとっては大きなリスクになるといえるでしょう。

求人票と実際の労働条件に相違が生まれてしまう理由

では、なぜ求人票と実際の労働条件に相違が生まれてしまうのでしょうか?

求人票の内容と実際の労働条件に相違が生じるのは、雇用主側に問題があるケースがほとんどです。特に採用経験が少ない企業では人事採用の専門担当がいない場合もあり、人為的ミスが原因で求人票と違った労働条件が提示されるケースがあります。また、多くの応募者を集めるために魅力的なキャッチフレーズで求人票を書くことも多く、労働者側が間違った解釈をしてしまうケースも見受けられます。

企業側の採用方法が確立されていない

企業側に採用に関する経験値が低く、人事や総務部に熟練した社員がいない場合、求人情報と労働条件に齟齬が生じることがあります。

また企業側が新たな事業領域に進出するために求人を出す場合、仕事の内容や労働時間などがはっきり決まっていないことも多く、「実際に働いてみると求人票の条件と違った」などのトラブルが発生するかもしれません。

そのため、労働者側としても実際の入社時には雇用契約書に記載された条件をチェックし、相違がないか念入りに確認する必要があります。

応募者に対する説明が足りていない

面接時や入社時への「応募者への説明不足」も、求人票と労働条件が相違する原因のひとつです。

求人票に記載できる内容には限りがあるため、面接時はもちろん雇用契約書を締結する際には雇用主側が細かな条件を提示し労働者と合意する必要があります。

企業面接は雇用主と労働者それぞれが相互で条件を確認する場です。働きはじめてからトラブルに巻き込まれるのを避けるためにも、応募者側も条件をよく確認するよう心がけましょう。

求人広告のキャッチフレーズだけが強い

求人広告のキャッチフレーズに重きを置きすぎている場合も、実際の労働条件と乖離する場合があります。特に売り手市場のタイミングで応募者が少ない場合、企業側は1件でも多くの応募を集めるために、情報を過大表示したり逆に厳しい一面を表示しなかったりする場合があるかもしれません。

たとえば「実績次第で月収100万円も可能!」「残業はほとんどなし!」など魅力的な条件を見て入社してはみたものの、実際には低賃金で残業も頻繁に発生するなどの事例も報告されています。

求人情報と違うトラブルの種類

ここからは実際の労働条件と求人情報が違うトラブル事例をいくつかご紹介します。特に給与や労働時間に関連した問題を中心に見ていきましょう。

給与が低い

求人票で提示されている給与と実際の給与が違うなど、報酬に関するトラブルは典型的な例です。たとえば営業職を募集する企業で、「報酬は固定給と思っていたが実際には完全歩合制だった」という例もあります。

また賞与に関しても、固定賞与が占める部分はごく僅かで賞与のほとんどは実績連動型だったため、実績が上がらない新入社員時代にはほとんど賞与が支給されない場合もあります。

仕事の内容が違う

求人票に書かれていた内容と、実際の仕事の内容が違うケースもよくあるトラブルのひとつです。事務仕事のはずが外回りの営業だった、軽作業しかないはずが体力を使う重労働だったなど、この種のトラブルは枚挙にいとまがありません。

ただしベンチャー企業やスタートアップ企業などの場合、一人の社員がいくつもの業務をこなさなければならないこともあります。

長時間労働で有給もとれない

求人情報で示された労働時間や休日と異なり、実際には長時間労働を強いられ、有給休暇などの休みも取得できないという状況も非常に問題です。

労働基準法では労働時間や休日を定めたうえで、有給休暇の取得も法律で定められています。そのため明らかに法律に違反した労働条件が強いられている場合は、然るべき機関に相談したほうがよいでしょう。

ただ、ベンチャー企業やスタートアップ企業においてはプロジェクト内容が急きょ変わることも多く、案件によってはプライベートを犠牲にしてまでも社運をかけて取り組むケースがあります。そのため「求人募集時には想定していなかったこと」が起こる可能性も否めません。

求人票と労働条件がかけ離れているときの対処方法

実際に入社してから「求人票と労働条件がかけ離れている」などの事態が発生したら、勤務先の上司や人事部に相談したり、解決できない場合は公的機関に相談したりする方法があります。以下にいくつかの対処方法を紹介します。

労働条件について上司や採用担当者と話し合う

労働条件が求人票と異なると感じたときは、すみやかに上司や採用担当者に伝えるようにしましょう。雇用主側も悪意があったわけではなく、求人票に記載された内容が相違していることを認識していない可能性があります。

企業によっては、上司に相談できない内容を匿名でも相談できる専用窓口を設置している場合があります。いずれにしても、労働者が自身の状況や心配ごとをすみやかに伝えることで理解が得られ、労働条件も改善されるかもしれません。

労働基準監督署に相談する

会社との対話だけで問題が解決しない場合、または法令違反が疑われる場合は労働基準監督署に相談しましょう。

厚生労働省の公式サイトには「労働相談コーナーの所在地」が掲載されています。労働相談コーナーは全国の労働基準監督署内に設置されており、労働条件の相違に関する相談も可能です。

<参考:茨城労働局公式サイトより>

Q:求人票をみて面接を受け、採用されました。  しかし、実際に仕事をしてみると、求人票に書かれた内容と違います。  どうしたらいいでしょう。

A:雇い入れの際に、労働条件の明示を受けましたか? 労働基準法では、法定の事項について、労働契約の締結時に、書面の交付により労働条件を明示すべきことを定めています。(中略)求人票、面接のときの説明、労働条件の通知内容には不一致はなかったが、実際仕事をしてみたら内容が違っていたという場合には、契約を破棄、つまり退職を申し出ることができます。しかし、すぐに退職というわけにはいきませんから、こういった場合には、まず事業主に労働条件通知どおりの履行を求め、それに応じてくれないといったようなときは、総合労働相談コーナーにご相談ください。   なお、労働条件は大事な事柄ですから、労働契約の締結時には十分に確認し、労働条件通知書の交付を受けることが大切です。

引用:茨城労働局「よくある質問」

退職する前に転職活動を始める

現状が改善しないと判断した場合、または自身のキャリアゴールに合わないと感じた場合は、退職して新たな仕事を探すことを考えても良いでしょう。

しかし、転職にはリスクが伴います。慌てて退職してはみたものの次の転職先が見つからないと、たちまち生活に困るかもしれません。できることなら経済的な安定を考慮し、可能な限り退職する前に転職活動を始めるのがおすすめです。

つぎの仕事を選ぶ際は、求人票だけでなく面接や情報収集を通じて、より詳細な情報を確認するとよいでしょう。

求人内容とのミスマッチをなくすためには?

求人情報と労働条件のミスマッチは、応募者だけでなく企業にとっても大きな問題です。応募者自身でも対策可能なミスマッチを防ぐための方法をいくつかご紹介します。

しっかりと企業情報を含めて情報収集をする

転職する際には求人票だけではなく、企業の背景や評判・業績など、自分で情報を集めたり身近な人から聞いたりして広範囲で情報収集をすると良いでしょう。転職先の口コミが見られるサイトもありますし、自身で企業分析をする方法もおすすめです。

応募先の企業文化や価値観を理解することで、自身のキャリアやライフスタイルに合った企業を見つけやすくなります。

労働条件を細かくチェックする

求人情報の労働条件は細かくチェックしておきましょう。給与や勤務時間、休日など基本的な項目はもちろん、残業の有無、福利厚生などについても把握しておくべきです。

また、募集開始から期間が経過している場合などは、面接時にも条件の相違がないか確認すると良いでしょう。細かな条件が変わっている可能性がありますので、面接官に遠慮なく聞くことが大切です。

転職エージェントを活用する

転職エージェントの活用も、ミスマッチを防ぐにはおすすめの方法です。転職エージェントとは、応募者と人材を募集している企業との間に立ち、双方の要望や条件を調整する役割を果たします。

求人票には掲載されていない内部事情に精通していることも多く、募集企業の経営者にも人脈があるエージェントもいます。応募するまでに応募者側の要望を伝えておき、希望条件に合う企業を探してもらえるサービスもあり、ほとんどのサービスが無料である点も魅力です。

まとめ

求人内容と労働条件のミスマッチは、場合によっては違法性を問われる可能性もありますが、そのような事態になる前に対策を講じることも可能です。

具体的には、情報収集を行う、労働条件を細かくチェックする、転職エージェントを活用するといった対策が有効です。

転職エージェントの利用は、自分一人で情報収集や分析を行うよりも効率的で確実な結果を得られるでしょう。BNGパートナーズの転職サポートサービスなら、転職時の条件確認やサポートも万全です。将来のキャリアアップを目指せる転職先を見つけるために、ひとりで転職活動をするよりも、ぜひ専門のサポートサービスに登録してみてください。