降格は違法?違法性を見極めるポイントや不当な降格の対処方法を解説

降格とは、会社での職位が下がることを指します。降格になる理由には、懲戒処分や人事異動が挙げられます。ただし、正しい手続きを踏まない降格処分は違法です。この記事では、降格する際の手順や降格になる理由、降格されたときの確認事項とともに、違法性を見極めるポイントや対処方法について解説します。

目次[非表示]

  1. 降格とは?
  2. 降格になる理由
  3. 降格されたときの確認事項
  4. 懲戒処分の違法性を見極めるポイント
  5. 人事降格の場合の違法性を見極めるポイント
  6. 不当に降格されたときの対処法
  7. まとめ

降格とは?

降格とは、部長から課長になるように、会社での職位が下がることです。降格は、人事の一部であり、正当な理由があれば従業員は拒否できません。ただし、降格させる際は正しい手順を踏まなければ、違法となる場合があります。

ここでは、降格する際の具体的手順と、降格になる理由について解説します。

降格する際の具体的手順

従業員を降格させる際は、適切な手順を踏まなければなりません。正当な理由もなく降格処分をした場合、違法になるだけではなく、従業員からの理解を得られず、関係性の悪化につながる可能性があります。降格する際の具体的な手順は、以下のとおりです。

1.事実の確認と調査

2.注意や指導の実施

3.改善や反省傾向の確認

4.就業規則の確認

5.処分内容の検討

6.処分内容の決定と通知及び実施

従業員に非があった場合でも、いきなりの降格は違法と判断される可能性があります。降格処分をする前に、注意や指導により改善を促すことが必要です。注意や指導後、一定期間を経ても改善傾向が見られない場合、指導や注意を継続します。それでも改善傾向が見られない場合に、降格処分の検討に移りましょう。

基本給の減給を伴う降格や、懲戒処分としての降格の場合、処分をだす基準や処分内容は就業規則に準じなければなりません。つまり、就業規則に降格処分についての記載がなければ、降格を実施できないということです。

降格内容が決定したら、対象となる従業員に通知し、降格を実施します。従業員の弁明内容によっては、処分撤回が必要になる可能性もあります。

降格と減給

降格による減給については、法律上では明確な規定はありません。労働基準法第91条に、減給の限度額自体は規定されているものの、あくまでも減給処分の場合に適用されるものであり、降格処分には適用されません。

降格により役職給が下がる場合は合法とされるケースが多いものの、基本給の減額については、違法と判断された判例が多くなっています。これまでの判例によると、基本給の減額が認められるには以下の条件が必要と考えられます。

・就業規則に基本給が減額される条件が規定されている

・基本給減額の決定過程に合理性があり、公正な手続きを踏んでいる

・人事評価の過程に合理性がある

参考:e-gov法令検索「労働基準法 第九十一条」

降格になる理由

降格になる主な理由は、以下の2種類です。

・懲戒処分による降格

・人事異動による降格

しかし、この2種類に該当しない、違法な降格のケースも存在します。ここでは、それぞれの降格になる理由について解説します。

懲戒処分

懲戒処分による降格は、勤務怠慢や就業規則の違反といった規律違反行為が対象です。懲戒処分となるのは以下のケースです。

勤務怠慢:度重なる遅刻や無断欠勤

就業規則違反:認められていない副業や情報の持ち出し、ハラスメント行為、備品の盗難

成績不振:明らかな成績不振や業績悪化

懲戒処分は、従業員に対する制裁が目的です。そのため、就業規則の懲戒事由に該当しなければ処分できません。また、懲戒事由に該当した場合でも、客観的にみて合理的な理由がなければ権利濫用と判断され、処分は無効になります。

参考:e-gov法令検索「労働契約法 第十五条」

人事異動

人事異動による降格は、処罰的な意味はなく、新しい部署への配置転換が理由です。人事異動による降格は、懲戒処分ではないため、会社側が自由に実施できます。これまでとは異なる業務に配属することにより、スキルアップを図るケースもあります。

降格理由の正当性を判断するのが難しいため、理不尽な降格と感じるケースもあるでしょう。給料や労働条件の変更がある場合は、本人の同意が必要です。本人の同意がない場合や、業務内容が降格前と変わらない場合は、不当な降格の可能性があります。

違法な降格

懲戒処分や人事異動による降格に該当しない、違法な降格のケースも存在します。以下のケースによる降格は違法と判断される可能性があります。

・上司の主観が理由による降格

・経営悪化による降格

・同意のない降格

・業務内容が変わらない降格

・育休取得を理由とする降格

・入院を理由とする降格

ほかにも「退職願を提出した結果、雇用形態を正社員からパート社員に変更された」といった嫌がらせのようなケースも存在します。

降格されたときの確認事項

前述したように、正当な理由や、就業規則上に降格処分に関する事項の記載がなければ降格処分はできません。そのため、降格されたときは、降格理由と就業規則を確認する必要があります。ここでは、それぞれの確認事項について解説します。

降格理由を確認する

降格された場合は、理由を確認しましょう。明確な根拠がない場合、違法行為と判断される可能性があります。たとえば、男性従業員が育休を取得したことを理由に降格となった場合、懲戒権の濫用に該当し、違法と判断されるでしょう。

就業規則を確認する

就業規則の確認も大切です。前述しているように、降格処分は、就業規則の規定に則って実施されます。そのため、就業規則に懲戒処分の対象行為や処分内容が明記されていなければ、降格処分を実施できません。

降格された場合は、就業規則を確認し、規定通りに降格処分が実施されているかを確認する必要があります。

懲戒処分の違法性を見極めるポイント

懲戒処分を理由に降格された場合の違法性を見極めるポイントとして、以下の4つが挙げられます。

・証拠を確認する

・就業規則を確認する

・処分の重さを確認する

・弁明の機会を与える手続きがあるか確認する

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

証拠を確認する

懲戒処分の違法性を見極めるには、証拠を確認することが大切です。懲戒処分は、規律違反行為に対する制裁を目的として実施されます。規律違反行為を証明できるものがなければ、不当と判断されます。

そのため、降格された場合は、理由となる事由の証拠があるかどうか、証拠として成立するものなのかを確認しましょう。

就業規則を確認する

何度も前述しているとおり、就業規則に懲戒処分の対象行為や処分内容が明記されていなければ、懲戒処分による降格はできません。一般的に、就業規則内の「懲戒」の項目に、降格処分に該当する事由が記載されています。

また、就業規則に懲戒処分の対象行為や処分内容が明記されていたとしても、周知されていなければ、就業規則の効果は認められません。就業規則がいつでも閲覧できる状態ではなかったり、記載事項を追記したものの追記事項が周知されていなかったりする場合は、無効となる可能性があります。

降格された場合は、就業規則の管理状況を確認することが大切です。就業規則が閲覧できる状況にあった場合は、降格理由や処分内容が明記されているかを確認しましょう。

処分の重さを確認する

規律違反行為の内容と比較して重すぎる処分は、無効と判断されます。たとえば、部長職の従業員が係長や一般職になるといった、階級を飛び越えた降格は、人事権の濫用に該当する可能性があります。基本給の減額についても、労働条件の不利益変更と判断されるかもしれません。

また、過去に戒告や減給といった懲戒処分を行った行為に対し、降格処分を下すことは認められていません。降格処分が決まった場合は、その処分が降格理由に対して妥当かどうかを確認しましょう。

弁明の機会を与える手続きがあるか確認する

懲戒処分を実施する場合、その理由となる行為について、弁明の機会を与えなければなりません。弁明の機会がない場合、段階的な処分をしていないと判断され、違法となる可能性があります。

降格処分が決まった場合は、段階を踏んだうえで処分が決まったのかを確認しましょう。

人事降格の場合の違法性を見極めるポイント

人事降格は懲戒処分による降格と異なり、明確な降格手順やルールは存在しません。しかし、極端な理由による降格は違法と判断されるケースがあります。人事降格を理由に降格された場合の違法性を見極めるポイントとして、以下の3つが挙げられます。

・人事降格の目的を確認する

・人事降格理由を確認する

・極端な降格になっていないか確認する

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

人事降格の目的を確認する

人事降格の違法性を見極めるには、人事降格をした目的を確認することが大切です。従業員を退職に追い込むことが目的の降格は、違法です。過去には、新しい経営方針に協力しない課長を一般職にまで降格させたケースがあり、違法となっています。

降格前後に退職勧奨された場合や、降格後の業務内容が、単純作業や閑職といったスキルアップを目的としたものではない場合、違法と判断される可能性があります。
人事異動による降格が決まった場合は、異動する目的を確認しましょう。

人事降格理由を確認する

不当な理由による人事降格は違法です。過去には「有給休暇を消化」「始業時間直前に出勤」「定時後すぐに退勤」を繰り返した従業員を降格としたことが違法となっています。

また、妊娠や出産、育児休暇を契機として降格することは、マタニティーハラスメントに該当します。たとえ本人の同意があったとしても違法と判断されるのです。
人事異動による降格が決まった場合、降格する理由を聞き、権利行使やハラスメントが理由ではないか確認しましょう。

極端な降格になっていないか確認する

前述したように、部長職から係長や一般職に降格するといった、階級を飛び越える降格は違法と判断される可能性があります。降格に伴い、基本給が減額される場合も、違法に該当するケースがあります。

降格が決まった場合、2段階以上の極端な降格となっていないか、基本給が減額されていないかを確認しましょう。

不当に降格されたときの対処法

不当に降格されたときの対処法として、以下の2つが挙げられます。

・相談窓口や弁護士に相談する

・転職する

それぞれの対処法について解説します。

相談窓口や弁護士に相談する

不当に降格されたときは、まずは人事や労働組合といった自社の相談窓口に相談しましょう。自社の相談窓口に相談しても解決しない場合があります。「不服申立て」を行うのであれば、違法を示す証拠が必要です。裁判になる可能性もあるでしょう。

降格理由や相談窓口の対応によっては、弁護士に相談することも検討する必要があります。

転職する

降格された場合、会社が信用できなくなったり、仕事のやりづらさを感じたりするケースもあります。そのように感じた場合は、思い切って転職するのもひとつの方法です。

転職がきっかけとなり、キャリアアップにつながる可能性もあります。ただし、退職手続きは冷静に対応することが大切です。感情的に退職を決めた場合、有給休暇を消化しないまま退職日を決めてしまうケースがあります。

失業保険有給休暇退職金といった利用できる制度は利用したうえで退職手続きを進めましょう。

まとめ

降格とは、会社での職位が下がることです。降格となる理由には、懲戒処分や人事異動が挙げられます。ただし、正しい手続きを踏まなければ、違法となる場合があります。懲戒処分による降格の違法性を見極めるには、証拠や就業規則、降格までの手順を確認することが必要です。

人事異動による降格の場合は、移動の目的や理由を確認するとともに、処分内容を確認する必要があります。不当に降格されたと感じた場合、相談窓口や弁護士に相談しましょう。降格により会社に不信感を持ったのであれば、転職するのもひとつの方法です。

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