コンティンジェンシー理論とは?メリットと今後の展望や注意点を解説

コンティンジェンシー理論とは、「どのような状況にも対応できるリーダーはいない」という考えにもとづくリーダーシップ理論です。注目を集める理論であるものの、内容をただしく理解できていない人も多いのではないでしょうか?
そこで当記事では、コンティンジェンシー理論の概要をはじめ、メリット・今後の展望・注意点などを解説します。

目次[非表示]

  1. コンティンジェンシー理論とは?
  2. コンティンジェンシー理論のメリット
  3. コンティンジェンシー理論のデメリット
  4. コンティンジェンシー理論における今後の展望
  5. コンティンジェンシー理論をとり入れる際の注意点
  6. まとめ

コンティンジェンシー理論とは?

コンティンジェンシー理論とは、「どういった環境にも対応できるリーダーは存在しない」という考えに根ざした、リーダーシップに関する理論です。
リーダーもチームメイトと同じひとりの人間であり、完璧ではありません。そのため、職場環境やチームメイトとの相性によっては、自身の力を発揮できないこともあるでしょう。
またコンティンジェンシー理論では、とり巻く環境に応じて【リーダーシップの方法を変える】必要があります。同理論では、リーダーの能力に準ずるのではなく、環境の変化に応じて組織の管理体制を変化させることが求められるからです。

コンティンジェンシー理論の歴史

1940年頃までは、組織をまとめるリーダーには「生まれつきリーダーとしての素質が必要」とされていました。たとえば、「知能指数が高い人」「大勢を引っ張っていける」といった素質です。
1960年代頃からは、技術や産業の発展によってとり巻く環境が変化することから、組織は状況に応じて「多様な形態」をとるようになりました。加えてグローバル化が叫ばれるようになり、企業はいっそう複雑な状況下に置かれます。多様かつ複雑な環境では、従来において「リーダーの素質がある」と言われた人であっても、全ての状況で完璧に舵とりを行うのは困難だと認識されるようになります。
以上を踏まえ、1964年にオーストラリアの心理学者・フィドラーは「リーダーシップのベストな方法は組織により変化する」と、コンティンジェンシー理論を提唱しました。

コンティンジェンシー理論の具体例

ここではコンティンジェンシー理論について、具体例を紹介します。

具体例1_厳しいガイドラインを遵守する業界

金融機関・官公庁・医療機関などでは、厳しいガイドラインやコンプライアンスが重視されています。
こうした業界では、組織のメンバーと協力して一緒に意思決定を行うような「参加型」のリーダーシップは適していません。なぜなら、守るべき規則が明確であるため、新たに規則を決める必要がないからです。リーダーには、メンバーにルールを守らせたうえで、効率的に業務を遂行させる指導力が問われます。そのため、結果や効率性を重視すべく、司令官のように振る舞うリーダーシップが適しているでしょう。
現状のリーダーにおけるリーダーシップ体制が「参加型」であれば、司令官タイプとしての変化が求められます。司令官タイプとして振る舞えなければ、ほかのメンバーから「司令官タイプ」を抜擢する必要があります。

具体例2_急成長している企業

スタートアップやベンチャー企業のように「急成長する企業」では、従業員を強い絆で結んだうえで、企業の発展を目指す姿勢が不可欠です。
またスタートアップやベンチャー企業では、基盤やルールをつくりながら会社を発展させていくため、柔軟にアイデア交換をできる環境が求められます。
以上のことから、急成長している企業のリーダーには、組織内を強い絆で結び各自にインスピレーションを与えられる人が適しています。現状のリーダーが、支配的でルールを重視するような「司令官タイプ」のメンバーシップから脱却できなければ、リーダーシップをとるにはふさわしくありません。
そのため、リーダーを「メンバーとフラットな状態で接し、インスピレーションを与えながらチームをまとめる」タイプの人材に変更するなどの対応が求められるでしょう。

コンティンジェンシー理論のメリット

コンティンジェンシー理論を活用すると、以下のようなメリットがあります。

変化に適応できるリーダーの輩出

コンティンジェンシー理論は、「環境に応じてリーダーシップを変化させる」という考えが根底にあります。
現在のリーダーが「変化後の組織にそぐわないリーダーシップ」をとっていたとしましょう。変化後の組織に適したリーダーがほかに存在すれば、その人をリーダーに抜擢する方法があります。しかし、常に適切なリーダーが存在するとは限りません。
すると、現状のリーダーが「リーダーシップ方法を変える」必要があるでしょう。変化に即したリーダーシップがとれる術を磨き続けることで、さまざまな変化に適応できるリーダーの輩出につながります。

フラットな組織ができあがる

コンティンジェンシー理論を活用すれば、絶対的なリーダーという考え方が存在しなくなるため、ピラミッド型の組織が形成されにくくなります。
ピラミッド型組織の対義にあるのは、上下関係が重視されない「フラットな組織」です。
上司や部下、社歴や年齢といった関係を気にせず意見交換ができるため、発展的なアイデアが飛び交いやすくなります。また自由に意見を交わせる環境は、人間関係を良好に保ちやすくなるとともに、職場環境改善にも役立つでしょう。

組織改革を進めやすい

コンティンジェンシー理論は、環境の変化に応じて「リーダーがとるベストな行動を変える」という考えが基盤にあります。リーダーのとる行動が変化すれば、組織全体としても変化が見られるでしょう。つまりコンティンジェンシー理論は、組織全体の変化が当然という考え方をする理論です。
考え方の根底が「変化に応じる」であるため、コンティンジェンシー理論によって人材育成を実施すれば、従業員みんなが「組織の変化は当たり前」という共通認識をもつでしょう。変化を当然と思う共通認識があることで、組織改革を進めやすくなります。

コンティンジェンシー理論のデメリット

コンティンジェンシー理論の活用にはメリットがある一方で、以下のようなデメリットが考えられます。

環境変化に対応しにくい

コンティンジェンシー理論は、状況に応じて「適切なリーダーシップがとれるあり方」を追及した理論です。柔軟なリーダーシップをとれる状態にフォーカスした理論であるため、組織が「環境変化にどうやって対応するか?」には応えきれていません。
そのため、コンティンジェンシー理論を活用しただけでは、組織が環境変化に対応できないこともあるでしょう。環境変化に対応する組織をつくるには、理論への依存にとどまらず、各自でベストな解決策を見つける姿勢が必要不可欠です。

専門性を習得しにくい

コンティンジェンシー理論を活用すると、リーダーは組織の状況に応じて「とり組む業務」や「求められる役割」が変化します。マルチに活躍できるリーダーを輩出するメリットがある一方で、特定の知識やノウハウを蓄積したリーダーの輩出が難しくなります。
専門性を習得しにくいのは、リーダーに限ったことではありません。組織の状況に応じて、リーダーが「適切なリーダーシップを変化」させることから、組織内のチームメンバーに求められる業務内容や役割も変化するでしょう。そのため、従業員もオールラウンダーになれる反面、スペシャリストになりにくいと言えます。

組織が誤った方向に進む可能性

コンティンジェンシー理論は、環境に応じて組織体制を変える必要があり、組織体制の設定を間違えば「誤った方向に進む可能性」があるでしょう。
誤った方向に進んでも、方向転換を容易にできるのがコンティンジェンシー理論の強みです。しかし誤りそのものに気づかなければ、「生産性低下」や「業績悪化」といった深刻な事態になってはじめて、異なる方向に進んでいたことを自覚するでしょう。
コンティンジェンシー理論を活用する際には、その都度「組織の進む方向が間違っていないか?」をチェックする姿勢が大切です。

コンティンジェンシー理論における今後の展望

続いて、コンティンジェンシー理論における今後の展望を紹介します。

多様な人材の活用

コンティンジェンシー理論は「どういった環境にも対応できるリーダーは存在しない」というリーダーシップに関する理論です。さまざまな状況の変化に応じられる「オールラウンダーなリーダー」がいても、全てのケースに対応できるリーダーは存在しません。そのため、さまざまな状況を想定したうえで、タイプの異なるリーダー候補者を用意する必要があります。
多様なタイプのリーダー候補者が存在すれば、組織がたびたび変化する必要に迫られても、従業員の誰かがリーダーとなって組織の舵とりをできるでしょう。
またさまざまなタイプのリーダー候補者を育成すれば、多様な意見をもつ人が社内に存在するため、組織が誤った方向に進んでも早い段階で軌道修正しやすくなります。

グローバル化への対応

昨今の「少子高齢化」や「働き方の多様化」によって、企業における人材不足が深刻化しています。こうしたなか、日本人以外の採用を考える企業も存在するでしょう。
グローバル化への対応は、人材不足の緩和につながるだけではなく、海外の市場に目をむけるチャンスでもあります。
コンティンジェンシー理論を活用している企業は、組織やリーダーがさまざまな状況に対応する基盤をもつため、グローバル化への対応もスムーズにいく可能性が高いでしょう。
「外国籍の人材採用」や「海外販路拡大」などのグローバル化を視野に入れれば、広い視点で物事を捉えたり、多様化の本質が見えたりするといった多くのメリットが期待できます。

柔軟な組織づくり

さまざまな状況に応じたベストな組織をつくるには、組織そのものの柔軟性が欠かせません。
従来のようなピラミッド型に固執した組織では、ピラミッドの頂点部分に該当する人の意見が重視されるため、ピラミッドの下にいる人から意見を汲み上げられないでしょう。
組織が持続的発展を叶えるための有益な意見をもつ人は、ピラミッドのどういった位置に存在するかわかりません。コンティンジェンシー理論によって柔軟な組織ができれば、上下に関係なくさまざまな立場の人から意見を参考にできるため、企業発展の可能性を高めます。
柔軟に意見交換できる環境は、従業員の主体性を磨き、コミュニケーション活性化といった産物も期待できるでしょう。

コンティンジェンシー理論をとり入れる際の注意点

コンティンジェンシー理論をとり入れる際には、以下の点に注意することが大切です。

多様な人材の採用

全ての状況に対応できるリーダーは存在しません。
そのため、リーダーというポジションを考えた場合にも、どういった組織でも適切にまとめ上げられる人は皆無でしょう。
千差万別な価値観や知識をもつ多様な人材を採用すれば、組織が変化した場合にも、最適なリーダーを選出できる可能性が高くなります。また、同じリーダー自体が組織に合わせてメンバーシップを変化させた場合にも、多様な人材がいると最適な組織編成をつくり出すのに役立ちます。
なぜなら、組織が変化すれば、チームメンバーに求められる役割や業務内容が変化する可能性もあるからです。「多様な人材」を採用すれば、組織が置かれた状況に対し、適合し得るチームメンバーを探しやすくなります。

人事制度の見直し

コンティンジェンシー理論をとり入れるうえで、人事制度の見直しは必須です。
なぜなら柔軟性にそぐわない制度のままでは、コンティンジェンシー理論を活用できない可能性があるからです。
たとえば、「四年生大学を卒業しないと役職に就けない」や「入社5年を経過した人は昇進テストを受験できる」などの旧体質な制度内容が該当します。
上記のような制度が残っている場合には、条件に満たない優秀な人材をリーダーに抜擢できません。そのため、コンティンジェンシー理論によって組織の可能性を最大限に活かすべく、人事制度の見直しをするとよいでしょう。

まとめ

コンティンジェンシー理論は、変化の激しい時代において、リーダーに必要とされる理論です。デメリットや注意点も留意しながら進めることで、同理論の良さを最大限に活かせるでしょう。
リーダーとして、より効果的にマネジメントを行いたい場合には、新しい環境にチャレンジすることも1つの方法です。
より自分にあった環境を選びたい場合には、転職サービスを活用するとよいでしょう。リーダーシップを存分に発揮できる環境を探す場合には、CxO・ハイクラス人材に特化したBNGパートナーズの転職サービスがオススメです。
環境を変えてステップアップしたい人は、BNGパートナーズの転職サービスを活用してみてはいかがでしょうか。