TBM・山﨑敦義 × BNGパートナーズ・蔵元二郎|いかに生まれ、どこに向かうのか。世界に挑戦し続ける、ユニコーン企業が切り拓く日本経済の復活【前編】

株式会社TBMが開発した炭酸カルシウム(石灰石)を原料とするプラスチックや紙を代替する環境配慮型の新素材「LIMEX」。

その強みは、「エコロジーとエコノミーの両立」を目指し、地球規模の課題解決に向けて、資源を保全、CO2の排出量を削減することが可能な点だ。

現在、LIMEX素材は、10,000社を超える企業や団体で採用。

LIMEX素材を使用した製品販売に商流を拡げている。

推計企業価値が1,300億円超えと日本では数少ないユニコーン企業である。

サステナビリティ革命の実現に向けて、新素材と資源循環ビジネスを展開するスタートアップとして事業展開し、国内外の支持を得ている理由は何なのか。 

ユニコーン企業として今後どのような付加価値を提供していくのか、同社 代表取締役社長CEO 山﨑敦義氏とCxO採用支援で企業の経営課題を解決するエグゼクティブサーチサービスを提供するBNGパートナーズ代表取締役蔵元による対談から紐解いていく。

自分がいなくなった後も、何百年と挑戦し続ける企業

蔵元:山﨑社長とは15年来のお付き合い。ちょっと照れくさくもありますが、いつも通り、“山さん”と呼ばせてください。山さんがTBMを起業されたのは2011年のこと。それまで手掛けられていた事業も成功させていた山さんが、なぜ、新たに会社を立ち上げられたのか、まずは起業の経緯からお聞かせください。

山﨑:蔵元社長とのお付き合いも、そんなに長くなりますか。僕は蔵元社長のことを“二郎ちゃん”と呼ばせてもらっています。二郎ちゃんには話したかもしれませんが、そもそものきっかけとしては、20年くらい前のことでしたね。20歳で初めての起業をして、それから10年間、経営者としてなんとか事業を継続してきて、30歳を迎えた節目のタイミングに、人生で初めてヨーロッパに行かせてもらったんですよ。

そのときに、人生観が変わるくらいの衝撃を受けて。ヨーロッパには歴史的な建造物が当然のように残っているでしょう? 何百年も前に、何百年もかけて造られた建物が今でも当たり前のように残っていて、そこで当たり前のように暮らす人たちがいる。この光景を見たときに、人生の短さを実感しましたね。こうした建造物に比べたら、人ひとりの人生なんて、本当にあっと言う間なんだな、と。

実際、僕が経営者として歩んできた10年間もあっと言う間でした。そうした10年を3回、4回と繰り返したら、当時30歳だった僕もすぐに60歳、70歳です。人は何百年と生きられないからこそ、一度きりの人生をまっとうできたと胸を張れる、何かを残したい。そう考えたとき、僕がいなくなった後も何百年と挑戦し続けられる会社を残したいと思ったんです。何百年と挑戦し続け、グローバルに勝負できる会社をつくりたい、と。

可能性がある以上は絶対に諦めず、勝負するしかない

蔵元:グローバルに勝負し、グローバルに勝負できる企業。

まさにTBM(Times Bridge Management)の姿ですね。

山﨑:ヨーロッパの街並みを見たときに、感銘を受けたんですよ。もう、本当に衝撃的でしたから。この光景を僕は30歳で初めて目にしたけれど、未来を担う若手の人たちには、こうした景色をもっと早く見てもらいたいじゃないですか。そのためにも世界を見据えた、グローバルに戦える会社でなければダメだ、と。

それにこれは二郎ちゃんも感じていることだと思うけど、起業をして事業が軌道に乗って、ビジネスを成功させる型のようなものが見えてくると、リスクを取らずに安定した型で回して、ちょっと牙の抜けたようになる経営者も見受けられるじゃないですか。でも、僕はずっとストイックに、ずっと挑戦者であり続けたい。

挑戦者であり続けるためにも兆の付くほど大きな、世の中の役に立つ事業をやりたい。そうした事業を見つけ、起業することができれば、おのずと慢心は許されません。そうした気持ちを持って新たな会社の核となる事業を探していたところ、数年後に出会ったのが、台湾製のストーンペーパーです。

ストーンペーパーに出会ったのは2008年のことでしたね。日本ではちょうど、一般消費者の方にも環境意識が顕在化しつつあったタイミングです。ストーンペーパーは石灰石を原料とした、環境に配慮された素材。これを広めることは間違いなく世の中の役に立ち、同時にグローバルに勝負できる事業だと確信しました。

そこで台湾製ストーンペーパーの輸入代理店として歩みを始めたわけですが、その段階では品質が悪く、重く、価格が高いという3つの課題がありました。グローバルに勝負するため、台湾の製造元に「一緒に頑張りましょう!」と品質向上を求めましたが、途中から「日本の当たり前が世界の当たり前だと思うな!」なんて言われてしまって。

蔵元:なるほど(苦笑)。しかし、ここからが山さんの快進撃の始まりだったわけです。

山﨑:ポテンシャルは、ものすごいものがありましたからね。輸入元として営業をすると、それまでの事業では関わることのなかった大企業、それこそ、誰もが名前を知るような大手の方から、たくさんのお問い合わせをいただいて。これだけ意義のある素材を諦めるわけにはいきません。ストーンペーパーとは異なる素材の自社開発をするしかない、と。

これもストーンペーパーの販売活動を通じて感じられたポテンシャルのおかげでしょう。今ではうちの会長を務めていただいている角祐一郎さんとの出会いが、自社開発への大きな後押しになりました。角会長は日本製紙の元専務、“紙の神様”と呼ばれる方です。その角会長が、石灰石を主原料とした素材の研究開発を率いてくれる、と。

それに背中を押してくださったのは、角さんだけではありません。「お前はものすごい事業を見つけたんだ」と、「こんなチャンスはめったにないぞ」と、応援くださる方が多くいらした。これはもう、可能性がある以上は諦めず、勝負するしかない。長くなりましたが、この思いと共に2011年8月、TBMを起業したわけです。

資金調達の御旗となった補助金が採択された2月6日

蔵元:LIMEXのような代替素材、、絶対に世の役に立つ。そして、それを期待してくれる人たちのことを絶対に裏切らない。起業を決めた山さんの胸には、そうした強い思いがあった。それをわかった上でも、感服してしまいます。山さんは自社開発に向けた設備投資に、全財産を注ぎ込んだじゃないですか。

最初の出会いから15年。山さんのご活躍を横から拝見していますが、山さんはいつも死線をくぐり抜けています。TBMを起業される前の事業も成功させていたわけで、全財産を注ぎ込むほどのリスクを取る必要はなかったはず。しかし、山さんは正面突破の道を選ばれた。その原動力はいったい、どこにあるのですか?

山﨑:全財産を注ぎ込んだのは、覚悟を決めるためだったんじゃないかな。その覚悟がなかったら、今の自分はいない。振り返っても、本当にそう思います。非常にポテンシャルの高い事業なだけに、最初から出資を募っても良かったのかもしれない。ただ、研究開発に乗り出してくださった角会長が素材のサンプルを完成させるまでは人様に頼らず、自分でリスクを取りたかった。これはもう、覚悟としか言いようがありません。

自分の資金が枯渇するのが先か、サンプルが完成するのが先か。綱引きのような状況に追い込まれたことも事実です。しかし、角会長は素晴らしいサンプルを完成してくださった。そのサンプルを大きな糧に、工場建設の資金調達を本格的に開始しましたが、まだリーマンショックの余波が残っていて、資金調達はかなり苦しい状況でした。そんな矢先に経済産業省の補助金事業に申し込んだんですよ。申請が通れば、それも出資を募る際のひとつの御旗になるはずだ、と。

これはイノベーション拠点立地推進事業といって、僕らのような研究開発のスタートアップを対象とした、実証・評価のための設備整備にかかる3分の2の事業費を補助してくれるという制度。我々の開発した新素材、サンプルの当時から「LIMEX」と名付けていましたが、この可能性を認めてくださったのでしょう。採択の公布を受けたのが2013年2月6日のこと。僕が人生で一番、うれし泣きした日です。

蔵元:なんと。今日は2023年2月6日。まさにちょうど、11年前の今日のことですか。

山﨑:そう。そんな日に当時を振り返れるなんて、ちょっと運命を感じるよね。ただ、そこからも勝負所が続きましたよ。設備整備への補助金とは言え、補助の本質は実証・評価。工場を竣工する前に補助金をくださるのではなく、自分たちの資金で竣工させ、試運転が始まった段階で振り込まれるという仕組みで。

補助金は年度ごとの事業だから、年度内に工場を竣工させないと全部がパー。何十億の設備投資が必要ですから、これはもう、出資を募らなきゃいけない。年度内に竣工させるため、投資家の方には意思決定を急いでもらわないとならない。

工場の竣工と試運転にこぎ着けるまで、本当に自転車操業でしたね。建設会社への支払いが一度でも遅れれば、それまでに投資くださった方々の期待まで、一緒に吹き飛ばすことになります。かなりの重圧でしたが、どうにか、年度内に工場が稼働。投資家の方が出資を決めてくださった一瞬一瞬が、僕の大きな財産です。

挑戦の原動力は応援してくれた“人脈”への感謝と責任

蔵元:山さんが経済産業省の補助金事業への申請を決めたのは、かの経営学者、野田一夫さんのご助言があってのことでしたよね。野田先生のご助言然り、角会長の強力なサポート然り、山さんは大先輩の心を動かします。それはきっと、何かを人に与えたいという強い気持ちが、山さんの根底にあるからです。

野田先生も角会長も、いわゆる大御所です。こうした方々とつながりを持つには、どうしたらいいのか。それを知りたがる人もいるかもしれませんが、人脈とは自分に何かを与えてくれる存在ではない。むしろ、与えたい、無償の協力をしたい人とのつながりこそが、真の意味での人脈であるはずです。

山さんのお話を伺っていると、そのことを改めて感じます。山さんは結果的に大御所の方々から支援されていますが、山さんご自身は世のためとか未来のためとか、社会への貢献しか考えていない。そうした“誰かに与えるため”という心意気が伝わっているからこそ、投資を含めた多くの支援を集めているんだな、と。

山﨑:これは僕の経験則として、人は自分の志に比例した人としか出会えないと思うんですよ。私利私欲のために出会いを求めたって、そんなことはすぐに見透かされます。反対に社会に貢献するために自分はこうありたいという強い意思があれば、「それなら」と手を差し伸べてくださる。そして、手を差し伸べてくださった方々の期待と、それに対する責任こそが、僕を突き動かしてくれているのかもしれません。

後編に続く

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