【後編】TBM・山﨑敦義 × BNGパートナーズ・蔵元二郎|いかに生まれ、どこに向かうのか。世界に挑戦し続ける、ユニコーン企業が切り拓く日本経済の復活

株式会社TBMが開発した炭酸カルシウム(石灰石)を原料とするプラスチックや紙を代替する環境配慮型の新素材「LIMEX」。

その強みは、「エコロジーとエコノミーの両立」を目指し、地球規模の課題解決に向けて、資源を保全、CO2の排出量を削減することが可能な点だ。

現在、LIMEX素材は、10,000社を超える企業や団体で採用。

LIMEX素材を使用した製品販売に商流を拡げている。

推計企業価値が1,300億円超えと日本では数少ないユニコーン企業である。

サステナビリティ革命の実現に向けて、新素材と資源循環ビジネスを展開するスタートアップとして事業展開し、国内外の支持を得ている理由は何なのか。 

ユニコーン企業として今後どのような付加価値を提供していくのか、同社 代表取締役社長CEO 山﨑敦義氏とCxO採用支援で企業の経営課題を解決するエグゼクティブサーチサービスを提供するBNGパートナーズ代表取締役蔵元による対談から紐解いていく。

市況の波に呑まれぬよう、未上場で勝ちを積み重ねる

蔵元:2011年8月に創業されたTBM。山さんは全財産を投げ打ってまで事業を軌道に乗せ、TBMは今や、ユニコーン企業の地位を確立されています。しかし、日本全体としてはユニコーン企業が生まれにくい。これは世界的に見ると水準が低い、要は上場しやすい東証グロースの存在も少なからず影響していると考えます。

上場しやすいために、そこまで大きなビジョンを描かずとも上場企業の仲間入りができてしまう。そこに、それなりの規模のある日本のマーケットサイズが重なり、グローバル志向が生まれづらいのではないか。私はこのように見ていますが、山さんはTBMを起業された段階から世界を見据えていましたよね。

山﨑:そうですね。でも、僕がTBMを立ち上げた2011年には、ユニコーン企業という言葉すら存在しなかったから。特に僕らが資金調達を始めたのは、リーマンショック直後のことですよ。我々のように莫大な先行投資を必要とするディープテックのスタートアップには、絶対に資金は集まらない、と言われていたころです。

それでも投資家の方々からご支援をいただくなかで、僕自身もIPOを目指したわけです。ただ、そこまで時価総額が大きくない段階で上場しては、かえってつまづくのではないか。日本はアメリカや中国と比較すると、リスクマネーの供給が少ないですよね。スタートアップのような会社に大きな先行投資をできるだけの目利きが、正直、僕らが創業した13年前も今現在も、日本のマーケットには育ちきっていないと感じます。

ならば、事業成長を確実に勝ち取るまでは、投資家の方々とひざ詰めで向き合う。自分たちの確かさや将来の可能性について、きちんとお伝えして、その上でご支援いただくことが重要ではないか。事実、スタートアップが成功を勝ち取ることは、容易ではありません。自分たちがどんなに頑張ったとしても、それこそ、リーマンショックやコロナ禍のように、社会情勢の変化によって運命が変わってしまうこともあります。

荒波に飲まれないためにも、まずはじっくり、未上場の段階で勝ちを重ねていく。こうした考え方は、アメリカのシリコンバレーを訪れたことが影響しています。我々も彼らのように、自分たち自身がつかみ取ってきたものを評価いただく。その積み重ねがユニコーンという評価につながっているのかな、と。

君は“リスク”という言葉の語源を知っているか?

蔵元:未上場の段階で、しっかりと勝ちを積み重ねていく。そうした姿勢はもちろんのこと、山さんのご活躍を拝見していて思うのが、TBMがユニコーン企業と呼ばれるまでに成長された背景には“リスク”というキーワードがあるのではないか、ということ。起業される際に全財産を注ぎ込んだエピソードは、その象徴です。

事業の核となる「LIMEX」のサンプルを完成させ、事業化に向けた工場設立のために全財産を注ぎ込む。これは大きな可能性を秘めている反面、多くの人にとっては大きな困難、つまりは大きなリスクに映るはずです。リスクに映るからこそ、日本の一般株式市場にはフィットせず、山さんは未上場の道をお選びになった。

一方、2021年夏に発表された韓国・SKグループとの135億円にも上る資本業務提携のように、TBMの価値を理解する企業からリスクマネー、つまりは応援が届く。その応援を糧にさらに大きな挑戦を続けるという好循環がTBMの成長の核のように感じますが、そもそも、山さんにとって“リスク”とは何なのですか。

山﨑:それはもう、僕自身もたくさんのリスクに直面してきました。特に資金調達を始めたばかりのころは、投資をしていただきたいな、と思う方には慎重になられたり、一方、「出資してもいいけど、この権利をちょうだいよ」なんて言われて面食らったり、戸惑いの連続でしたよ。でも、それを野田先生に相談したところ、豪快に笑い飛ばしてくださってね。「君は“リスク”という言葉の語源を知っているかい?」と。

野田先生のお話から、僕は初めて知りました。リスクという言葉の語源はイタリア語の“risicare(リジカーレ)”。日本人はリスクという言葉を危険と捉えるけれど、元々は岩礁をすり抜けるような航海を意味していて、つまりは勇気のある挑戦のことを指したんだよ、と。野田先生は「そうした前向きな言葉なのだから、投資は勇気ある挑戦への応援。だから、リスクなんて気にするな」とおっしゃってくださって。

この教えは大きかったですし、野田先生は「ベンチャーの語源は“アドベンチャー”だから」ともおっしゃっていましたね。こうした言葉が原体験にあるおかげで、リスクに向き合うとわくわくします。莫大な資金を投じた工場の設立もそうです。補助金が振り込まれるまでは常に自転車操業で、ガリガリに痩せてしまって。でも、アドレナリンが出ていたからなのか、全くつらくない。そんな状況でも前向きだったと思います。

蔵元:そう、山さんはいつもわくわくしています。何十億という規模の設備投資に対しても、絶対に怖いとは言わない。むしろ、「これが完成したら、こんなことができて、あんなこともできて」と、まるで子どもが新しい玩具を手に入れたときのような(笑)。それは今年1月に、山さんがダボス会議を訪れた際も同様でしたよね。ご自身が受けた刺激をお裾分けくださるように、そのわくわくをメッセージくださって。

ユニコーン第一世代が向き合う、世界挑戦という責任

山﨑:いやもう、ダボス会議はすごかったですよ。我々は、これまでの石灰石ではなく、CO2を回収・再利用した炭酸カルシウムを主原料とする「次世代LIMEX」という回収したCO2を原料に副産物のカルシウムと合成、カーボンリサイクル技術を活用した新素材を携えて参加したわけですが、各国から参加している企業はものすごい。しかも、ビジネスの交流が生まれるのは、ダボス会議の会場だけじゃないんです。会議のパスを首からぶら下げていると会場に向かう電車内でも話しかけられて、そこでビジネスの話が始まるくらい。

そうした光景は、日本の山手線では絶対に考えられない。会場で出会った人たちも会場の外で出会った人たちも、日本とは目指すところの規模感が全く違います。わくわくするのと同時に、日本の危機感の足りなさを痛感しましたね。でも、だからこそ、我々が頑張らなくてはいけない。我々はユニコーン企業と呼ばれた第一世代、責任重大です。第一世代の僕らが世界に出て、日本を元気にするロールモデルにならなくては、と。

蔵元:我々がロールモデルになるという責任感、いや、使命感と言ってもいいのかもしれません。そうした強い気持ちはTBMの企業理念にも表れていますよね。御社の理念をまとめた「TBM Compass」には、山さんが自社に込めた使命感も、その理念も行動指針もビジョンも、すべてが体系立てられています。

これは対外的にはもちろん、御社のメンバーの皆さんにも非常に心強い。“コンパス”という言葉どおり、まさに羅針盤。これからの未来を担っていく人たちが、しっかりと前を向いて挑戦できるための道標ですよね。それにそもそも、山さんは若手を育てるのがお好き(笑)。それはかねがね、感じていることです。

山﨑:育てるなんておこがましいことですが、何かしらのポジティブな影響を与えて、みんなの人生が良くなっていくって、うれしいじゃないですか。何にせよ、僕自身が多くの先輩方から、多くのことをお教えいただきました。尊敬すべき先輩方は本当に謙虚ですし、感謝の言葉をしばしば口にされます。僕がこうした方々から強く影響を受けている以上、今度は僕がそれを若い方に伝えて、成長の一助になりたい。

それに正直なところ、次世代のためにという思いだけではありません。一度きりの人生、自分自身はどこまでやれるのか。これは30歳のときに何百年も残り続ける建造物に感銘を受け、新たな起業を考え始めた時から変わらず、僕には人生をかけて挑戦し続けたいという欲求が強くあります。ただ、人生をまっとうしたと思えるだけのインパクト、社会に貢献でき、それが後世にまで続くだけの軌跡を残すには仲間が必要です。

厳しい現実を直視し、すぐさま、可能性に目を向ける

蔵元:後世にまで続くインパクトを残そうと、常に挑戦しているのが山さんであり、TBMです。TBMでは今、人材採用に注力されていると聞きます。仲間と共にさらなる挑戦を続けるため、どのような人材を求めますか。

山﨑:それはもう、世界に勝つくらいの気持ちで挑戦できる人です。日本は“失われた30年”なんて言われて久しい。しかし、世界の時価総額トップ10に名を連ねる企業を見ると、そのうちの半分が今から30年以内に生まれた会社です。特に我々が進むサステナビリティの領域は、2050年には2,340兆円の市場規模になることが見込まれています。これだけの可能性があるなら、絶対に勝てる。僕はそう、本気で思っているんです。

経済が斜陽であっても、来日した海外の方は日本を好きになりますよね。平和で安全で清潔で、何事も丁寧にルールに則って進めていく。こうした日本人の価値観は、サステナビリティの領域では非常に力になります。自国のお家芸ともいうべき領域にいる以上、今後は既存の新素材や資源循環事業を磨き上げるのはもちろん、既にTBMのグループ会社が成長していますが、新規事業や新たなグループ会社も増やし、共に世界に出ていくことも視野に入れています。

そのためには、大きな挑戦をしたいと心から言える仲間が必要です。しかし、世界に挑むからといって、必ずしも語学が必要なわけじゃありません。今は国内にいながら、十分、世界に挑んでいける時代です。TBMには海外に出向いて挑戦する形も、日本から挑戦する形も、どちらもあります。そして、挑み甲斐のある環境をつくっていくことが僕らの責任です。ぜひ、世界に挑むことにわくわくする人に集ってほしいですね。

蔵元:今のお話には山さんらしさ、つまりはリスクを可能性に変える思考が詰まっていますね。グローバルの視点から“失われた30年”という危機的な現実を直視し、しかし、時価総額トップ10のうち半分はという可能性に視座を移す。そして、その可能性に向け、挑戦を続けていく。私たちBNGパートナーズとしても御社の人材採用を支援するとともに、今後も末永く、山さんとTBMの挑戦を見続けさせてください。

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