ポジティブフィードバックとは?メリット・デメリットやNG行動について解説

ポジティブフィードバックとは、被評価者の言動の良い面に注目し、前向きな言葉や表現で伝えるフィードバック手法です。否定的な表現で指摘するネガティブフィードバックとは、対になる手法で、部下の成長促進や信頼関係が構築できるといったメリットがあり、導入する企業が増えてきました。

この記事では、ポジティブフィードバックの概要やメリット、デメリットとともに、実施手順やNGとなる行動、効果的に実施するためのポイントについて解説します。

ポジティブフィードバックとは

ポジティブフィードバックとは、被評価者ができたことや達成した成果といった、ポジティブな要素に着目してフィードバックする手法です。上司やリーダーが、部下に対して評価結果を伝える際に用います。

ポジティブフィードバックは、相手の存在を認め、肯定的に伝えることが大切です。フィードバック時に、ポジティブな言い回しや表現にすることにより、被評価者に対し「あなたのことを理解しようとしている」「あなたを認めている」と伝えられます。

ネガティブフィードバックとの違い

ネガティブフィードバックの対極となる手法が、ネガティブフィードバックです。ポジティブフィードバックが成果といったポジティブな要素に着目するのに対し、ネガティブフィードバックは、できなかったことや課題などのネガティブな要素に着目します。ネガティブな要素を具体的に指摘することにより、改善点や目標達成に向けてやるべきことが明確になることがメリットです。

行動量は基準を超える量をこなしていたものの、成約には結びつかず、営業成績が目標に届かなかった人の場合、以下のようになります。

ポジティブフィードバック行動量は十分です。次からはその行動量を顧客の管理に活かしましょう。
ネガティブフィードバック成約への進め方が課題です。成約につなげるための手法を身につけましょう。

ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックは、状況や被評価者のタイプによってどちらが効果的なのかが変わります。状況や被評価者のタイプを理解し、使い分けることが大切です。

ポジティブフィードバックを導入するメリットとは

ポジティブフィードバックを導入するメリットとして、以下の3つが挙げられます。

  • 部下のことを把握できる
  • 部下の成長を促進できる
  • 部下と信頼関係を構築できる

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

部下のことを把握できる

ポジティブフィードバックを導入するメリットとして挙げられるのは、部下のことを把握できることです。ポジティブフィードバックをするためには、部下のポジティブな面を知る必要があります。

そのため、必然的に日頃から部下の様子を観察することになります。部下の様子を観察することにより、ポジティブな面だけではなく、業務の進捗状況やスキル、課題もみえてくるでしょう。

部下のことを把握することにより、ポジティブフィードバックだけではなく、部下との良好なコミュニケーションをとることにもつながります。

部下の成長を促進できる

部下の成長を促進できることも、ポジティブフィードバックを導入するメリットに挙げられます。ポジティブな面を伝えることにより、部下は「自分が肯定されている」と感じるため、モチベーションが上がるでしょう。

ポジティブな面を伝えることは、部下自身が気付いていない自分の強みを知ることにもなります。自分の強みを知れば、自分の能力を活かそうとする動きもでてくるでしょう。

自分の強みを自覚できれば、発言や行動に自信を持つことにもつながります。これまでは「自分には難しい」と感じていた業務にも、積極的に取り組める可能性があります。

部下と信頼関係を構築できる

部下と信頼関係を構築できることも、ポジティブフィードバックを導入するメリットです。日頃から部下の様子を観察し、部下のことを理解したうえでポジティブフィードバックを定期的に実施すれば、部下とのコミュニケーションは深いものになります。

部下の承認欲求が満たされるだけでなく、心理的安全性の向上にもつながり、信頼関係を構築できます。部下と信頼関係を構築できれば、被評価者のパフォーマンス向上にも期待できるでしょう。

ポジティブフィードバックを導入するデメリット

ポジティブフィードバックを導入するデメリットとして、以下の2つが挙げられます。

  • 部下の受け取り方次第では逆効果になる
  • 主観的なフィードバックになる可能性がある

ここでは、それぞれのデメリットについて解説します。

部下の受け取り方次第では逆効果になる

ポジティブフィードバックを導入するデメリットとして、部下の受け取り方次第では逆効果になることが挙げられます。ポジティブな面だけを評価された部下は、現状に満足してしまうケースがあります。「自分の能力は高い」「このままで良い」と慢心してしまうのです。

現状に満足した場合、成長するための努力を怠ってしまう可能性もあります。それではポジティブフィードバックをする意味がありません。ポジティブフィードバックは、被評価者の成長を促す手段のひとつであることを認識しておくことが大切です。

主観的なフィードバックになる可能性がある

主観的なフィードバックになる可能性があることも、ポジティブフィードバックを導入するデメリットです。ポジティブフィードバックは、個人のポジティブな面をピックアップして評価するため、主観的な印象をもとにした意見が混ざるケースがあります。

評価に主観的な意見が入った場合、評価基準が曖昧になるため、不公平感が生じる可能性があります。そのため、ポジティブフィードバックでは、主観的な印象をもとにするのではなく、客観的なデータを用いることが大切です。

ポジティブフィードバックを実施する際のポイント

ポジティブフィードバックを実施する際のポイントは、以下のとおりです。

  • 適切な目標を設定する
  • 良かった行動を具体的に伝える
  • 行動によって得られた結果を伝える
  • 今後の課題やアドバイスを伝える
  • 短いスパンで業務の振り返り時に実施する

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

適切な目標を設定する

フィードバックをする前に必要なことは、適切な目標設定です。フィードバックは、目標達成に向けて、個人や組織のパフォーマンスを向上させるために実施します。そのため、目標が設定されていなければ、何のためにフィードバックをしているのか曖昧になります。

ただし、目標を設定すれば良いわけではありません。難易度が高く、達成が困難な目標の場合、かえってモチベーションが上がらないケースもあります。簡単に達成できる目標の場合も、成長につながりません。

部下の能力や特性を理解したうえで、目標を設定することが大切です。部下の能力よりも少し高いレベルに目標を設定すれば、モチベーションが保ちやすく、成長にもつながります。

良かった行動を具体的に伝える

フィードバックでは、良かった行動を具体的に伝えましょう。単純に「目標達成できて良かった」「目標に向かって頑張っている」といった言葉ではなく、どのようなところが、どのように良かったのかを具体的に説明することにより、部下に伝わるフィードバックになります。

客観的なデータを用いながら説明すれば、より説得力がでるでしょう。

行動によって得られた結果を伝える

行動だけではなく、行動によって得られた結果を伝えることもポイントです。評価した行動が、部下にとっては意識したものではないケースや、部下の中では評価が高くないケースがあります。その場合、フィードバックを好意的に受け取ってもらえません。

評価した行動が「どのような結果に結びついたのか」を伝えることにより、部下は自分の行動が評価された理由を理解できます。評価した行動と結果をセットで伝えることにより、部下自身が意識していないものや、自己評価が高くないものであっても、新たな気づきを与える可能性があるでしょう。

今後の課題やアドバイスを伝える

フィードバック時には、今後の課題やアドバイスを伝えることも大切です。できたことや、良かった点を伝えるだけでは、部下が現状に満足してしまう可能性があります。

評価とともに、目標達成に向けた課題を伝えることにより、部下は目標達成に向けて取り組めます。課題は、抽象的なものではなく、実務レベルまで具体的に示すことがポイントです。「来週中に資料を作成する」といった具体的な行動に落とし込み、部下と認識合わせをすることにより、目標に向かってPDCAサイクルを回せます。

ただし、具体的な行動を伝えれば、誰でも取り組めるわけではありません。特に経験の浅い部下や能力が高くない部下の場合にその傾向があります。日頃から部下を観察する中で、行き詰っているようであれば、アドバイスをしたり相談にのったりといった助け舟をだすことも大切です。

短いスパンで業務の振り返り時に実施する

ポジティブフィードバックを実施するタイミングも重要です。短いスパンで業務の振り返りをする際に実施すると良いでしょう。人は、時間が経てば経つほど、状況を忘れていきます。

時間が経ってからフィードバックをしても、部下が当時の状況を忘れていては効果がありません。半年後にフィードバックをした場合、部下からすると「いまさら言われても」「自分のことは気にかけてくれていない」と不信感を持つ可能性もあるでしょう。

業務の区切りや、定期的にフィードバックを実施することにより、フィードバックがより効果的なものになり、部下のモチベーション向上や成長につなげられます。

ポジティブフィードバックでやってはいけない行動

ポジティブフィードバックでやってはいけない行動として、以下の4つが挙げられます。

  • 主観的な意見ばかり述べてしまう
  • 褒めるだけになってしまう
  • 複数人に対して同時にフィードバックを行ってしまう
  • 関連性のない事象を評価してしまう

ここでは、それぞれの行動について解説します。

主観的な意見ばかり述べてしまう

ポジティブフィードバックでやってはいけない行動として挙げられるのは、主観的な意見ばかり述べてしまうことです。主観的で根拠のない褒め方の場合、なぜ褒められているのかが伝わらず、部下に納得感を持たせられません。

論理が破綻していたり、矛盾していたりする場合、評価者に対する不信感を持たれてしまう可能性もあります。定量的なデータや客観的な事実をもとに、フィードバックすることが大切です。

褒めるだけになってしまう

ポジティブフィードバックでは、褒めるだけになってしまってもいけません。たしかにポジティブフィードバックは部下のポジティブな面を褒める手法です。

しかし、フィードバックの目的は部下を褒めることではありません。個人や組織の目標を達成することです。本来の目的を見失わず、フィードバックとともに改善点や課題を伝え、目標達成に向けて取り組んでもらいましょう。

複数人に対して同時にフィードバックを行ってしまう

複数人に対して同時にフィードバックを行ってしまうことも、ポジティブフィードバックでやってはいけない行動です。複数人に対して同時にフィードバックをした場合、ひとりに費やす時間が限られてしまいます。

部下によって、フィードバックにかける時間に差がでるケースもあるでしょう。その場合、部下からすると「自分は期待されていない」「不公平」と感じてしまう可能性もあります。

また、同時に話をすることにより、ほかの人の目を気にして反応が薄くなったり、意見を言えなかったりするケースもあるでしょう。一人ひとりと向き合うためにも、同時にフィードバックをせず、1対1でフィードバックをすることが大切です。

関連性のない事象を評価してしまう

関連性のない事象を評価してしまうことも、ポジティブフィードバックでやってはいけない行動です。関連性のない事象を評価した場合、部下は「自分のことを理解してもらっていない」「適当に褒めている」と不信感を持つ可能性があります。

フィードバックの内容は目標と連動していなければ意味がありません。目標に対する進捗や行動、成果を基準とした、客観性のある内容をフィードバックすることを意識しましょう。

効果的なポジティブフィードバックにするためのポイント

効果的なポジティブフィードバックにするためには、話し方を工夫したり、相手によって環境を選んだりすることがポイントです。具体的なポイントとして、以下の3つが挙げられます。

  • ゴーレム効果やピグマリオン効果について理解しておく
  • サンドイッチ型やSBI型を活用する
  • 褒める場所は相手のタイプによって変更する

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

ゴーレム効果やピグマリオン効果について理解しておく

1つ目のポイントとして挙げられるのは、ゴーレム効果やピグマリオン効果といった心理的現象について理解しておくことです。ゴーレム効果とは、相手に対する期待値が低い場合、実際に相手も低いパフォーマンスになってしまう現象を指します。

ピグマリオン効果は、ゴーレム効果と反対に、相手に対する期待値が高くなると、実際に相手のパフォーマンスが上がる現象です。このような心理的現象を理解しておけば、ゴーレム効果を意識した話し方をしたり、ピグマリオン効果に気をつけて話したりといった対応ができます。

サンドイッチ型やSBI型を活用する

2つ目のポイントとして、サンドイッチ型やSBI型といったフレームワークを活用することが挙げられます。サンドイッチ型とは、肯定的な話題の間に否定的な話題を挟んで話を進める話法です。話のはじめと終わりがポジティブな内容になることにより、部下はポジティブな印象を受けます。

SBI型は「Situation:状況」「Behavior:行動」「Impact:影響」を順序だてて伝える話法です。例えば「マニュアル作成を(状況)スケジュール通りに進められたことにより(行動)、部署メンバーがマニュアルを活用でき、業務が効率化された(影響)」のように伝えます。

サンドイッチ型やSBI型を活用し、話す順番を工夫することにより、部下はなぜ評価されたのかを理解できるでしょう。

褒める場所は相手のタイプによって変更する

3つ目のポイントとして挙げられるのは、褒める場所を相手のタイプによって変更することです。周囲に人がいたり、声が聞こえる場所で問題点や課題を指摘されたりすることに対し、嫌悪感を持つ人がいます。

そのような人に対してフィードバックをする際は、個室や周囲に声が聞こえない場所でフィードバックをすることが大切です。ただし、ポジティブフィードバックの場合、他のメンバーに聞こえる場所で実施することにより他のメンバーもポジティブな面を学べるため、一概に個室で実施することが良いとは言えません。

フィードバックをする相手や話す内容によって、実施する場所を変更すると良いでしょう。

まとめ

ポジティブフィードバックとは、被評価者のポジティブな要素に着目してフィードバックする手法です。それに対し、ネガティブフィードバックは、被評価者のネガティブな要素に着目します。

ポジティブフィードバックを導入するメリットには、部下の把握や成長促進、信頼関係の構築が挙げられる一方、受け取り方次第では逆効果になるといったデメリットも存在します。

また、ポジティブフィードバックを実施するうえでは、主観的な意見を述べたり関連性のない事象を評価したりするといった行為は、やってはいけません。効果的なポジティブフィードバックにするためには、心理的現象を理解し、話し方を工夫したり相手によって環境を選んだりすることがポイントです。

BNGパートナーズでは、社内の文化構築や評価制度構築の第一人者を目指している方々の転職活動をサポートしています。適切なフィードバックを通して、部下の育成やチームの成長を促進させ、企業の事業成長を担う第一人者になりたいという人は、スタートアップへのCxO転職がおすすめです。

まずはBNGパートナーズの転職サポートに登録し、経験豊富なキャリアアドバイザーにキャリアを相談してみましょう。