自律分散型組織(DAO)とは?メリット・デメリットや組織の構築方法について解説

自律分散型組織とは、組織を構成する従業員間に上下関係がない組織を指します。VUCA時代の到来により、予測できない将来に対応する手法として、導入する企業が増えてきました。この記事では、自律分散型組織の概要やメリット、デメリットとともに、構築方法や導入時のポイントについて解説します。

自律分散型組織(DAO)とは

自律分散型組織(DAO:Decentralized Autonomous Organization )とは、会社内に役職を設けず、従業員がフラットな関係性となる組織運営方法のことです。従業員の上下関係がないため、各従業員の自律的な行動によって運営されます。意思決定の権限や責任が、各従業員に分散されていることが特徴です。

ここでは、自律分散型組織が求められる背景や、従来の組織との違いについて紹介します。

自律分散型組織が求められる背景

自律分散型組織が求められる背景に、VUCA時代の到来が挙げられます。VUCA時代とは以下の4つの頭文字をとった言葉で、先が読めず、不確実な状況を指します。

  • Volatility:変動性
  • Uncertainty:不確実性
  • Complexity:複雑性
  • Ambiguity:曖昧性

近年では、ITやAIをはじめとした技術革新や働き方の変化、多様性の浸透など、これまで通用していた企業戦略では生き残れなくなってきました。ニーズの変化も速く、予測が困難な時代となったことから、この時代を「VUCA」と呼ばれるようになりました。

VUCA時代では、変化に対応できる柔軟性や迅速な意思決定が求められます。それに対応できる仕組みとして自律分散型組織が注目されています。

従来の組織との違い

従来の組織との違いは、一人ひとりの責任と権限の範囲です。従来の「管理型組織」では、組織構造がピラミッド型となっており、従業員は経営陣や各階層の管理者の指示によって動いていました。意思決定の責任も、経営陣や各階層の管理者にあります。

一方、分散型自律組織はフラット型の組織となっているため、管理者が存在しません。従業員は組織のために自分のやるべきことを判断して業務に取り組みます。そのため、意思決定の責任は各従業員にあります。

自律分散型組織の種類

自律分散型組織の動かし方には種類があり、主に以下の3つに分けられます。

  • ティール組織
  • ホラクラシー組織
  • アジャイル組織

ここでは、それぞれの種類について解説します。

ティール組織

ティール組織は、上司や部下、リーダーといった階層がない組織です。従業員は、自部署や自社の目的達成に向けて、何をすればいいのかを自分で考えて動きます。ティール組織をスムーズに運営するには、従業員が自主性を持って参画するだけではなく、他の従業員の考えを尊重することが重要です。

ホラクラシー組織

ホラクラシー組織も、ティール組織と同様に、上司や部下、リーダーといった階層がない組織です。ティール組織との違いは、ホラクラシー憲法と呼ばれるルールがあることです。従業員の意思決定は、ルールに従って行います。

つまり、ホラクラシー組織では、個人ではなく、グループに権限が委ねられています。従来の組織では役職者が持っていた権限を、ルールに置き換えた形です。

アジャイル組織

アジャイル組織は、システム開発における手法のひとつである「アジャイル開発」の考え方を組織運営に活かしたものです。ティール組織やホラクラシー組織と同様に、従業員に上下関係はないものの、小規模なチーム単位で動きます。

小規模なチームで動くことにより、機動性を重視しながらPDCAサイクルを回していきます。問題解決主導型の組織と言えるでしょう。

自律分散型組織のメリット

自律分散型組織のメリットとして、以下の3つが挙げられます。

  • エンゲージメントが向上する
  • 個人のアイデアを活かせる
  • 多様な働き方に対応できる

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

エンゲージメントが向上する

自律分散型組織のメリットとして挙げられるのは、エンゲージメントが向上することです。従来の管理型組織の場合、意思決定の権限や責任は上司にあるため、部下の立場で業務の方向性を決断する機会は多くありません。

しかし、自律分散型組織の場合、上司が存在しないため、各従業員に意思決定の権限や責任が与えられます。上司からのプレッシャーがないことにより、従業員の心理的安全性も担保できるでしょう。

また、従業員は、各自が意思決定の権限を持つことにより、企業経営に参加している意識を持てます。一人ひとりの発想や考え方を業務に反映できるため、「自社に貢献したい」という気持ちを持って業務に取り組めます。それにより、エンゲージメント向上につながるのです。

個人のアイデアを活かせる

自律分散型組織のメリットとして、個人のアイデアを活かせることも挙げられます。従来の管理型組織の場合、上司から業務指示を受けることが一般的です。部下からアイデアをだした場合、そのアイデアが採用されるかどうかは、上司の判断によります。アイデアの採用までに時間がかかるケースや、採用されないケースもあるでしょう。

しかし、自律分散型組織の場合、アイデアを採用するかどうかは、各従業員で判断できます。そのため、思いついたアイデアを時間をかけることなく実施できます。管理型組織では、上司に理解してもらえず、採用に至らなかったアイデアも実施できるでしょう。

多様な働き方に対応できる

多様な働き方に対応できることも、自律分散型組織のメリットです。従来の管理型組織の場合、管理面での効率の悪さをテレワークの課題とする企業がありました。しかし、自律分散型組織の場合、従業員一人ひとりの判断で業務を進めるため、上司が管理する必要はありません。

時間や場所に捉われずに業務を進められるため、短時間勤務を希望する人や、オフィスから離れた人を採用することも可能です。多様な働き方に対応できることは、優秀な人材の獲得にもつながる可能性があります。

自律分散型組織のデメリット

自律分散型組織は、メリットだけではなくデメリットも存在します。主なデメリットは、以下の3つです。

  • 自己管理能力が求められる
  • リスク管理が難しい
  • リーダーシップに欠ける

ここでは、それぞれのデメリットについて解説します。

自己管理能力が求められる

自律分散型組織のデメリットとして、自己管理能力が求められることが挙げられます。自律分散型組織には、上司やリーダーといった、従業員の行動を管理する人がいません。自分の行動は、自分で管理する必要があります。

そのため、モチベーションや自己管理能力の差が、業務への取り組み方や成果にでてきます。チームとして成果をだすためには、常に進捗を把握できる仕組みや、モチベーションを上げる工夫が必要です。

リスク管理が難しい

リスク管理が難しいことも、自律分散型組織のデメリットに挙げられます。自律分散型組織は、従業員に意思決定の権限があるため、上司が「承認する」という過程が存在しません。

そのため、誤った判断をしている場合でも、気付かないケースがあります。また、自分の意思で業務を進められるため、自分の業務を共有する意識が低くなりがちです。自分の業務を共有しない場合、業務の属人化につながる可能性もあります。

自律分散型組織は、誤った判断によるトラブル発生と、業務の属人化というリスクを抱えているのです。

リーダーシップに欠ける

リーダーシップに欠けることも、自律分散型組織のデメリットです。自律分散型組織は、意思決定の権限が各従業員にあるため、組織を動かすマネジメント人材が育つ機会が多くありません。

各自で意思決定する習慣があるため、トップダウンで組織を動かす必要がある場合に、従業員がついてこないケースもあります。「組織としてのまとまり」という点では、従来の管理型組織に分があります。

自律分散型組織の構築方法

自律分散型組織を構築するには、以下の手順で進める必要があります。

  1. MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の浸透
  2. 目標と成果指標(OKR)の設定
  3. 情報の共有

ここでは、それぞれの手順について解説します。

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の浸透

自律分散型組織は、従業員一人ひとりが意思決定の権限を持っているものの、判断基準がなければ組織としての利益にはつながりません。自社が「何を目指しているのか」「どのような行動指針を持っているのか」といった「MVV」を従業員一人ひとりが理解することにより、個人の判断が組織の利益につながります。

MVVを浸透させるためには、経営者の声を従業員に直接伝える機会を設けることが大切です。経営者とのミーティングや社内報を通じて、MVVを伝えましょう。

目標と成果指標(OKR)の設定

MVVが浸透できたら、目標と成果指標を設定します。自律分散型組織には、目標を与える上司はいません。そのため、従業員一人ひとりが、自分の目標を設定する必要があります。

ただし、各々が自分の基準だけで目標を設定していては、組織として同じ方向を向いて仕事ができません。各従業員が同じ方向に向かって業務に取り組むためには、目標の設定方法や成果指標を整備しておくことが大切です。

情報の共有

目標と成果指標を設定したら、情報共有の仕組みを整備します。自律分散型組織は、業務を管理する上司はいません。そのため、従業員間での進捗把握や報連相の機会が少なくなりがちです。

前述したように、自律分散型組織は、誤った判断によるトラブル発生と、業務の属人化というリスクを抱えています。リスクを抑えるためにも、定期的なミーティングの開催やコミュニケーションツールの導入、社内SNSの導入など、従業員同士が情報交換できる場を整備することが大切です。

自律分散型組織を導入する際のポイント

自律分散型組織を導入する際のポイントとして、以下の3つが挙げられます。

  • 自律分散型組織を導入しない選択肢もある
  • 小さなチームから先行導入する
  • 組織設計とルールの整備が大切

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

自律分散型組織を導入しない選択肢もある

自律分散型組織は、従業員が自律的に行動できる組織運営方法です。しかし、企業の組織運営は、企業の目標や目的を達成するための手段であり、管理職を廃止しフラットな組織をつくることが目的ではありません。

企業風土や、従業員の資質によっては従来の管理型組織のほうが、組織運営がスムーズに回るケースもあるでしょう。自社の状況を把握し、導入を検討することが大切です。自律分散型組織を導入しない選択肢があることを、頭に入れておきましょう。

小さなチームから先行導入する

小さなチームから先行導入することもポイントです。自律分散型組織はこれまでの組織運営とは考え方が大きく異なります。そのため、いきなり全社的に導入した場合、反発や混乱が発生する可能性があるでしょう。

リスクを抑えるためにも、自律分散型組織を受け入れやすい人材がいる部署から先行して導入すると良いでしょう。マネージャークラスのチームを編成し、先行導入することも有効な方法です。

いきなり全社的に導入するのではなく、リスクの低いチームで導入をスタートしましょう。

組織設計とルールの整備が大切

組織設計とルールの整備も、自律分散型組織を導入する際のポイントです。前述したとおり、自律分散型組織は、モチベーションや自己管理能力の差が、業務への取り組み方に現れます。働き方に対する考え方の違いから、悩みを抱える従業員がでてくるでしょう。

また、誤った判断によるトラブル発生と、業務の属人化というリスクも抱えています。これらのリスクを回避するためには、意思決定の基準を決めたり、自己管理能力が求めるレベルにない従業員については管理者を置いたりといった、整備をすることが大切です。

まとめ

自律分散型組織とは、組織内に役職を設けず、従業員がフラットな関係性となる組織運営方法のことです。意思決定の権限や責任が、従業員一人ひとりに分散されていることが特徴です。

自律分散型組織には、エンゲージメント向上や個人のアイデアを活かせる、多様な働き方に対応できるといったメリットがあります。その一方、自己管理能力が求められることやリスク管理が難しい、リーダーシップが欠如するといった点はデメリットです。

ただし、企業によって適切な組織の形態は異なるため、必ずしも自律分散型組織を導入したほうが良いわけではありません。BNGパートナーズでは、自律分散型組織に取り組んでいる多くの企業と取引があります。自律分散型組織で働きたいと考えているのであれば、BNGパートナーズの転職サービスをぜひご活用ください。