メンタリングとは、「指導をするメンター」と「指導をうけるメンティー」による1対1の関係性によって、適切なキャリア形成を目指す人材育成方法です。
お互いが対話を重ねることで、メンティーに有用な気づきを与えられます。
しかし、「メンタリングによってどういった効果があるか?」と考える人や「そもそも導入方法がわからない」人も多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、メンタリングの概要やメリット・実施方法をはじめ、コーチングとの違いなどについても解説します。
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メンタリングとは?コーチングとの違い
まずは、メンタリングの概要やコーチングとの違いを紹介します。
メンタリングの概要
メンタリングは、指導役の「メンター」と指導される「メンティー」が1対1の関係性を通じ、適切なキャリア形成を行う人材育成方法です。
昨今では、社員教育の一部として実践する企業も増えています。
とはいえ、メンターとメンティーは単なる「先生と生徒」といった関係ではありません。あくまでメンターは助言者であり、メンティーに気づきを与えられるよう一緒に歩んでいく関係性です。
またメンターは直属の上司を選出するのではなく、メンティーとの相性を考慮したうえで、年齢や立場の近い先輩社員を選ぶことが一般的です。
メンタリングが注目される背景
メンタリングが注目される背景として、以下の3点が挙げられます。
従業員における帰属意識の希薄化
1つの会社で定年まで勤める「終身雇用」の考えは崩壊したと言われています。それに伴い、昨今では転職活動をすることが当たり前のようになっています。
とはいえ、従業員が定着しないことは、企業にとって大きなデメリットとなり得るでしょう。そこで従業員の帰属意識を高めるべく、メンタリングを導入する企業が増えています。
1つの会社で長く勤めるロールモデルの不足
転職が一般化すると、1つの会社に長く勤めあげる人が少なくなります。
長く勤める人は、「自分の数年後を予測できるロールモデル」だと言えます。ロールモデルがいないと、自身で模索しながら業務を行うため、迷いが生じがちです。そこで新入社員の迷いを減らし気軽に会社やキャリアのことを相談できるよう、メンタリングを活用するケースが見受けられます。
労働環境や生き方の多様化
労働環境が多様化し、リモートワーカー・副業・非正規雇用など、さまざまな働き方が選ばれています。同時に、プライベートを重視したいといった「個々の価値観を大切にする」人が増えています。
労働環境や生き方が多様化すれば、自身が先駆者となって働くケースもあるでしょう。こうしたときに、従業員が価値観や働き方の相談を気軽にできる方法として「メンタリング」に注目が集まっています。
コーチングとの違い
メンタリングに似た言葉として、コーチングが挙げられます。
コーチングは、相手の内なる想いを対話を通じて引き出し、達成したい目標の実現を目指すコミュニケーション技術のことです。
メンタリングとコーチングの違いは、以下の通りです。
対象とする領域
メンタリングは、「人としての成長」という多岐にわたる領域をサポートします。
一方でコーチングは、業務効率化の達成やコミュニケーション能力の向上など、的を絞った領域が対象です。
メンタリングのなかに、コーチングが含まれると考えればわかりやすいでしょう。
実施する期間
前述の通り、コーチングは業務効率化の達成といった「的を絞った領域」を対象とします。そのため、サポートする期間は比較的短い傾向にあります。
一方でメンタリングは、人としての成長という幅広い領域が対象です。基本的に長期にわたる対応が求められるでしょう。
実施方法
コーチングは、達成したい目的によっては精神的サポートが必要なものの、精神的なサポートは必須ではありません。たとえば「業務効率化を目指す」が目的であれば、業務効率化に必要な技術やスキルを通じてレクチャーします。
一方でメンタリングは「悩んでいること」をベースに展開するため、精神的サポートを必須とする点が特徴です。技術的なレクチャーも必要であれば、状況に応じて教えていきます。
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メンタリングのメリット
ここでは、メンタリングを行う「企業にとってのメリット」を紹介します。
従業員の主体性向上
メンタリングは「先生と生徒」のように先生が一方的に教えるのではなく、メンティーに気づきを与えられるよう、一緒に歩む点が特徴です。
そのため、メンターからメンティーに「直接的な回答」を提示するケースは少ないと言えます。
メンターが与えたヒントにもとづき「どうしたら解決できるだろう」と考えるため、従業員の主体性を養うことにつながります。
気づきによって解決に至れば、「問題発生→ヒントを探す→ヒントをもとに解決方法を考える→解決」という一連の力も身につくでしょう。
主体的な従業員が増えれば、組織全体の生産性アップも期待できます。
信頼関係の構築
メンタリングでは、メンターとメンティーが対話を重ねることが特徴です。
同じ目的に向かって対話を重ねると、双方の間に信頼関係が生まれやすくなります。信頼する相手が会社にいると安心感があるため、定着率アップにつながるでしょう。
メンターとメンティーが増えると、会社全体のコミュニケーション活性化も期待できます。コミュニケーションが活性化すれば、さらなる信頼関係の構築にもつながるでしょう。
また普段からコミュニケーションをとることで、従業員が抱える悩みや不安の早期発見が可能です。
メンターの成長も促進
メンタリングでは、指導をするにあたり「傾聴力・信頼構築能力・必要なビジネススキルの習得」が必要になります。そのため、指導を通してメンターはマネジメント能力やリーダーシップ能力を磨けるでしょう。
メンターの成長によって、指導される側だったメンティーが「メンター」になれば、幹部候補が増えます。幹部としてのスキルをもつ人材が増えれば、企業全体の底上げにもつながるでしょう。
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メンタリングのデメリット
一方で、メンタリングの実施によってデメリットも発生します。
メンタリングを行う「企業にとってのデメリット」は以下の通りです。
メンターへの負担増
メンタリングを実施すると、メンターの日常業務に加えて、メンティーと対話する時間を設ける必要があります。物理的な時間の負荷はもちろんのこと、メンティーに寄り添う精神的プレッシャーもあるでしょう。
そのため、メンタリングを実施する企業は、メンターの物理面と精神面の負担を最小限にとどめられるよう留意します。
物理的な負担に対しては、メンタリングにつかう「最大時間の規定」などを設けてもよいでしょう。またメンターの日常業務を減らし、メンタリングに時間を割けるよう配慮することも1つの方法です。
精神的な負担に関しては、相性のよいメンティーと組み合わせたり、メンターに対する定期的なヒアリングの実施などがオススメです。
相性が悪いと効果が出にくい
メンターとメンティーはお互い人間であるため、相性の問題があります。
相性が悪いと、「メンターのアドバイスを聞き入れてもらえない」や「メンティーに寄り添えない」恐れも出てくるでしょう。
また「メンタリングの効果が期待できない」だけでなく、双方がストレスを抱えやすくなります。
そのため、メンターの上司や人事部を中心とし、相性がよいふたりをマッチングできるよう、適切な判断が求められます。
メンターの質が影響
一口にメンターといっても、保持するスキルや得意・不得意にばらつきがあるでしょう。
メンティーの悩みを解決できる能力を保有するメンターであるほど、メンティーにとって「良質なメンター」だと言えます。
そのため、メンティーに最も寄り添えるようなメンターを抜擢する必要があるでしょう。
またメンターを依頼する際に、事前に「目的・指導方法・適切な接し方」をレクチャーする機会の設置が大切です。
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メンタリングの実施方法・注意点
続いて、メンタリングの実施方法や注意点を紹介します。
実践する際には、以下のステップに沿ったうえで、各項目の注意点を押さえるとよいでしょう。
1、メンタリング導入の目的を整理
まずは、自社がメンタリング導入をする目的について整理します。
「定着率を高める」や「女性の活躍促進」など、目的は千差万別です。目的を設定する際には、現場の社員にアンケートなどで状況をヒアリングしたうえで、実情に沿った内容を作成しましょう。
2、実施計画およびガイドラインの設置
導入の目的が整理できたら、実施計画とガイドラインを設置します。
実施計画では、実施するトータル的な期間や、メンターとメンティーを選定する時期などを決めます。
ガイドラインの設置では、以下などを詳しく決めましょう。
・メンティーに声をかけるタイミング ・メンティーに声をかける頻度 ・メンターが踏み込んでよいライン ・メンタリングの手段 ・メンタリングを実施する場所 |
ガイドラインが存在することで、メンターが何をすべきかが理解できますし、トラブル防止にも役立ちます。
またメンタリングを導入したら、メンターに全てを任せるのではなく、企業も適切に介入しましょう。内情をチェックすることで、うまく進んでいない部分が把握できるのはもちろんのこと、制度の形骸化も防止できます。
3、メンターとメンティーの選出
続いて、メンターとメンティーを選出します。
双方の相性がメンタリング成功の鍵となるため、メンターとメンティーの組み合わせは重要です。マッチングする主な方法は、「アサインメント方式」と「ドラフト方式」の2種類です。
アサインメント方式
企業側から、メンターとメンティーを指定する方法。 |
ドラフト方式
複数のメンターのなかから、メンティー自身がメンターを選ぶ方法。 |
いずれの方法にしても、「席が近いから」といった安易な方法で決定すると、メンタリングの効果が薄れてしまいます。感覚で決めているため、メンターとメンティーの相性への配慮が欠けてしまうからです。
またメンター候補者には、傾聴力や質問力といった受容力の高い人を選びましょう。相手を受容する力が高い人ほど、メンティーの状況に寄り添えますし、気づきを与えることが可能です。
4、メンタリングの実施および分析
メンターとメンティーを選出したら、実際にメンタリングを行います。
実施する際には、メンターの負担に考慮しながら、企業側が適切に声がけやサポートをします。声がけをした結果、「通常業務が圧迫されている」や「メンティーと相性が合わない」といった問題が浮上するかもしれません。
その際には、業務量の調整や、別の人をメンターとして配置させるといった対策が必要です。
またメンタリングの分析をすることで、制度の状況や改善点が見えてきます。
分析する際には、「短期」と「中長期」の視点でとり組むとよいでしょう。短期的な分析には、メンターとメンティーへのアンケートなどが挙げられます。中長期的な分析では、離職率や目的の数値指標の推移チェックなどが挙げられます。
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まとめ
終身雇用が薄れ、企業への帰属意識の希薄化が懸念される昨今において、いかに従業員の帰属意識やモチベーションを高めるかが重要です。こうした状況下において、信頼関係の構築や従業員の主体性を醸成するメンタリング制度は重要な育成手法だと言えます。
現在人事系の業務に携わっている方や、人材育成に興味をもつ担当者は、自社でメンタリングを導入するのはもちろんのこと、将来的にCHRO(最高人事責任者)を目指すのもアリでしょう。
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