キャリアラダーとは?重要性や活用例を解説!導入ステップも知りたい

キャリアラダーとは、従業員がはしご(=ラダー)をのぼるように「順番にステップアップできる」能力開発に関するシステムです。
昨今では看護やアパレル業界など、さまざまな業界で注目されています。
とはいえ、正確に内容を理解している人は少ないのではないでしょうか。
そこで当記事では、キャリアラダーのメリットや活用例をはじめ、導入ステップも紹介します。優秀な人材を育成・獲得したいと考える担当者様は、ぜひ参考にしてください。

目次[非表示]

  1. キャリアラダーとは?
  2. キャリアラダーを導入する効果やメリット
  3. キャリアラダーを導入するデメリット
  4. キャリアラダーの活用事例
  5. キャリアラダーの導入方法をステップで紹介
  6. まとめ

キャリアラダーとは?

キャリアラダーとは、キャリア(career)ラダー(ladder/はしご・踏み台)を合わせた造語です。
はしごをのぼるようにスキル・経験を一歩ずつ習得できる教育システムであり、業務や職位の難易度などに応じ、ステップごとに細かな内容が決められています。キャリアラダーを活用すると、着実なステップアップが可能です。

キャリアラダーの特徴

キャリアラダーの特徴は、以下の通りです。

従業員目線での特徴

自らの現状と、それぞれのステップを比較することで、将来的なキャリアを見通しやすくなります。各ステップでクリアすべき条件が明確なため、ステップ達成に向けた効率的な行動ができるでしょう。効率的な行動は、最短距離でのキャリアアップを促します。

企業目線での特徴

キャリアラダーは従業員への能力レベル設定にとどまらず、管理職や組織全体における目標達成など、多角的な利用が可能です。人事評価制度と連携させれば、公平な評価結果を導きやすくなるでしょう。また、ステップごとに「どういった人物を欲するか?」が明確なため、採用で活用すれば応募のミスマッチにもつながります。

キャリアパスとの違い

キャリアラダーと似た言葉として、キャリアパスが挙げられます。

キャリアパスは「キャリアの道筋を表現したもの」であり、昇進ルートを明確にできる点が特徴です。一方キャリアラダーは「各ステップの習熟度」が判断できるもので、特定のポジションにおいて必要なステップを示します。
上記のように、キャリアパスは単に「キャリアの道筋を表現」していることから、ゼネラリストとスペシャリストの双方に該当する考えだと言えます。一方で、キャリアラダーは特定のポジションに向けた教育システムであるため、スペシャリストのキャリア開発に適しているでしょう。

キャリアラダーの導入がすすむ業界・分野

キャリアラダーの導入がすすむ業界・分野の共通点は、同じ業界や職種内でのスキルアップによって、専門性を磨けることです。つまりキャリアラダーは、オールマイティーさを求めるというより、専門性の強化が必要とされる仕事で需要があります。
またキャリアラダーの導入がすすむ業界・分野では、職種間の異動が少ないことも特徴です。

日本では、以下のような業界・分野でキャリアラダーの導入がすすんでいます。

・看護

・アパレル

・エンジニア

・派遣社員

一方で職種間の異動が多い総合職などのケースでは、キャリアラダーの導入に対する難易度が高いでしょう。なぜなら、キャリアラダーは「特定の分野におけるスキル・能力を磨く」ことに注力したシステムだからです。

キャリアラダーを導入する効果やメリット

キャリアラダーを導入すると、以下のような効果やメリットが期待できます。

明確なキャリアステップを示せる

キャリアラダーでは、階層ごとに具体的なキャリアが明示されるため、次にすすむべき方向が明確です。そのため、従業員に対し「明確なキャリアステップ」を示せます。
次の段階にすすむには、どういった行動をとるべきか?」や「何が不足しているか?」がわかるため、解決すべき課題がクリアになるでしょう。
やるべきことがハッキリすれば、道に迷う可能性が低くなります。迷いがなくなれば、最短距離で次のステップにすすめるでしょう。

平等な状態を保てる

キャリアラダーは、全ての従業員が「ステップで設定された条件をクリア」しないと次のステップにすすめません。従業員を評価する際にも「ステップで決められた条件」に沿って評価するため、主観が混じりにくく平等な評価結果を導けます。平等な評価結果は、従業員の評価に対する納得度を高めるでしょう。
また、設定された条件をクリアすれば次のステップにすすめることから、全員に対し平等にチャンスの機会が用意されていると言えます。

モチベーションアップに役立つ

キャリアラダーを導入すると、ステップをひとつずつクリアしながら着実にキャリアアップできるため、やるべきことが明確です。
やるべきことをクリアすれば正当に評価されるため、従業員のモチベーションアップや維持に役立ちます。
またそれぞれのステップを見通し「将来を予想できる点」も、モチベーションアップに寄与するでしょう。不安や迷いが少なくなり、目の前の業務に集中できるからです。

キャリアラダーを導入するデメリット

一方で、キャリアラダーの導入にはデメリットも存在します。
詳細は以下の通りです。

業種や組織によっては相性が悪い

キャリアラダーは、スペシャリストの専門性を磨くことに適した教育システムです。基本的に、職種の異動がない仕事に向きます。そのため、多様な職務を兼務するような業種や、ゼネラリストを求める組織とは相性が悪いでしょう。
また、トップアスリートのように「ほんの一握りしかトップで活躍できない仕事」も、キャリアラダーの活用には適しません。
不向きな現場ではキャリアラダーにこだわらず、キャリアパスを意識した組織づくりを行うなど、相性のよい方法を選ぶとよいでしょう。

導入までに手間がかかる

キャリアラダーの導入では、該当のポジションに必要なスキル・経験を全て洗い出したあとに、階層ごとに内容を当てはめる流れですすめます。
また整合性をとるために、管理職や人事担当者を中心とし、さまざまな調整が必要です。
キャリアラダーを適切に実行すべく、「研修プログラムの準備」や「評価制度や賃金制度との連携」なども必要でしょう。
一度キャリアラダーを導入すると容易に変更できないため、スタートの準備には多くの時間がかかります。

キャリアラダーの活用事例

ここでは、キャリアラダーを導入したイメージをつけられるよう、活用事例を3つほど紹介します。

活用例1:アパレル

アパレルブランドA社では、契約社員やパート社員といった非正規雇用にもキャリアラダーを適用している点が特徴です。
背景には、非正規雇用から正社員に至る過程を、キャリアラダーを活用して築く目的があります。
キャリアラダーを活用することで、非正規雇用であっても、モチベーションを維持しながら正社員までの道を目指せます。また次のステップにすすむには「それぞれの階層に設定された条件」をクリアする必要があるので、会社が求める優秀な人材を獲得できるメリットがあるでしょう。

活用例2:看護師

B病院では、看護師のキャリア開発に向けて「キャリアラダー」を活用しています。
階層別の研修プログラムを用意し、階層が抱える課題を解消できるよう体系化している点が特徴です。
最初のステップでは、看護の基本的な内容の習得を目指し、新人に向けた基礎的な看護研修を実施します。次のステップでは、周囲のサポートがなくても基本的な内容を実施できるよう、自立を意識した研修を行います。
ステップに応じて、その都度必要な内容を習得できるため、効果的かつ実践的な看護スキルの習得が可能です。

活用例3:エンジニア

C社では、エンジニアが効率的に成長できるよう、エンジニアに特化したキャリアラダーを導入しています。
C社のエンジニア向けキャリアラダーでは、企業理念を念頭におき、6つの階層に分けている点が特徴です。また、エンジニアと企業との「認識のズレ」を最小限に抑えるべく、数十名のエンジニアとディスカッションを実施して体系化しました。そのため、エンジニアから見ても満足度が高い「能力開発システム」になっています。またキャリアラダーの内容を外部にもオープンにしていることから、応募におけるミスマッチの減少にもつながっています。

キャリアラダーの導入方法をステップで紹介

キャリアラダーを導入するには、どういった方法ですすめればよいのでしょうか?
ここでは、実際の導入方法をステップに沿って紹介します。

STEP1:キャリアの階層を構築

まずは、キャリアラダーの骨組みである「階層」を構築します。
該当ポジションについて、新入社員レベルからトップレベルまで想定し、トータル的に必要な知識・スキルを洗い出しましょう。知識・スキルを洗い出したら、適切な順番に並び変えます。
そのあとに、階層に応じて知識・スキルを当てはめて行きましょう。
また当ステップでは、知識・スキルに漏れが生じないことも大切です。漏れがある状態で次のステップにすすんでしまうと、ゴールまでなかなか到達できない可能性があります。
階層ごとの隔たりを、大きくしすぎないことも大切です。隔たりが大きすぎると次のステップにすすむまで時間がかかり、従業員のモチベーションを下げる可能性があります。

STEP2:評価システムや賃金システムを整える

キャリアラダーと評価システム・賃金体系は、一定以上において連動させることが望ましいでしょう。
階層が上がったにもかかわらず評価結果や待遇が変わらなければ、モチベーションを保ちにくくなるからです。次のステップに到達することで賃金などの待遇が上がれば、従業員がひとつ上のステップを目指す原動力になるでしょう。
しかし、キャリアラダーと評価システム・賃金システムを完全に連動させると、スキルや知識で判断できない「重要な要素」を見落とす可能性があります。たとえば、職場の雰囲気をよくするムードメーカーの存在や、責任をもって最後まで取り組む姿勢などです。
そのため、キャリアラダーと評価システム・賃金システムを連動させる場合には、スキルや知識で判断できない要素については表彰制度を取り入れるなど、ほかの方法も別途用意するとよいでしょう。

STEP3:教育の実施

キャリアラダーでは、階層に応じた教育を実施する必要があります。
階層に適した教育を実施することで、現状の階層で求められるスキル・レベルが明確になり、現状の自分とステップで求める内容の差(=ギャップ)がわかります。
ギャップを把握できれば、次のステップにすすむために「自分が何をすべきか?」や「不足点」などがわかるでしょう。
しかし、全ての従業員が次のステップにすすみたいわけではありません。人によっては、現状を維持したい人もいます。(例:役職に就きたくない)
そのため、次のステップにすすむための教育プログラムと、現状維持をしながら成長できる教育プログラムの2種類を用意するとよいでしょう。

まとめ

キャリアラダーを導入すると、従業員が着実にステップアップしやすくなり、優秀な人材の育成・輩出につながります。優秀な人材を確保したい場合には、キャリアラダーを導入しつつ、自社にあった人材を紹介してもらえる転職サービスも活用するとよいでしょう。
現状でキャリアラダーの導入が難しいものの、新しい制度で責任をもってマネジメントを実施したい場合には、新たな業界や分野への転職も選択肢の一つとして考えられます。
転職を希望する場合には、CxOやハイクラス人材に特化したエグゼクティブ専門の転職サービス「BNGパートナーズ」をご活用ください。