執行役員と部長の違いとは?昇格するために必要な6つの条件

企業の重要なポストのひとつに「執行役員」や「部長」があります。それぞれ重い責務を担う職責であり、企業の成長のためには欠かせないポストです。

今回は、執行役員と部長の役割の違いや、部長から執行役員に昇格するための条件などについて解説します。

執行役員制度とは?執行役員の定義と役割

執行役員制度とは、事業戦略を実行する役目を担う役員制度を設けることを意味します。執行役員を配置しなくても事業運営は行えますが、より確実に事業戦略を実行していくには執行役員制度は有効です。

執行役員は、経営陣が決めた方針にもとづき事業戦略を考え陣頭指揮にあたります。

執行役員には、市場や競合他社の状況などを把握する広い視野と、戦略立案と実行力・調整力などが求められる重要なポジションです。

執行役員と部長、取締役との違い

企業内部の重要なポストに「取締役」や「部長」がありますが、執行役員と取締役や部長との違いについても見ていきましょう。

それぞれの役職は次のように整理できます。

  • 取締役……企業の方針を決める舵取り役
  • 執行役員……方針に基づき具体的な戦略を決め実行する役目
  • 部長……具体的な部門のリーダー

執行役員と取締役との違い

取締役は、経営方針に関する意思決定を担う役職です。一方、執行役員は取締役を含む経営層の決定に基づき、具体的に業務を執行する役目を担います。取締役は「決める」立場、執行役員は「実行する」立場と考えるとわかりやすいでしょう。

執行役員と取締役の違いについて自動車メーカーの例で考えてみましょう。

自動車メーカーで新市場への進出や新技術の開発などを行う場合、企業の将来を左右する大きな決定をするのが「取締役」です。取締役が一人しかいない場合は、その取締役が代表取締役となり最終的な決断をすることになります。

つぎに、取締役が決めた決定を具体的に実行していくのが執行役員です。自動車メーカーの例で考えると、新しい製造ラインの計画や新規人員リソースの配置を考え、販売戦略を策定して利益をあげていくのが執行役員の役割です。執行役員には、高度な戦略実行能力が求められます。

また、事業成功のために必要な人員リソース配分の責任も担います。執行役員には、経営層はもちろん各部門の責任者・地域のステークホルダーなど、さまざまな責任者との高いコミュニケーション能力が求められるでしょう。

執行役員と部長との違い

執行役員とは違い、部長はより専門的な分野で部門やプロジェクト単位での運営責任を担います。

自動車メーカーの事例なら、執行役員が決めた戦略に基づき新しい製造ラインを適切に運営するのが製造部長の仕事です。人事部門の部長は、新市場の商品投入に伴う人事戦略を考え実行していく役割を担います。

競合他社の動向をリサーチし、顧客ニーズを踏まえた販売戦略を考え実行していくのはプロモーション部門の部長ということになるでしょう。

取締役と執行役員・部長は、それぞれ決定事項や責任範囲が違いますが、それぞれの役職が適切に機能することで企業は確実に目標を達成できるようになります。

執行役員と部長|昇格するための条件の違いとは?

部長から執行役員に昇格するための条件についても詳しく見ていきましょう。

執行役員を新たに任命する場合「外部から採用するケース」と「内部昇格により任命するケース」ふたつのパターンがあります。事業に関する経験値や雇用上の問題などを考えると、実際には社内で執行役員に昇格するケースが多いのが実態です。

1)経営手腕や戦略的思考

執行役員は、市場や企業の「全体像」を把握して戦略を決めなければいけません。さきほどの自動車メーカーの例で考えると、部長に留まる人と執行役員になる人とでは、次のような違いがあります。

部長で留まる人執行役員になれる人
戦略立案   製造や人事など部門内の戦略立案に留まる経営層の方針を理解し全社的な視点やグローバルな目線で戦略を練ることができる
リスク管理専門的な分野に限ったリスク管理に留まる採用や退職を踏まえた人員リソース、コンプライアンス、予算実行、行政との対応など広範囲にわたるリスク管理ができる
先見性専門分野に関する先見性はあるが視野が狭い市場環境や技術革新を踏まえた先見性がある。また事業をとりまく法律の改定などの分野にも明るい

部門レベルでの仕事に留まっていると、執行役員への昇格は難しいでしょう。全社的な視点で戦略を立案できるよう日々視野を広げ、経営層が参加する重要な会議などでは自分なりの戦略をアピールすると、執行役員候補として名前があがるかもしれません。

2)事業にかかわる経験年数

執行役員に昇格するためには、部長職を経て豊富な経験を積んでいることが求められます。

執行役員になるには、長い経験年数だけではなく、業界知識や多様な経験から生まれる高度な経営判断力が必要です。

また、執行役員には各部門の責任者への指導力が求められます。部門を跨いだ経験値がないと各責任者からの信頼は得られないでしょう。

執行役員を目指すなら、部門横断的なプロジェクトに参加したり異なる部門の業務に携わったりして、広い視野と広範囲で経験値を高めることが重要です。

3)マネジメント経験(領域や経験値の違い)

執行役員は、複数の部門または業務領域を横断するマネジメント能力が必要です。一方、部長は特定の分野やチームの管理に特化しています。

部長には、専門分野での専門性を高めていく能力が求められます。一方、執行役員には事業をとりまく技術の進化や法的リスクなど、広範囲な要素を包括的にマネジメントできるスキルが必要です。

将来、執行役員への昇格を目指すなら、広範囲なマネジメント経験が積めるよう全社的な課題に積極的に関与していく姿勢が求められるでしょう。

4)人脈の広さ

執行役員になるためには、部長以上に広い人脈が必要です。

社内はもちろん、他業界のリーダーや行政の関係者、地域のステークホルダーとの強いつながりが求められます。

人脈を広げるためには、まずは社内外のイベントや業界セミナーなどに積極的に参加し、さまざまな分野の専門家やリーダーとの交流を深めてみましょう。

また、公的機関や非営利組織とのプロジェクトに関与することも、ステークホルダーとの人脈形成につながります。

5)革新性

「革新性」についても、部長と執行役員の役割は大きく違ってきます。

部長に求められる革新性は執行役員よりも領域が狭く、具体的な技術やプロセスの改善に特化しているケースが多いでしょう。一方、執行役員には業界全体に影響するような革新性が求められます。新しいビジネスモデルの開発や最新技術の導入、これまで誰もやらなかった業務プロセスの根本的な改革も期待されます。

執行役員に相応しい革新性を持つには、業界の最新トレンドや技術を積極的に学び、異業種のアイデアなども取り入れる柔軟性が必要です。

6)意志決定力

部長職は部門内の意志決定や問題解決が中心ですが、執行役員には企業全体の利益を考慮した意志決定力が求められます。

部長の決定は、日常的な業務運営や短期的な目標達成に限定されるケースがほとんどです。一方、執行役員には企業全体の利益を考慮した戦略的な意思決定が求められます。長期的な視野を持ち、法的リスクなどを考慮した高いレベルの判断力が必要です。

意志決定力を磨くには、実際の業務経験を積み重ねることはもちろん、社内外のリーダーシップ研修なども活用できるでしょう。

執行役員制度導入に関するよくある質問

これから執行役員制度を導入する予定の企業や、これから執行役員を目指す方に向けて、関連するよくある質問にもお答えしていきたいと思います。

執行役員を任命するためのステップを教えてください

執行役員を任命するステップは企業によって異なります。執行役員には委任型執行役員と雇用型執行役員がありますが、一般的には内部昇格する雇用型執行役員が多いでしょう。

執行役員の任命は経営上の重要な決定事項であるため、基本的には取締役会による承認が必要です。

執行役員に推薦されるためには、過去の業績評価やリーダーシップ能力に関する社内評価、また高度な戦略立案力や実行力があるかが問われます。

候補を決めるのは経営層ですから、執行役員になりたいなら普段から経営層が参加する会議にも積極的に参加し、自身の能力をアピールしておくと良いでしょう。

執行役員と部長は兼任できますか?

執行役員と部長を兼任できるかどうかは、企業の規模や経営戦略の内容によって変わってきます。執行役員には全体戦略を考え実行する能力が求められ、部長には高い専門性と責任が求められます。それぞれの役目や責任は違うため、執行役員と部長との兼務は、企業の戦略実行のうえでは妨げになるケースがほとんどです。

ただし、中小企業やスタートアップなど規模が小さい組織においては、逆に兼務したほうが良いケースもあります。

執行役員の報酬の決め方は?

執行役員の報酬は、役員の形態の違いや企業規模によって変わってきます。

雇用型執行役員の場合は、部長からの昇格過程で任命されることが多く、部長報酬+αの報酬が与えられるケースが多いでしょう。

執行役員には明確な責任が求められるため、固定給よりもインセンティブやストックオプションなど、成果報酬のウエイトを大きくするのが一般的です。

執行役員を配置するメリットやデメリットを簡単に教えてください

執行役員を配置するメリットとしては「迅速な意思決定ができる」という点があげられます。執行役員には戦略実行に関する強い権限を与えられるため、変化の激しい市場環境においてはスピーディーな対策を講じることができます。

執行役員がいないと、社内外で重大な問題が発生した場合、その都度経営層に判断を委ねる手間が発生し意志決定にも時間がかかります。

一方、デメリットとしては「権限集中によるリスク増加」や「コスト増」があげられます。

執行役員が誤った判断ばかりしてしまうと企業の成長にも大きな影響を与えるため、監査役による厳しいチェックなど管理体制の強化も必要です。また、執行役員の追加は人件費や成果報酬増につながり、実質的なコスト増が懸念されます。

執行役員制度は単に名誉を与えるための制度ではありません。戦略実行のうえで、本当に必要かどうか見極めることが重要です。

まとめ

執行役員と部長は、明確に役割が異なります。執行役員に戦略的な意思決定と高度なマネジメント能力が求められる一方で、部長は特定の部門の運営に専念することが求められます。

これから執行役員を目指す方は、執行役員に必要なスキルや人脈を理解し、経営層に積極的にアピールしていくと候補として選ばれるかもしれません。

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監修者

人材育成/組織マネジメント専門ライター(KEN’S BUSINESS代表)

嶋よしかず

メーカーのエンジニア、法人営業コンサルタントを経て、大手通信企業にて600名の組織を統括。所属企業の経営戦略や人材育成に携わる。現在は大手オウンドメディアにて、組織マネジメントや人材育成などの記事執筆や監修に携わっている。