圧倒的な成長スピードをもってして、“個のためのインフラになる”というミッションの実現にひた走る株式会社クラウドワークス。行政とタッグを組んだ施策も多く打ち出し、“インフラ”としての存在価値を確立しつつありますが、同社の創業者であり、代表取締役社長 兼 CEOを務めるのが吉田浩一郎氏です。
前編では、自身が直面した組織崩壊のピンチをチャンスに変え、企業に根付くに至った“Be Agile”の姿勢に基づく率直さ、その率直さを育むと同時に個の成功体験を枠組み化するための数式が明らかになりましたが、後編では見据える未来の組織像の実現に欠かせないCxO人材の採用戦略にフォーカス。前編に引き続き、吉田氏と20年来の友人でもあるBNGパートナーズ代表・蔵元二郎が解き明かします。
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優秀な人材と二人三脚、成功体験をビジネスモデルにする
蔵元:“Be Agile”という企業文化に基づく、従業員一人ひとりの率直さ。吉田社長もまた、その率直さを率直に受け入れ、スピーディーに変化を繰り返していく。この変化の繰り返しは、企業が成長し続けるために欠かせない要素です。そして、吉田社長を見ていて強く感じるのが、成長し続ける企業は成功もすれば、失敗もするということです。
組織崩壊の危機からの復活も、フルフレックス・フルリモートという働き方の採用も、吉田社長がお話になったクラウドワークスの動きは、ここ5年くらいのことですよね。5年という期間に組織を大きく変化させた一方、こうしたインタビューで表に出てくるのは氷山の一角。吉田社長は表に出てくる以上のチャレンジを繰り返し、成功も失敗も経験しているはずです。この記事をお読みの方には、ぜひ、そのことを伝えたいですね。
吉田:蔵元さんのおっしゃるように、チャレンジを重ねることは経営者の必須条件です。また、チャレンジを続けることを大前提に、同じ間違いを繰り返さないことも重要。これも蔵元さんの言うとおり、私は多くの失敗を経験しています。それこそ、新規上場を果たしたときも、M&Aに乗り出したときもそう。よくわからないままに新規事業を立ち上げ、よくわからないままに会社を買った結果、当然、うまくはいかなかった。
しかし、大事なのは失敗した後です。私はクラウドワークスの経営者ですが、“経営者=万能”ということはあり得ない。だからこそ、同じ間違いを繰り返さないために、新規事業やM&Aを成功に導くような人材を獲得してきました。こうしたスペシャリストに仕事を任せることは、起業家が経営者になっていくために必要な過程です。ただ、当たり前のことではありますが、失敗したからスペシャリストに任せる、ではいけない。
人に任せた後には自分も学び、一つひとつのチャレンジがどのような枠組みを持って成功したのか、どのような水準なのか、合意していくことが欠かせません。そうでなければ属人化からは脱せず、ケイパビリティは高まらない。迎え入れた人材と共に二人三脚で進んでこそ、成功体験が習熟したビジネスモデルへと進化します。そう考えるとやはり、新たなスペシャリストを迎え入れることも企業の成長に必要な要素です。
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ビジネスとは航海。先を見通しながら舵を切るのがCxO
蔵元:成長を続けるためにスペシャリストを迎え入れる。それはCxO採用とイコールですが、外部から優秀なCxO人材を獲得することは、いまや、欠かすことのできない動きです。大前提として止まらない人口減少があるのはもちろん、産業はソフト化の一途をたどっています。資金や装置が企業インパクトを大きく左右していた時代は終わり、産業がソフト化した現代においては、知的生産性の重要度がぐっと増していますよね。
吉田:クラウドワークスでは、2023年5月に中期経営目標である“YOSHIDA300”を発表しましたが、その先に目指すのは売上1,000億、営業利益100億という数字です。今まさに、この数字を達成するための議論を重ねている最中ですが、売上1,000億、営業利益100億を見据えた従業員数は3,000名ほど。3,000名規模の企業の姿を想像したときに、事業の領域ごとにCxOと呼ばれる人材を配置する必要があるだろう、と。
なぜなら、ビジネスは一種の航海ですよね。「この船は5分後に衝突します」と言われても、直前の警告では回避できない。しかも、乗っている船が大きくなればなるほど、回避は難しくなります。だからこそ、衝突のようなトラブルを未然に防げる、先を見て舵を切れる存在が必要です。これを会社という組織に置き換えると、つまりはCxO。長い目線で見渡しながら仕事を成していくことが、私の考えるCxOの条件です。
蔵元:長い目線で仕事を成していく。私たちBNGパートナーズも御社の採用活動を支援させていただいていますが、改めて聞かせてください。吉田社長は、そうしたCxO人材をどのように見極めているのか。
吉田:最も大切にしているのは対話ですね。対話を大事にすべく、うちではどんなに輝かしいキャリアをお持ちのCxO候補の方にも、まずは最短で3か月、最長で6か月ほどの間は、肩書きや役割を決定せずにジョインしていただきます。もちろん、ある程度の想定はあるものの、役割は決め込まない。そうした状態でインタビューを重ね、社内を自由に観察していただき、オブザーバーとして会議に参加していただくような形です。
なぜ、このような形を採るのかというと、私はCxO候補自身が持つイシューを知りたい。CFOを例にしても、その役割は無限。PL・BSのような話も、銀行や市場との交渉だってCFOの領域です。しかし、見極めるべき人材が、その領域すべてに長けているとも限らない。その人独自のケイパビリティがどこにあり、うちの会社とのマッチングがどこにあるかを知るには役職を決め込まず、本人のイシューを待つほうが適切なはずだ、と。
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個のイシューを重んじたから生まれた、革新的人材開発
蔵元:役職を確定せず、オブザーバーの立ち位置で企業にジョインするケースは珍しくないものの、その期間の長さに驚きますね。僕はかねてから人材紹介会社の代表として、組織図やジョブは書き換えられてもヒトを書き換えることはできない。だから、難しくともヒトを軸とした組織図やジョブを描きたい、という話をしていますが、御社のCxO採用はそのお手本ですね。お手本のような存在が、こんな近くにいたとは。
吉田:うちの場合、役職にコミットするような採用をすると、むしろ失敗することが多いから。今のような本人のイシューを尊重したゆえの好事例が、それこそ、組織開発部 部長の伊藤潤一ですよ。皆さんもご存じのとおり、彼は金融のスペシャリスト。普通に考えれば、CFOとして招き入れるべき人材です。私としても当初は、そうした想定でした。でも、彼自身のイシューが人材開発にあり、金融の知見をもとに人事の仕事をしたい、と。
これが本当に大正解でしたね。彼の人材開発の手法は、人材を金融市場の目線で捉えるようなやり方。特に革新的だと思ったのが、「いつ退職しますか?」というアンケートを従業員全員に投げかけたんです。人材を評価するときって、普通はロイヤルティに関する質問をするじゃないですか。それなのに退職の想定時期を聞くって、正直なところ、社長の立場としては嫌だな、と思いましたよ(笑)。
でも、これがおもしろい。回答の平均値に意味はなく、1〜2年だったり、反対に10年だったり、突出した数字の歪みを見ているんです。1〜2年という回答だった場合、この裏にはジョブ型への強い志向が見えてくる。例えば、何々を成し遂げて、その成果を糧に起業したいとか、新規事業を任せてもらえないなら辞めるとか。反対に10年と答えた場合には、自社のカルチャーを一緒に築くような仕事を任せられますよね。
蔵元:なるほど。めちゃくちゃ興味深いし、腹落ちしますね。それに伊藤さんの発想はもちろん、その提案を率直に受け入れる吉田さんの度量もすごいな、と。「社長としては嫌だな」というお言葉がありましたけど、それはそうですよ。自社の従業員の退社想定時期を目の当たりするのは、なかなかしんどい(苦笑)。
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来たれ、共に“個のためのインフラになる”を達成する人
吉田:彼いわく、これは株式市場が認識していない企業価値を見出すための手法を、人事にそのままスライドしたものなんだ、と。まさに金融出身ならではのアイデアだし、その革新的な手法があったからこそ、縦割りから横串の組織への流れが加速しましたね。見出せずにいた個々のケイパビリティが明らかになり、分け隔てのない抜擢が可能になった。すると当然、従業員のモチベーションも上がるじゃないですか。
一方、独自のイシューを持った人材といかに巡り合うのか、これも重要です。優秀なCxOと巡り合うためにも、BNGさんのような存在が助けになります。特に蔵元さんの会社は伴走型。単に優秀な人材を紹介するのではなく、ある意味、社外の採用責任者のような目線で、企業の経営理念にコミットしながら人材を紹介くださる。こうした関わり方をする人材紹介会社は、組織のケイパビリティを高めてくれる存在でもあるな、と。
蔵元:お付き合いが長いだけに、照れくさいですね。ありがとうございます。今日、吉田社長のお話をじっくりお聞きして、改めてクラウドワークスという組織の柔軟さ、アグレッシブさを痛感しています。こうした組織は貴重であり、真に優秀な人材が活躍できる組織です。人材紹介会社の代表という立場としてはもちろん、一人の経営者としても、クラウドワークスはずっと追い続けたくなるチャレンジャーカンパニーですね。
吉田:こちらこそ、今日のインタビューを通じて、今、私たちが求めているCxO像がより明確になった気がしています。クラウドワークスのミッションは“個のためのインフラになる”ことです。企業という単位から個人を最適化してきた20世紀に対し、今は企業組織を作らずとも個々が世界とつながり、ビジネスができる時代。そうした時代において、私たちはあらゆる個人がビジネスを成すためのインフラになりたい。
そうしたビジョンを数字に置き換えたとき、仕事の流通量は2兆円規模。その一つ手前の段階として見据えているのが、先ほどもお話しした売上1,000億、営業利益100億という目標です。“個のためのインフラになる”というミッションに基づき、売上1,000億、営業利益100億という目標に向かって走りたい人は、ぜひ、クラウドワークスのCxO候補としてエントリーいただき、活躍していただきたいと考えています。
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