コンピテンシー面接とは?必要性や導入方法、導入時のポイントを解説

コンピテンシー面接とは、人材の行動特性を評価基準とする面接手法です。労働力人口の不足や評価基準の統一が求められたことにより導入する企業が増えてきました。この記事では、コンピテンシー面接の概要やメリット、デメリットとともに、導入方法や導入時のポイントについて解説します。

目次[非表示]

  1. コンピテンシー面接とは?
  2. コンピテンシー面接のメリット
  3. コンピテンシー面接のデメリット
  4. コンピテンシー面接の導入方法
  5. フレームワークを使った質問例
  6. コンピテンシー面接を導入する際のポイント
  7. まとめ

コンピテンシー面接とは?

コンピテンシー面接とは、人材の行動特性から自社での活躍を見極める面接手法です。コンピテンシー(competency)とは「適性」「能力」を意味する言葉ですが、人材業界においては「優秀な成果を発揮する行動特性」を指しています。

「過去の行動」について話を掘り下げることにより、応募者のコンピテンシーレベルを評価します。合否の基準となるのは、自社のハイパフォーマーに共通している行動特性です。

自社のハイパフォーマーと共通する行動特性を持った人材を獲得することにより、ミスマッチを回避する手法です。

コンピテンシー面接の必要性

コンピテンシー面接の必要性が高まった理由として挙げられるのは、採用難易度の上昇です。近年の日本は、少子高齢化による労働人口の減少により、売り手市場となりました。終身雇用の崩壊による人材の流動化も進み、能力がある人材が自社にとどまり続ける時代ではありません。

そのため、多くの企業では、自社に適した人材の確保が課題となっています。効率的に候補者を増やすため、多くの企業が利用しているのが、人材会社です。人材会社の利用により効率的に応募を集められる一方、多くの応募者の中から、自社で活躍できる人材を見極めなければなりません。

従来の面接官のスキルだけに頼った手法では、質問内容や評価基準にバラツキがあり、入社後にミスマッチが発生するケースがあります。面接官の能力に頼らず、質問内容や評価基準を揃えた面接をするための手法として、行動特性を評価基準としたコンピテンシー面接が注目されています。

コンピテンシー面接と従来の面接との違い

コンピテンシー面接と従来の面接との違いは、雰囲気や第一印象といった表面的な情報ではなく、応募者の本質的な特性を見抜くことです。具体的な違いは以下のとおりです。

コンピテンシー面接

従来の採用面接

面接スタイル

・共通マニュアルに沿って質問と評価をする
・面接官が違っても一貫性のある評価

・履歴書や職務経歴書をもとに、面接官が臨機応変に質問する
・面接官によってバラツキがある評価

評価基準

・自社のハイパフォーマーの行動特性に近い行動特性を持っているか
・実績は大小よりも再現性を重要視する

・自社の業務に適した能力や経歴、実績を持っているか
・雰囲気や第一印象は良好か

質問項目

・過去の行動の意図や詳細などを会話形式で深掘りする
・考えさせるのではなく「思い出してもらう」質問をする

・自己PRや経験など表面的な情報を質問する
・志望動機や質問の答えを「考えてもらう」質問をする

評価指標コンピテンシーレベルの活用

コンピテンシーレベルは、行動特性を以下の5段階に分類できます。応募者が、どのレベルの行動特性を持つ人材かを見極めることにより、コンピテンシーレベルを測ります。

レベル1:受動行動


レベル2:通常行動


レベル3:能動・主体的行動


レベル4 創造・課題解決行動


レベル5:パラダイム転換行動

どのレベルの人材を必要とするかは、募集する職種や企業風土によって異なります。そのため、コンピテンシーレベルを理解し、自社が求めるレベルを設定することが大切です。

レベル1:受動行動

レベル1は、仕事に対して受け身となっているレベルです。能動的に動くのではなく、上司の指示に従って行動します。目的意識や責任感が低いタイプです。受動的な働き方を求めている場合にマッチしています。

レベル2:通常行動

レベル2は、与えられた業務に対し責任を持って取り組めるレベルです。レベル1と同様に、能動的には動かないものの、責任感を持ってやるべきことに取り組めます。マニュアル通りに正確に業務をこなせる人材を求める場合にマッチしています。

レベル3:能動・主体的行動

レベル3は、目標達成に向かって積極的に取り組めるレベルです。決められたルール内であれば、自ら判断して改善できるため、上司の指示がなくても業務を遂行できます。

たとえば「新人教育をしてほしい」と指示された場合、必要な資料の準備やスケジュール調整ができます。多くの企業で求められている最低限のレベルと言えるでしょう。

レベル4:創造・課題解決行動

レベル4は、自らの行動により周囲を巻き込んで状況を変えられるレベルです。レベル3とは行動範囲が異なり、自分の業務範囲だけではなく、チームや組織の課題解決をするために行動できます。

たとえば、部署全体の業務効率化につながるアイデアの考案が挙げられます。多くの企業が求めるタイプの人材と言えるでしょう。

レベル5:パラダイム転換行動

レベル5は、リーダーシップを発揮しながら、これまでの固定観念や常識を覆せるレベルです。独創的なアイデアにより、仕事の仕組み自体を変えられる極めて稀な人材です。

たとえば、新規事業を立ち上げたり、これまでのビジネスモデルを覆すような改革を起こせます。ただし、このレベルの人材は周囲への影響力も大きく、必ずしも自社にマッチするとは限りません。

コンピテンシー面接のメリット

コンピテンシー面接のメリットには、以下の3つが挙げられます。

・応募者の本質が見極めやすくなる


・ミスマッチ防止につながる


・評価基準を統一できる

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

応募者の本質が見極めやすくなる

コンピテンシー面接のメリットとして、応募者の本質が見極めやすくなることが挙げられます。コンピテンシー面接では、自社が求める行動特性を持った人材かどうかが評価基準となるため、履歴書や印象といった表面的な情報に左右されません。

従来の面接手法では、面接時に緊張し、思うように自分をアピールできなかった応募者もいたでしょう。しかし、応募者の中には、本来であれば自社が求める行動特性を持っている人材がいた可能性があります。

また、コンピテンシー面接で過去のできごとに対して質問を深掘りすることにより、履歴書や職務経歴書の内容や、話していることに誇張や矛盾がないかも確認できます。コンピテンシー面接により、短時間で応募者の特性を見抜き、自社に適した人材の確保につながるのです。

ミスマッチ防止につながる

コンピテンシー面接は、ミスマッチ防止にもつながります。コンピテンシー面接では、過去の行動やその意図を深掘りします。それにより、面接に向けて準備してきた回答ではなく、普段の行動特性を知ることにより、入社後の働く様子をイメージできるのです。

そのため「自社が求める能力を有しているのにもかかわらず、入社後に企業風土に合わず、なかなか成果がでない」といったミスマッチを防止できます。コンピテンシー面接により、能力だけでなく、内面のマッチングができるのです。

評価基準を統一できる

コンピテンシー面接により、評価基準を統一できることもメリットです。コンピテンシー面接では、自社のハイパフォーマーの行動特性から「コンピテンシーモデル」を作成し、そのモデルとの共通点を探る質問を準備します。

コンピテンシーモデルが評価基準になるため、面接官の主観による評価が入りません。だれが面接を担当しても、同じ基準で評価することにより、採用の精度も向上します。

コンピテンシー面接のデメリット

コンピテンシー面接のデメリットには、以下の2つが挙げられます。

・社内にモデルとなる人材がいないと成立しない


・コンピテンシーモデルの作成に手間がかかる

ここでは、それぞれのデメリットについて解説します。

社内にモデルとなる人材がいないと成立しない

コンピテンシー面接では、社内にいるハイパフォーマーをモデルとしてコンピテンシーモデルを作成します。もし、社内にモデルとなる人材がいない場合、架空の人物像からコンピテンシーモデルを作成しなければなりません。

しかし、架空の人物像が自社にマッチした行動特性を持っているとは限りません。理想を追求するあまり、自社が求めるものとは異なるモデルをつくってしまうケースもあります。

コンピテンシー面接は、実際に自社で活躍した人材をモデルにするからこそ、評価基準に信憑性がでます。そのため、自社にモデルとなる人材がいなければ、コンピテンシー面接の成立は難しいと言えるでしょう。

コンピテンシーモデルの作成に手間がかかる

コンピテンシーモデルの作成に手間がかかることも、デメリットです。コンピテンシーモデルは、職種によって異なるため、ひとつの企業でも複数のコンピテンシーモデルを作成する必要があります。

コンピテンシーモデルを作成するには、職種ごとに適した人材を探してヒアリングします。職種が多ければ、その分時間がかかるのです。また、ハイパフォーマーにヒアリングをしても、本人がその理由を自覚していないケースがあります。

そのため、本人が無自覚であることを想定したうえで、根気よくコンピテンシーモデルを作成する必要があるのです。

コンピテンシー面接の導入方法

コンピテンシー面接の導入は、以下の手順で進めます。

1.ハイパフォーマーの行動特性を分析


2.評価基準の作成・共有


3.質問・回答のシナリオを作成


4.面接担当者を育成する


5.面接を実施する

ここでは、それぞれの手順について解説します。

1.ハイパフォーマーの行動特性を分析

はじめに、自社のハイパフォーマーの行動特性を分析します。行動特性を分析するには、ハイパフォーマーの業務フローを細分化し、状況や動機、手法といったプロセスを洗い出します。

以下の視点で分析すれば、行動特性を掘り下げられるでしょう。

・どのような状況か(具体的な現場や状況)


・どのような工夫をしたか


・どのような困難に直面し、どのように解決したか


・解決するためにどのような対応をとったか


・どのような考えにより、その対応をしたのか


・その対応をするために、どのような行動をしたのか

前述したように、職種によって求める行動特性が変わるため、部門や職種ごとに分析する必要があります。必要であれば、部署の業務を理解しているマネージャーの確認を仰ぎ、自社の社風や理念とコンピテンシーモデルが乖離していないかを確かめましょう。

2.評価基準の作成・共有

ハイパフォーマーの行動特性を分析できたら、評価基準を作成します。ハイパフォーマーの行動特性にもとづいて、評価項目を決めます。評価基準となるのは、前述した行動特性レベルです。

行動特性を5段階で評価できるような基準をつくります。適性検査結果との照合や、外部ツールを利用する企業もあります。

3.質問・回答のシナリオを作成

評価基準を作成したら、質問と回答のシナリオを作成します。質問は、質問に対する回答を想定したうえで、進め方まで決めておくことが大切です。たとえば「Aと回答された場合、評価は2とする」「Bと回答された場合、深掘りする質問に進む」のように、マニュアル化すると良いでしょう。

見極めたい項目ごとに質問と回答例、進め方を用意することにより、精度の高いコンピテンシー面接になります。

4.面接担当者を育成する

質問と回答のシナリオを作成したら、面接担当者を育成します。コンピテンシー面接は、誰が面接を担当しても共通の質問や評価ができるものの、従来の面接とは流れが異なります。

そのため、スムーズな実施ができるような練習が必要です。ロールプレイングといった練習をするとともに、コンピテンシー面接の考え方や目的を理解してもらうことも大切です。

5.面接を実施する

面接担当者を育成したら、面接の実施です。面接では、面接官が話すのではなく、応募者の話を引き出すことに徹する必要があります。過去を振り返りながら回答するため、言語化できないケースもあるでしょう。

その場合は面接官の質問により、言語化を助けることも必要です。また、行動特性を見極める質問をすると、他人を見下したような応募者の本音がでる場合があります。応募者の言葉遣いにも注目することにより、より応募者の本質を見抜けるでしょう。

フレームワークを使った質問例

コンピテンシー面接ではフレームワーク「STAR」を使うことにより、体型的に行動特性を見極められます。STARは、以下のステップで質問を掘り下げます。

1.Situation(状況)


2.Target&Task(課題)


3.Action(行動)


4.Result(結果)

それぞれのステップについて解説します。

1.Situation(状況)

Situationは、行動を起こした背景を理解するための質問です。同じ行動でも、状況によって行動意図は異なります。行動を起こした状況を把握することにより、背景を理解でき、行動特性を判断できるのです。

Situationでは、組織の状況や役割、権限を確認します。具体的な質問例は以下のとおりです。

・組織のなかで、どのような立場でどのような役割を担っていましたか?


・どのような権限を持っていましたか?


・プロジェクトにかかわっていた人は何人程度でしたか?


・プロジェクトにかかわっていた期間はどれくらいですか?


・なぜそのプロジェクトに取り組んのですか?

2.Target&Task(課題)

Target&Taskは、課題に対する考え方を理解するための質問です。課題を設定したのが応募者自身なのか、与えられたものなのかを把握することにより、問題解決能力やストレス耐性が判断できます。具体的な質問例は以下のとおりです。

・どのような課題を抱えていましたか?

・課題を見つけたきっかけは何ですか?

・課題に対し、どのようなことを考えましたか?

・解決はどの程度難しいと感じましたか?

・課題を解決するため、どのような目標を設定しましたか?

3.Action(行動)

Actionは、課題解決のための行動を理解するための質問です。行動する動機や目的、理由、具体的な行動内容を把握することにより、応募者の行動特性を理解できます。具体的な質問例は以下のとおりです。

・課題解決のために何をしましたか?


・なぜ、その行動をしたのですか?


・周囲からはどのような意見が出ましたか?


・どのような順番で行動しましたか?

4.Result(結果)

Resultは、行動に対する成果を理解するための質問です。具体的な成果だけではなく、そこから学んだことや周囲からの評価を把握することにより、応募者のパーソナリティを理解できます。具体的な質問例は以下のとおりです。

・課題はスムーズに解決しましたか?


・課題解決のためにとった行動は、どのような結果になりましたか?


・反省点や改善点はありましたか?


・この体験から、なにを学びましたか?


・行動により、周囲にどのような影響を与えましたか?


・行動に対する周囲の反応はどうでしたか?

コンピテンシー面接を導入する際のポイント

コンピテンシー面接を導入する際のポイントとして、以下の3つが挙げられます。

・会社全体として取り組む


・定期的に見直す


・適性テストと組み合わせる

それぞれのポイントについて解説します。

会社全体として取り組む

コンピテンシーモデルは職種によって異なります。そのため、コンピテンシー面接を導入する際は、人事部だけではなく、関係する部署との連携が不可欠です。関係する部署の理解が得られない場合、コンピテンシーモデルを作成できず、コンピテンシー面接が成り立ちません。

関係部署と協力し合うためには、会社全体として取り組む必要があります。経営陣からコンピテンシー面接の目的や効果を説明し、従業員全員の理解を得ることにより、協力してコンピテンシーモデルを作成できるでしょう。

定期的に見直す

コンピテンシーモデルは定期的に見直すことが必要です。時代や環境の変化により、自社が求めるコンピテンシーモデルも変わります。一度決めたコンピテンシーモデルを信じ続けた場合、時代や環境の変化に気づかず、ミスマッチが発生する可能性があります。

そのような事態を回避するには、定期的にコンピテンシーの内容を見直すことが大切です。項目とともに、質問の方法を変更し、PDCAサイクルを回すことを意識しましょう。

適性テストと組み合わせる

コンピテンシー面接だけで人材の特性を見抜けるわけではありません。性格テストや対人テストなどの適性テストを実施し、その結果と面接時の回答を比較することにより、行動特性を見抜く精度が上がります。

適性テスト結果と面接時の回答に相違があった場合、自己認識が間違っているか、質問の回答を脚色している可能性が考えられます。適性テストと組み合わせることにより、応募者の真意を見極めましょう。

まとめ

コンピテンシー面接とは、人材の行動特性を理解することにより、自社での活躍を見極める面接手法です。労働人口の不足による人材確保が課題となったことにより、面接官の能力に頼らず、質問内容や評価基準を揃えた面接をするための手法として、注目されています。

コンピテンシー面接を導入する際は、会社全体として取り組むことや、定期的な評価項目の見直しが必要です。

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