M&Aとは?概要や種類から流れまでわかりやすくご紹介

Mergers And Acquisitionsの略称であるM&A。企業の合併・買収を意味します。この記事では、近年は中小企業間で増えてきているM&Aの概要から種類やメリットをご紹介します。

目次[非表示]

  1. M&Aとは?
  2. M&Aの種類
  3. M&Aの流れ
  4. M&Aのメリット
  5. 買収企業の従業員に起こる変化
  6. まとめ

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M&Aとは?

M&Aとは「Mergers And Acquisitions」の略語であり、企業が成長するために他社を買収したり合併したりすることです。

日本ではこれまでM&Aは「身売り」を象徴するワードでもあり、ネガティブなイメージがありました。

しかし近年では、企業が将来的に成長するための手段だったり、後継者が存在しない企業が存続するために行われたりなど、ネガティブなイメージではなく企業価値を向上させるための手段としての認識が定着しつつあります。

まずはM&Aとはどのような目的で行われるのか、なぜ日本でも活発的に行われるようになったのか見ていきましょう。

M&Aの目的

経済産業省による「中小企業のM&A実施件数の推移の調査」によると、2014年から2021年までの約7年間で、M&Aの件数は15倍近く増えていることがわかっています。

また現在では、ベンチャーやスタートアップの存在がメジャーになってきたこともあり、事業拡大や新規事業進出のための大手企業によるM&Aは今後も増えていくことが予測されています。

引用:中小M&A推進計画|経済産業省

M&Aが求められる理由

近年日本でM&Aの件数が加速度的に増加してきたのは「経営者の高齢化」と「事業承継」が主な理由です。

現在の日本では中小企業の経営者の高齢化が課題となっており、少子化によって後継者を見つけることさえも難しくなりつつあります。

休廃業・解散を選択した企業の経営者年齢構成を見ると、60〜80代が約80%以上を占めており、中小企業の後継者不足というのはかなり深刻なものと言えるでしょう。

中小企業庁の統計をもとにしたデータによると、今後中小企業経営者の引退時期は「68〜70歳」が平均になると見られており、そこから次の経営者へ事業を承継していかなければいけません。

こういった経営者の高齢化・後継者の不在という背景もあり、近年では事業承継の手段としてM&Aが活発に活用されるようになりました。

M&Aの種類

M&Aは、次の7つの種類に分けられます。

・株式譲渡

・事業譲渡

・会社分割

・株式交換

・合併

・第三者割当増資

・資本業務提携

以下で詳しく見ていきましょう。

株式譲渡

引用:中小M&Aの主な手法と特徴|経済産業省

株式譲渡とは、譲渡側の株主(上図のX株主)が、保有している会社の発行済み株式を譲り受け側(上図のB社)に対して譲渡するM&Aの手法です。

譲り渡し側の株主が変わるだけで、会社組織はそのまま引き継ぐ形となり、会社の所有している資産や抱えている負債、従業員や他の会社との契約などは原則存続する形となります。

事業譲渡

引用:中小M&Aの主な手法と特徴|経済産業省

事業譲渡とは、譲り渡し側(上図のA社)が有する事業の全部又は一部(土地や建物、資産・負債や知的財産権など)を、譲り受け側(上図のB社)に譲渡するM&Aの手法です。

事業譲渡では所有している事業の全部または一部を一括して売却することになるので、取引が複雑かつ大規模になるケースが多く、事前に社内で慎重な検討と契約交渉が行われます。

会社分割

会社分割とは、企業が抱えている事業を切り離して別会社に譲渡するM&Aの手法です。

会社分割の特徴は、企業が所有している施設や従業員なども含めて、包括的に承継される点になります。

通常は経営難の企業が事業再編を行う場合や、後継者のいない企業が事業承継を行う目的で会社分割を利用するケースが多いです。

株式交換

株式交換とは、「子会社」となる会社の発行済み株式の全てを「親会社」となる会社が取得するM&Aの手法です。

発行済み株式の全てを取得された子会社は「完全子会社」、取得した会社は「完全親会社」と称されます。

合併

合併とは、2つ以上の企業を1つに統合させるM&Aの手法です。合併によってそれぞれの企業は自社が所有している資産や抱えている負債を統合して、1つの法人格になります。

資本提携や業務提携などとは異なり、存続する企業以外の法人格は消滅するのが合併の特徴です。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、会社が新しく株式を発行して、その割り当てを受ける権利を特定の第三者に対して与える手法です。

M&Aとして第三者割当増資を利用する場合は、譲渡企業が新株を発行して、譲り受け企業がその株式を引き受ける形になります。

譲り受け企業が50%を超える株式を保有することによって、譲渡企業の経営に参画することが可能となり「経営権の移動によるM&Aの成立」とみなされます。

資本業務提携

資本業務提携とは、複数の企業が資本の移動と業務の協力を行うことを指します。資本の移動には、「第三者割当増資」を利用するのが一般的です。

合併や買収とは異なり、「会社の経営権を取得する目的」がないので、資本業務提携は狭義の意味でM&Aには含まれません。

しかし資本業務提携をして事業がうまく行ってから、合併や買収などに進んでいくこともあるので、広義の意味のM&Aとして扱われています。

M&Aの流れ

経済産業省による中小企業向けの「中小M&Aハンドブック」では、日本の企業によるM&Aは次のような流れで進むと記載されています。

引用:M&Aハンドブック|経済産業省

上記流れに沿って、具体的に企業がどのような行動をしていくのか詳しく見ていきましょう。

1.M&Aの検討

売り手側も買い手側も、まずはM&Aの検討をするところから始めます。

売り手側の場合、次のようなポイントを中心に検討することが多いです。

【売り手側が検討するポイント】

・不採算事業の切り離し

・第三者への事業承継

・企業譲渡のタイミング

・譲渡した後の役員や従業員の待遇がどうなるか

・商品やブランドの引き継ぎ

・売り手側経営者の引退後の生活

買い手側の場合、次のようなポイントを中心にM&Aをするかどうか検討します。

【買い手側が検討するポイント】

・買収後の組織のあり方

・買収後の成長戦略

・どのような企業を買収するか

・買収期間はどれくらいになるか

2.手続きの進め方を決定する

M&Aを行う場合、売り手側と買い手側どちらも専門家に依頼して手続きを進めるのか、それとも自社で手続きを進めるのか決める必要があります。

M&Aの専門業者に依頼すれば、財務や税務、法務などあらゆる面でサポートを受けられるのでスムーズに手続きを進めることが可能です。

一方で自社で手続きを進める場合、様々な面で複雑な事務処理を行わなければならないので、M&Aに精通していなければ買収もしくは売却までにかなり時間がかかってしまうでしょう。

基本的には専門業者に依頼して、必要な交渉や契約などを進めてもらうというのが日本のM&Aでは一般的なやり方となっています

3.バリュエーション

M&Aのバリュエーションとは、企業価値を評価することです。

企業価値は、会社もしくは事業の収益性、所有している資産や抱えている負債の額、総合会社や現在の取引内容など様々な様相を考慮して企業の価値を評価したものになります。

正確な企業価値は買収する側、買収される側で立場の違いから利害関係者には異なる影響を与え、また、バリュエーションの結果が利害関係者間で価値の移転として反映される重要なポイントです。

また企業価値は様々な意思決定の場で用いられることになるので、合理的かつ客観的に説明できるものでなければなりません。

M&Aの案件によってバリエーションが行われるタイミングは異なりますが、基本的には売り手側が買い手側を選定する前の段階で行われ、さらに買い手側と売り手側が基本合意をする前の段階でも行われるケースが多いです。

4.マッチング

M&Aにおけるマッチングとは、売り手と買い手それぞれの企業の希望や条件に沿った仲介のことを指します。

一般的にはM&Aのマッチングサイトなどに登録して、売り手と買い手の希望が合致する企業を紹介してもらうというケースが多いです。

サイトに登録して企業を紹介してもらう他にも、オークション方式で買い手を決めたり、他の企業から売り手もしくは買い手となる企業を紹介してもらったりといった方法もあります

M&Aは売り手と買い手どちらも積極的な姿勢で臨んでいるとはいえ、最終的に取引を成立させるためのポイントは企業同士の相性です。

そのためマッチングの初期段階において「M&Aが成功するかどうか」はすでに決まっていると言われており、マッチングのあり方がM&Aの結果を左右していると言っても過言ではありません。

5.交渉

マッチングによって売り手と買い手の企業が決まったら、売却価格や条件を具体的に決める交渉に入ります。この交渉では、バリュエーションで算出された企業価値を前提に妥当な価格を見積もるのが一般的です。

ただしあくまでもバリエーションで算出された企業価値は参考程度であり、交渉によってかなり違う価格によるM&Aの契約が成立することも少なくありません

また売却価格だけではなく、M&A成立後の従業員の取り扱いや、既存事業の存続などもこの交渉段階で決めることになります。

6.基本合意の締結

基本合意の締結とは、売り手と買い手の双方が、M&Aに向けて交渉終了段階での基本的な条件の合意事項を確認するために当事者間で一時的な合意をすることを指します。

一般的には「基本合意書」という契約書を作成して契約を結ぶことにより、売り手と買い手の双方がマッチングからそれまでの交渉で合意してきた内容の整理と合意形成を行うことが多いです。

もっとも基本合意はあくまでもデューデリジェンス前の段階の合意となるので、その後のデューテリジェンスの結果によっては条件の変更が行われることもあります。

また独占交渉権や機密保持などの契約に関する一部の条項を除いて、基本合意の段階では法的拘束力を持たせないケースが一般的です。

7.デューデリジェンス

M&Aにおけるデューデリジェンスとは、売り手側企業に対する事前の調査手続きのことを指します。

デューデリジェンスでは、売り手側の企業から提供された財務や法務に関する情報が正しいか調査を行い、買い手側にとって買収するにふさわしい企業かどうかを調査します。

またデューデリジェンスは調査だけではなく、最終契約の締結に向けて正確な企業価値の評価や経営統合の準備なども目的として行われるケースが多いです。デューデリジェンスを行い、問題がなければそのまま最終契約となります。

しかし事前に提供された情報と実際の企業の実態が異なる場合は、売却額や条件面が見直されたり、M&Aの話そのものがなくなってしまったりすることもあるようです。

8.最終契約の締結

デューデリジェンス終了後は、売り手と買い手企業の間で最終契約を締結することになります。最終契約では、M&Aの最終段階において締結される、当事者間の最終的な合意事項を定めた最も重要な「最終契約書」を作成します。

デューデリジェンス実施前の基本合意書は、あくまでも交渉過程の確認や中間的な合意を確認するためのものであり原則として法的拘束力を持たない契約です。これに対して最終契約書は、それまで行った当事者の交渉を通じて確定した合意事項を全て盛り込みます。

万が一契約当事者の一方が最終契約書の内容に違反して、その違反により他方当事者に対して損害が生じた場合は、違反をした当事者に対して損害賠償請求ができる旨が定められた法的拘束力を持つのが最終契約です。

9.クロージング

クロージングとは、最終契約書に基づいて株式譲渡や事前譲渡などの取引を実行して、売り手から買い手に対してM&Aの対象となっている会社や事業の経験を移転させることを意味します。

一般的には、売り手の履行義務である譲渡対象物の引き渡しと、買い手の移行義務である対価の支払いが行われることがほとんどですが、スキームによって内容は異なります。

たとえば、株券発行会社における株式譲渡タイプのM&Aの場合は、売り手から株券の引き渡しを行うのに対して、買い手からは株券譲渡対価の支払いが行われます。

基本的には最終契約の段階で、M&Aを実行するためのクロージング条件実行日を明確に定めていることが多いです。

M&Aのメリット

ここではM&Aが実施されることによって、買収する側とされる側のメリットはどのようなものがあるのか詳しく解説していきます。

買い手側のメリット

M&Aが実施されることによって、買い手側に生じるメリットは以下の3つです。

【買い手側のメリット】

・新規領域への参入

・技術・ノウハウの取得

・ブランド・信用・取引先・許認可の取得

新規領域への参入

M&Aでは、売り手側が保有している不動産や設備といった有形の資産だけではなく、流通網や顧客基盤といった無形の資産も取り込むことができます。

そのためM&Aで全く違った業種の企業を賠償することにより、短時間で効率的に新規領域への参入ができ、企業のマーケットシェアを拡大することが可能です。

自社一から事業に投資する場合と比較して、時間とコスト、途中で事業が失敗するリスクを大幅に削減することもできます。

技術・ノウハウの取得

M&Aの買い手は、他の企業の技術やノウハウを取得する目的でM&Aを実施することがあります。

自社が持たない最新技術や長い歴史で培われた他社の熟練技術を獲得することによって、企業としてさらに技術力や製品開発力を高めることが目的です。

たとえば既存事業に関連する技術の獲得を目的としている場合、製品開発や事業拡大の面でM&Aを通じて成長することが期待できます。また新たな製品の開発に成功すれば、新規事業への参入を目指すことも可能です。

競争の激しい市場で有利に立てる技術を獲得するためには、企業でもそれ相応の時間と費用を費やさなければなりません、M&Aであれば、必要とする技術をピンポイントで取得し、技術力やノウハウの向上を短時間で測れるメリットがあります。

ブランド・信用・取引先・許認可の取得

M&Aによって、ブランド・信用・取引先・許認可の取得ができるのも大きなメリットです。

許認可を取得して取引先から信用を得て、市場からも一定の価値があるブランドとみなされるには莫大な時間とお金がかかります。

しかしM&Aでは、時間をかけることなくブランド・信用・取引先・許認可の取得ができるので、企業として最短の道のりで時間をかけることなく成長することが可能です。

売り手側のメリット

M&Aが実施されることによって、売り手側に生じるメリットは以下の3つです。

・従業員の雇用を守れる

・後継者不在問題の解決

・資金調達・バイアウト・創業者利益の確保

従業員の雇用を守れる

長く歴史のある家業を受け継いでいる企業の場合「自分の代で会社を潰すわけにはいかない」という意識を強く持っている経営者も多いです。

M&Aによって事業を譲渡すれば、自分の代で会社を潰すことなく、従業員の雇用を守ることができます。

後継者不在問題の解決

近年では、中小企業の経営者の高齢化が進んだことによって、利益を出していたとしても廃業しなければならない企業が増えています。

引用:後継者不在率推移|帝国データバンク

帝国データバンクの調査では、2022年の中小企業後継者不在率は約57.2%という高い数字であることが判明しています。こうした状況を受けて、日本政府も税制度を改正することによって、中小企業の事業承継をスムーズに行えるような仕組みを整えています。

たとえば、事業承継の際の贈与税・相続税の納税を猶予する、法人向け事業承継税制を平成30年度の税制改正で拡充した結果、申請件数が年間400件から6,000件に迫る勢いで増加していると中小企業による発表がありました。

M&Aを行うことによって、後継者不在の問題を解決し、業績がよく事業に対して意欲も高い企業を存続させることができるのです。

資金調達・バイアウト・創業者利益の確保

M&Aを実施することで、売り手側には資金調達やバイアウト、創業者利益の確保というメリットもあります。

ある程度事業を成長させたら他の事業に進出するためだったり、自社株を第三者へバイアウトすることでアーリーリタイヤするためだったりなど、様々な目的でM&Aを活用している起業家も多いです。

買収企業の従業員に起こる変化

M&Aが行われることによって、買収企業の従業員にはどのような変化が起こるのでしょうか?

職場環境の変化

買収されることによって、職場環境が変化することは避けられません。会社にはそれぞれ異なった雰囲気があり、会社独自の文化や考え方などが存在します。職場環境や会社の考え方に共感して退職や転職をしていないという人も多いでしょう。

しかし会社が買収されてしまい企業の経営方針が変わってしまえば、従業員も会社の新しい方針に従わなければなりません。

M&Aによって買収された後は職場環境がガラッと変化するということがほとんどであり、そういった変化に対応できなければ退職しなければならない状況に陥ってしまう可能性もあります。

給与体系の変化

N&Aで働いていた会社が買収された場合、給料が前よりも安くなるケースがあります。また同じ仕事をしているはずなのに、買収された企業出身の社員と待遇に格差が生じるケースも多いです。

買収した企業も優秀な社員には働き続けて欲しいと考えていますが、それぞれの企業の給料体系や企業文化が全く異なる場合、統合がうまく進まず不平等な給与体系になってしまうことは多々あります。

また買収した企業の従業員を自主的に退職させるために、あえて不平等な給与体系を取るというケースもあります。

退職金の変化

一般的に会社買収が起きた際には、退職金が支払われるか、退職金制度の統合が行われます。また実施されたM&Aの種類によっては、売り手側の退職金制度が買い手側の退職金制度に統合されるケースもあります。

その結果、将来的に受け取ることができる退職金の額が少なくなってしまう場合もあります。そのためM&Aによって働いている会社が買収された場合は、必ず退職金の制度や支払われる金額がどう変化するのか確認しましょう。

まとめ

近年では中小企業経営者の高齢化後継者不足によって、M&Aの件数が増えています。

自分の働いている企業がM&Aによって買収されて、労働環境がいきなり激変するというケースも珍しくありません。

スキルや優れた実績がない場合、M&Aで会社が買収された後に退職に追い込まれる可能性もあるでしょう。そのため経営者ではなくても、個人の力をつけることの重要性は年々高まっています。

自分自身のスキルアップや市場価値を上げたいと思っているのであれば、転職でステップアップすることを検討してみましょう。

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