投資ラウンドとは?スタートアップの資金調達について解説

投資家がスタートアップ企業の事業段階をわかりやすく区別するために使用される指標「投資ラウンド」。この記事では投資ラウンドそのものの解説から、フェーズごとの事業状況などをご紹介いたします。

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目次[非表示]

  1. 投資ラウンドとは?
  2. エンジェルラウンド
  3. シード
  4. シリーズA
  5. シリーズB
  6. シリーズC
  7. 資金調達をするときに気を付けるポイント
  8. まとめ

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投資ラウンドとは?

投資ラウンドとは、投資家がスタートアップに対して投資をするフェーズのことで、スタートアップ側の目線では「資金調達ラウンド」と言います。

投資ラウンドを作成して種類分けすることにより、投資家はスタートアップの状況を的確に把握できるため、スムーズに投資できます。

なお、投資ラウンドという言葉は、アメリカのシリコンバレーが発祥ですが、日本でも起業意識が高まるにつれて使用されるようになりました。

投資ラウンドの種類とは?

投資ラウンドの種類は、次の6つに分けられます。

フェーズの名称
フェーズの段階
エンジェルラウンド
プロダクトが形になっていないアイデアだけの段階
シード
ビジネスモデルの大枠が決まった段階
シードA
ビジネスがスタートした直後の段階
シードB
製品が評価され、ビジネスが軌道に乗った直後の段階
シードC
経営が黒字化して安定化し始めた段階
シードD以降
収益が安定している段階

各ラウンドの詳細については、以下で解説していきます。

エンジェルラウンド

エンジェルラウンドとは、まだプロダクトが形になっていないアイデアだけのフェーズです。

調達資金状況は?

エンジェルラウンドでは、ビジネスを開始していないため多額の資金調達を行いません。具体的な金額としては数百万円〜数千万円ほどです。

エンジェルラウンドで調達した資金は主に、プロダクト開発に必要な人材の確保や、開発費などに充てられます。

事業のフェーズは?

プロダクトすらもなく、アイデアのみのフェーズであるため、顧客や従業員を抱えていないケースが多いです。

投資してくれる人はどんな人?

エンジェルラウンドに投資するのはインキュベーターエンジェル投資家などです。インキュベーターとは、設立したばかりの企業に対してインキュベーション(起業やビジネスの創出をサポートするサービス)を実施している組織を指します。インキュベーターは、資金面だけでなく、事業の成長に必要なオフィスやソフトといった経営資源の提供も行います。

一方のエンジェル投資家とは、創業して間もない企業に資金投資を行う個人の投資家です。エンジェル投資家には、投資の見返りとして株式転換社債などを提供します。

シード

シードとは、ビジネスモデルの大枠が決まり、実際に動き出したスタートアップ全般を指すフェーズです。

調達資金状況は?

シードは、製品をローンチするための準備期間であるため、基本的には多くの資金を必要としません。

とはいえ、シード期は会社設立や市場調査にかかる費用に加え、人件費なども必要になってきます。そのため、それらの費用を払うために数千万円〜数億円ほどの資金調達をする場合もあるでしょう。

事業のフェーズは?

事業のフェーズでは、ビジネスモデルの大枠が決まっている一方で、製品が完成しておらず販売方法の詳細なども決まっていないケースが多いです。

投資してくれる人はどんな人?

シード期では、エンジェル投資家シード投資家から投資を受けることが多いです。シード投資家とは、シード期をメインに支援している投資家を指します。

シード期は、日本政策金融公庫やクラウドファンディングを利用して資金調達をするケースも多いです。日本政策金融公庫が提供する新創業融資制度は、一般的な金融機関と比べて審査が通りやすく、低金利で融資を受けられます。ただ、審査に3週間〜1カ月ほどかかることもあります。

クラウドファンディングは、インターネット上で製品やサービスを公開し、不特定多数の応援者を募る形で資金を集めることです。インターネットの利点を活かし、多くの応援者を集めることができれば、一人ひとりの額は少なくても結果的に数百万〜数千万円の資金調達につながることもあります。

シリーズA

シリーズAとは、ビジネスを開始したばかりのスタートアップ全般を指します。

調達資金状況は?

シリーズAでは、開始したビジネスの売上を拡大させるために人件費や設備投資費用などといったコストが多数発生するため、数億円〜数十億円の資金調達を行うこともあります。

またシリーズAの段階ではビジネスが始動しているため、投資家からの出資に加え、国や自治体が提供している補助金や助成金などの制度を活用することも多いです。

事業のフェーズは?

シリーズAは、プロダクトが完成し、ビジネスの核となる製品を提供し始めたフェーズです。具体的な提供方法を模索する段階でもあるため、多くのコストを必要とします。

投資してくれる人はどんな人?

シリーズAでは主に、VC(ベンチャーキャピタル)CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)などから投資を受けます。

VCとは、ベンチャー企業やスタートアップなどで伸びしろがあり、成長率の高い未上場企業に出資する会社です。資金提供を受けた場合は、対価として主に株式を提供します。

一方のCVCとは、事業会社が自己資金をもとにファンド(投資家から集めて複数の資金)を形成し、未上場企業に出資する組織です。

シリーズB

シリーズBは、ビジネスが軌道に乗り始めたスタートアップを指します。

調達資金状況は?

シリーズBでは、企業とビジネスを成長させるために設備投資、各分野における優秀な人材の確保、マーケティング戦略の実施など、さまざまなコストがかかるため数十億円規模の資金調達を行います。

事業のフェーズは?

シリーズBは、イグジット(出資者や創業者が株式を売却して利益を得ること)の時期が近いため、黒字化が求められるフェーズです。ただし研究開発型のスタートアップはまだイグジットの時期ではないため、引き続き出資を募る時期となります。

投資してくれる人はどんな人?

シリーズBでは主に、VCから投資を受けます。このフェーズでは、調達すべき資金が多いため複数のVCから出資を受けるケースも多いです。

シリーズC

シリーズCでは、黒字経営が安定し始めたスタートアップ全般を指します。

調達資金状況は?

シリーズCでは、黒字経営になりビジネスも安定しているため、中には追加での資金調達をしない企業もいます。しかし、黒字化した企業であっても外部的な要因によって収益が激減するリスクがあるため、資金調達の重要度は高いです。

また、さらにビジネスを拡大したり、海外展開をしたりする場合にも追加での資金調達が求められるでしょう。したがって、シリーズCでは、リスクヘッジに対する資金と、ビジネス拡大に対する資金を合わせて数十億円ほどの資金調達を行うことが多いです。

事業のフェーズは?

シリーズCは、ビジネスが黒字化して安定した収益を得ているため、IPOを通じたイグジットを意識するフェーズです。また、企業によって適切なイグジット手段は異なるため、手段を見極める大切な時期でもあります。

投資してくれる人はどんな人?

シリーズCでは主に、VCやPEファンドなどから投資を受けることが多いです。

PEファンドとは、出資先企業の株主を半数以上取得する投資ファンドの一種です。VCと類似していますが、VCの場合は半数を超えない形で株式を取得します。よって、取得する株式の数が異なります。

資金調達をするときに気を付けるポイント

資金調達をするときに気を付けるポイントは次の通りです。

・経営権を安売りしていないか

・出資者を厳選しているか(見極めているか)

・無理のない経営計画を立てているか

以下では、各ポイントについて詳しく解説します。

経営権を安売りしていないか

基本的に、スタートアップがエンジェル投資家やシード投資家などから出資を受ける際は、株式の一部を提供します。その際、投資家に株式を渡し過ぎると実質上の経営権を握られる可能性があります。つまり、株式を付与し過ぎることは、経営権を安売りしていると言えるのです。

たとえば、各投資家から出資を募った結果、外部への株式出資比率が過半数以上になったとしましょう。この場合、定款(会社が定めた憲法のようなもの)に定めがなければ取締役を解任する権利を与えることになります。よって、最悪の場合、経営者はその立場を失うことになるため注意が必要です。

出資者を厳選しているか(見極めているか)

出資者を厳選したり、見極めたりすることも重要になります。出資者選びを間違ってしまうと企業はさまざまリスクを負うためです。

たとえば、反社会勢力や反市場勢力に該当する団体や投資家から出資を受けてしまうと、上場できなくなるリスクがあります。

また資金調達をする際、契約に設けられている事前承認条項を十分に確認せずに締結してしまうと、内容によっては経営の自由度を下げてしまうリスクもあります。

上場を見据えている企業は、目先の資金調達だけに捉われないようにすることが大切です。

無理のない経営計画を立てているか

「無理のない経営企画を立てているか」という点にも注目しておきましょう。金融機関から融資を受ける際は、返済力を見られるためです。金融機関が返済力のある企業かどうかを測る際に見るのが経営計画になります。

そのため、経営計画に無理があると金融機関は「返済してもらえない可能性がある」として融資しないケースがあります。融資は、返済を前提として利用できる制度である点に留意しておくことが大切です。

また、融資を受けた際の返済期間は、平均的に5〜10年で設定されることが多いです。長期にわたって返済を行う場合、返済金額がキャッシュフローを圧迫してしまうこともあるでしょう。最悪の場合、融資を受けたことが原因で倒産することもあるので、経営計画と返済計画は、無理のない形で設定することが大切です。

まとめ

本記事では投資ラウンドの種類と詳細」「資金調達をするときに気をつけるポイントなどを紹介しました。

自分が行きたい企業の調達状況やどういった調達手段をとっているかを調べることで、企業の状況を把握できます。また、企業が置かれた状況の中で自分のスキルが活かせるかどうかの判断もできるでしょう。

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