昇進とは?昇格との違いや昇進までのステップ|部下と上司の立場から詳しく解説

昇進や昇格は、組織の成長や個人のステップアップに欠かせないものです。本記事では、昇進や昇格の定義、そして部下と上司の両面から見た「昇進・昇格するために必要なアクション」について詳しくご紹介していきます。

昇進するために必要なスキルや組織内でのプロセス、昇進したときのお礼メールや賞賛メールの書き方まで詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

昇進と昇格の定義や違い

「昇進」と「昇格」は、それぞれ組織内の立場が上がることを意味しますが、厳密には違った意味があります。

昇進とは「課長→部長へなど役職が上がること」

昇進とは「課長から部長へ」「部長から役員に」など、役職が上がることを意味します。

一般的に昇進して役職が上がると、個人の目標達成よりも組織の成長が責務となるため、仕事の難易度は上がります。一方で、昇進に応じて大きなプロジェクトを任されることも多く、やりがいがある仕事ができるケースがほとんどです。

昇格とは「BグレードからAグレードへなど等級が上がること」

昇格とは、役職はそのままで、等級やグレードが上がることを意味します。職場によってグレードの呼称は違いますが、たとえば「BグレードからAグレードへ」など、等級や給与レンジが上がることを「昇格」と呼ぶケースがほとんどです。

ただ、昇進と昇格は同じ意味で扱われることも多いため、あまり厳密に考えなくてもいいでしょう。

昇進や昇格に必要な能力

昇進や昇格を果たすには、求められるスキルや能力を備えていることが前提となります。

昇進基準は組織によって異なりますが、昇進に求められる代表的な能力は次の7つです。

1. リーダシップ
2. コミュニケーション能力
3. 課題解決能力
4. 意思決定能力
5. 適応能力
6. 倫理観
7. 専門知識

リーダシップ

リーダーシップは、昇進においてもっとも重要な能力の一つです。

チームを統率し、目標に向かって導くスキルは、管理職や上位の役職に求められる重要な資質と言えます。リーダーシップには「ビジョンの設定」「メンバーのモチベーション管理」「目標達成のための戦略的な計画立案」などが含まれます。

コミュニケーション能力

高いコミュニケーション能力は、部下との関係構築や上司への提案、そして組織全体の調和を保つために不可欠な能力です。

コミュニケーション能力が低いまま昇進してしまうと、部下とのコミュニケーションが希薄となり、組織全体のパフォーマンス向上は難しくなるでしょう。

課題解決能力

課題解決能力も、昇進に必要な能力です。上席者には、組織を俯瞰的に捉え、個人や組織が成長するために解決すべき課題を見いだす力も求められます。

また、課題を見つけるだけではなく、上席者自身が能動的に課題を解決する「主体性」も、大切な要素です。

意思決定能力

昇進するにつれ、より重要な意思決定を迫られる機会が増えます。業務に関する意思決定はもちろん、人材配置や組織変更など、管理者は毎日のように意思決定をしなければいけません。

上席者には、物事を冷静に判断し、組織のガバナンスを意識しながらスピード感を持って意思決定する能力が求められます。

適応能力

組織や市場の変化に迅速に対応し、さまざまな状況に柔軟に適応する能力も必要です。

どのような業界でも市場環境は目まぐるしく変わり、常に不確実性の高い環境下で業務を遂行していかなくてはなりません。適応能力の高い人は、新しい課題に対しても革新的なアプローチを取ることが多いため、昇進対象者として推薦される機会が多いのも実態です。

倫理観

倫理観と正義感も、昇進に必要なポイントと言えます。

不正を許さず、正直で透明性のある行動を取ることは、上席者がもっとも重視すべき点です。組織全体のブランディング維持やガバナンスを保つうえでも、倫理観はもっとも重要な要素と言えるでしょう。

専門知識

特定の分野における深い専門知識は、昇進や昇格において大きなアドバンテージとなります。専門知識を持つことは、組織内で重要な意思決定を行う際に必要で、同僚や上司から一目置かれる存在となるために必要な要素と言えます。

昇進や昇格は、単なる地位の向上が目的ではありません。有能な人の専門知識を組織全体で活用し、かつ後進に同じ知識レベルを習得させるように育成していくのも、昇進した人の役目と言えます。

昇進や昇格において部下と上司に求められる4つのアクション

昇進や昇格を果たすには、部下と上司それぞれに必要なアクションがあります。部下は、昇進するために必要な能力を高める必要がありますし、上司は部下を昇進させるためにマネジメントスキルを磨かなくてはいけません。

昇進において、部下と上司それぞれに求められる具体的な行動は何なのか、詳しく見ていきましょう。

「目標達成」に重きを置く

昇進の過程では、部下自身の目標達成と上司のサポートが特に重要です。

定性的な部分のパフォーマンスが高くても、目に見える数字が未達だと、昇進や昇格の対象にすら上がってこないかもしれません。

部下は自分自身のキャリア目標を明確にし、その目標達成に必要なスキルや能力を身につける必要があります。一方、上司は部下の目標達成を支援するために、適切なリソースを提供したり他部署との調整をしたりする責任があります。

「積極性」を意識する

積極性も、昇進を目指す方にとっては重要な要素です。

目の前の課題に対し主体性をもって取り組めば、きっと上司の目にも留まるでしょう。また、上司は部下の積極性を評価し、常にサポートしていく必要があります。さまざまな課題を「チャンス」と捉える姿勢があれば、「組織に改革をもたらす」という期待感から、昇進の対象となれるに違いありません。

「協調性」を重視する

昇進すると「チームをまとめる」「他部署と調整する」などの業務が多くなるため、協調性が大切になってきます。

昇進するまでは個人の達成だけ考えればよかったかもしれませんが、昇進や昇格をすると組織全体の達成が責務となります。そのため、部下との適切なコミュニケーションや、他部署との調整能力が必要になってくるでしょう。

上司は、有望な部下を昇進させるために、将来のマネジメント職を想定し小さなプロジェクトを任せるなど、普段から協調性を培える場面を多く用意してあげるとよいでしょう。

「チャンスを逃さない」「機会を提供する」

昇進や昇格の機会は、常にあるとは限りません。

昇進のチャンスが来たら、必ず逃さないようにしましょう。また、上司は有望な部下が昇進できるよう、昇進機会を公平に与えることを意識する必要があります。

一般的に昇進のチャンスは年に1度で、昇進や昇格には試験が伴います。部下は昇進のチャンスがいつ来てもよいように、普段から試験対策するなど準備をしておきましょう。

上司もまた、部下が一度で昇進できるように、自分の経験や知識をもとに惜しみなくサポートする必要があります。

昇進は誰が決める?昇進・昇格が行われる仕組みやプロセス

昇進や昇格は「誰が」「どのように」決めるのか、その仕組みやプロセスについても見ていきましょう。

昇進までの流れを理解しておくことで、部下も上司も、自分が取るべき行動が見えてきます。

昇進・昇格基準の明確化と目標設定

昇進や昇格の最初のステップは、「昇進や昇格基準を明確にすること」と「昇進基準に向かって目標設定をすること」です。

たとえば、次のような昇進基準や目標があります。

  • 定量的目標……昇進対象:年間の目標達成100%以上を3年継続すること
  • 定性的目標……昇進対象:課題解決や人材育成の面で1年間に3件以上実績を残すこと

上司には、昇進基準を明確に決め、透明性をもって社内で公表することが求められます。目標が明確になった部下は、昇進を目指すために何をすべきか、具体的なプランを考えるようにしましょう。

自己申告に基づくパフォーマンスレビュー

目指すべき目標が決まったら、定期的な自己申告と、上司によるパフォーマンスレビューを行います。パフォーマンスレビューは、1年に1度ではなく、中間レビューを実施するのが理想です。中間レビューをやっておくことで、下期に向けて必要なアクションも取りやすくなります。

納得感のあるパフォーマンスレビューを実施しないと、年度末を迎えたときに「昇進できると思っていたのに推薦されない」など、部下のモチベーションダウンを招くかもしれません。

昇進候補者の推薦

パフォーマンスレビューの結果をもとに、上司は昇進や昇格の候補者を推薦していきます。

しかし、ほとんどの組織では人件費予算やポストに限りがあるため、推薦できる人数は限定されるでしょう。絶対評価ではなく相対評価で推薦人物を決めることも多いため、昇進したいなら圧倒的な実績を出す必要があります。

昇進試験とアセスメント評価、面接

昇進や昇格の対象者が決まったら、次に昇進試験や面接が行われます。

昇進試験の内容は企業によりさまざまですが、ケーススタディーなどの演習問題でランク付けをしたり、一般常識や社内知識などの試験、面接などで評価する企業がほとんどです。

昇進昇格通知

昇進や昇格の対象者が確定したら、組織内で昇進・昇格通知が行われます。

大企業などになると社内のイントラネットなどで人事情報が公開され、昇進昇格の情報が全社員に対し通知されることもあります。

フォローアップ

昇進や昇格をしたあとの上司のフォローアップも重要です。昇進したポジションにふさわしい成果が出せているかどうかを評価し、必要に応じてサポートが必要になることもあるでしょう。

具体的には昇進・昇格者を対象に「新任管理者研修」などを行い、新しいポジションでのミッションや役割、注意すべきポイントなどをレクチャーする必要があります。

昇進でありがちな問題と解決策

「昇進したくない社員が多い」「公平性が保てない」など、ありがちな諸問題と解決策についても見ていきましょう。

昇進基準が曖昧で属人的な評価になってしまう

昇進基準が明確でないと、主観的な判断や個人的な好みに基づく「好き嫌い人事」が発生するリスクがあります。ときには「実績を上げているのに推薦されない」といった不満が出てくるかもしれません。

好き嫌い人事を避けるには、一定のグレードまでは「実績に応じた自動推薦(自動エントリー)制度」を採用するのがおすすめです。

管理職など重要なポジションについては、上司の推薦も必要でしょう。しかし「一般社員のグレードを上げる」といったレベルにおいては推薦方式を採用せず、実績に応じた自動エントリー制度を導入すれば、部下のモチベーションダウンも防げます。

公平性が保てない

時短勤務の従業員などが昇進できず「公平性が保てない」といった問題も起こりがちです。

この問題に対処するには、多様性を重視した昇進ポリシーを策定し、社内で公開しておくことが必要です。すべての社員が公平な昇進機会を得られるようなポジションを用意するのも上司の役目と言えます。

上層部の社員が滞留していて昇進機会が限られる

上層部が滞留すると、昇進の機会が制限され、モチベーションの低下を招く可能性が出てきます。

この問題の解決策としては、キャリアパスの多様化を図るのがおすすめです。たとえば人事部門であれば、部門内での昇進以外にも、他部門でのキャリアビジョンを描ける道を用意しておくとよいでしょう。

従業員が新しいスキルを習得し、異なる経験を積む機会を提供することが大切なポイントです。

昇進したくない社員が多い

「仕事が増えて責任が重くなるから昇進したくない」といった考えの社員もいるでしょう。

上司は「上を目指さない=やる気がない」と捉えがちですが、実はそうではないケースもあります。部下を抱えて組織をマネジメントする以外にも、進むべきキャリアはたくさんあります。特定のスキルを極め、エキスパートになる道もあるでしょう。

自己分析により自身の強みや弱みを把握し、自分が輝けるステージがどこにあるのか、冷静に考えてみるといいかもしれません。上司も、部下の強みを引き出し、昇進以外の成長機会を与えることも大切です。

昇進させても組織のパフォーマンスが上がらない

「優秀なスタッフだったのにマネージャーとしては機能しない」などの悩みもあるでしょう。昇進が組織のパフォーマンス向上につながっていない場合、昇進した個人に対してのサポートが十分に行われていない可能性があります。

組織全体のパフォーマンスを上げるには、単に昇進させるだけではなく、昇進後のトレーニングプログラムも併せて考えておくことが重要です。

中小機構の公式サイト「ビジネスQ&A」にも、同じような悩みが寄せられています。参考になる回答もありますので、ぜひお読みください。

参考:中小機構公式サイト「ビジネスQ&A:管理職にした社員が能力を発揮できないのですが、どうしてでしょうか?」

昇進させてはいけない人を推薦してしまった

時には、不適切な候補者が昇進してしまう場合があります。

これは、評価基準の不明確さや、上司の主観だけで推薦してしまうなど、俗にいう「好き嫌い人事」が関係している可能性が高いです。

この問題を解決するには「昇進の基準の透明化」と「基準の定量化」しかないでしょう。「がんばっている」「まわりからの評価が高い」などの定性的な部分で評価してしまうと、ミスマッチが起こり、まわりからの納得感もありません。

管理や人事など定量化が難しい業務もありますが、できるだけ透明性がある評価ができるよう、数値で評価できる昇進基準を設定するのがおすすめです。

昇進したときの「おめでとうメッセージはどうする?」

昇進や昇格は、昇進した本人のキャリア形成において重要な起点となります。サポートしてくれた上司やスタッフにお礼と決意表明をするためにも、昇進のタイミングでの「挨拶メール」は欠かせません。

最後に、昇進した本人が送る「挨拶メール」、上司が送る「お祝いメール」のテンプレートもご紹介します。

昇進した本人の対応「挨拶やメールの例文」

昇進した本人は、感謝の意を示すとともに、新しい役割への意気込みを表現するメッセージを送ることが望ましいです。

【昇進した本人が送るメールのテンプレート】

件名昇進のお礼
本文〇〇部長〇〇
チームのみなさま

 このたび、〇〇部△△課のマネージャーとして拝命を受けました■■です。
このようなチャンスを頂けましたこと、〇〇部長と〇〇チームのみなさまに、改めて感謝申し上げます。
 これまでの経験を活かし、今後はチームや全社的な成長を意識しながら、さらなる貢献を目指したいと思います。

 今後とも、引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

〇〇部△△課
マネージャー:■■ ■■
連絡先:000-0000-0000
mail:***@***.****

上司の対応「おめでとうメッセージ」

上司からのメッセージは、昇進を祝福し、新しい役割での成功を期待する内容が適切です。

件名マネージャー昇進おめでとうございます
本文〇〇マネージャー

 このたびのマネージャー昇進、本当におめでとうございます。
これまでの成果や仕事に対する姿勢が評価された結果だと思います。

 新しいポジションでは、裁量も増えた分、求められる成果も高くなります。ぜひ、〇〇マネージャーの手腕を発揮して、素晴らしい実績を期待しています。

 マネージャーとしての悩みにも相談にのりますので、なにかあればいつでも連絡ください!

〇〇部
部長:■■ ■■
連絡先:000-0000-0000
mail:***@***.****

まとめ「積極的な昇進は組織の活性化と自己成長につながる」

有能な人材の積極的な昇進は、個人のキャリア成長だけでなく、組織全体の活性化にも寄与する取り組みです。

ただ、昇進基準が曖昧だったり、上司の好き嫌いで昇進を決めてしまったりすると、組織全体のモチベーションダウンにつながる可能性もあります。

昇進したいなら、中長期的なキャリアビジョンを見据え、昇進に必要なスキルや実績など必要な条件を満たすよう努力しましょう。上司は、有能な部下の強みを活かし、組織全体のパフォーマンス向上に寄与する適切な人材を昇進させることが必要です。

昇進だけがゴールではないため、新しいポジションを与えたあとの研修プログラムなども併せて考慮するとよいでしょう。

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監修者

人材育成/組織マネジメント専門ライター(KEN’S BUSINESS代表)

嶋よしかず

メーカーのエンジニア、法人営業コンサルタントを経て、大手通信企業にて600名の組織を統括。所属企業の経営戦略や人材育成に携わる。現在は大手オウンドメディアにて、組織マネジメントや人材育成などの記事執筆や監修に携わっている。