ロケットスター・荻原猛 × BNGパートナーズ・蔵元二郎|ゼロからスタートの定説を覆す。経営者への道を開き、圧倒的な成長を可能にする「サーチファンド」とは?

ソウルドアウト株式会社の創業者として知られる荻原猛氏。2023年3月末をもってソウルドアウトの取締役会長を退任した荻原氏が人生三度目の起業として立ち上げたのが、サーチファンドを柱とする「株式会社ロケットスター」です。

昨今、国内でもじわじわと注目を集めている、サーチファンドというスキーム。来る2023年11月9日(木)、BNGパートナーズでは荻原氏をお招きし、弊社代表・蔵元二郎と共に「サーチファンド」について論じるセミナーを開催します。(このたびはご好評につき満員御礼となりお申込受付を終了いたしました。)

セミナーに先立ち、荻原氏と蔵元の対談を実施。サーチファンドの仕組みや魅力はもちろん、経営者に求められる能力から経営者であることの醍醐味まで、両者の対談からサーチファンドとは何たるかに迫り、さらには“経営者の頭の中”をひも解きます。

起業のリスクと孤独を飛び越える「サーチファンド」

蔵元:対談の場ではありますが、いつも通り“荻さん”と呼ばせてください。荻さんは今年4月、サーチファンドを柱とした新会社「ロケットスター」を起業されました。荻さんが新たな事業にサーチファンドを選んだのは、なぜだったのでしょう?

荻原:率直に言えば、サーチファンドが非常に魅力的なスキームだと思ったためです。自ら起業して会社を成長させることは、簡単ではありません。これはもう、蔵元さんも嫌というくらい、ご経験になってきたことでしょう。起業は自分のやりたいことを実現できる素晴らしい取り組みである一方、起業するには何百万かの自己資本を投じる必要がありますし、報酬も抑えることが必要な場面が出てくるかも知れません。そのため金銭的なリスクも伴います。しかも、経営者は非常に孤独です。

しかし、サーチファンドは違います。「経営者になりたい」「経営者になって、自身が練り上げたビジネスモデルを実現させたい」という志ある方であれば、我々と手を組んでスタートできます。

志ある経営者候補のことを「サーチャー」と呼びますが、サーチャーはサーチファンドである僕らと一緒に魅力的な企業を探して見つけ出してその企業を買い取ります。そして、サーチャーが経営者となりその企業を動かしていく仕組みです。

経営者になりたいという志を持つ方は、けっして少なくありません。一方、起業にまつわるリスクが足かせになることも事実です。しかし、サーチファンドなら、ゼロから始める必要はありません。既存企業の経営者として走り出せるだけでなく、資本金もお給料も、僕のようなサーチファンドが担います。ビジネスの構想と経営者への志、それにマネジメントの能力さえあれば、転職のような感覚で、経営者になれるんです。

蔵元:改めてお言葉にしていただくと、サーチファンドの魅力がより整理されますね。おっしゃる通り、起業の難しさは僕もよく知るところ。つらく、孤独です。僕自身、BNGパートナーズはイチからの起業ですが、軌道に乗るまではつらかった。最初のうちはお金もなければ信用もなく、銀行の融資も断られ。

荻原:そうですよねー、心がボロボロになりますからね(苦笑)。特に僕の場合は大学卒業後、すぐに一度目の起業をして、失敗した経験があります。失敗という経験を踏まえても、起業は挑戦するだけの価値があると思います。ただ、サーチファンドというスキームなら、ゼロからの起業とは違い、孤独ではありません。

僕の考えるサーチファンドとは、サーチャーは大切な仲間。そのため僕が有している経営の知識も経験も、すべてを徹底的に教えたいし、近い距離で伝えたい。我々は「投資するから頑張って」ではなく、経営者と共に走りながら経営者の共創者でありたいと考えています。これこそ我々が経営者として事業を成長させた実績がある強みであり魅力ではないかな、と考えます。

蔵元:出資者であるサーチファンドが、メンターを兼ねるようなイメージでしょうか。これは素晴らしいことです。特に起業当初は、どうしても疑心暗鬼になってしまう。足元をすくわれるんじゃないか、と萎縮もします。すると、ビジネスもうまくいきません。しかし、優秀なメンターが側にいれば、そうした事態を回避できます。事実、成功された経営者の方々を見ていると、その背後には適切なメンターの存在がありますよね。

荻原:おっしゃる通りです。また、サーチファンドは事業です。このスキームを事業として成功させるため、僕は仲間となるサーチャーと投資先となる企業を増やしていきます。すると、サーチャー同士のネットワークが生まれ、各々が協力し合えるのではないか、と思っています。経営者とサーチファンドの関係だけでなく、ネットワークという意味でも、孤独ではないんです。

特性を重んじたバトンパスが、日本の課題を解決に導く

蔵元:起業当初の孤独を払拭できるという点はもちろん、サーチファンドは、改めて経営者を志す人たちの背中を押すスキームですね。というのも、経営者になる道は三つしかないと考えています。その三つとは、起業か、出世か、事業継承か。

そのうち、異質だと感じるのが起業です。例えるなら、起業はクラウチングスタート。クラウチングスタートは、短距離走において力が発揮されます。爆発的な瞬発力を要するといいますか、起業だけは使う筋肉が明らかに違う。それだけに、起業はうまいのに経営は下手、反対に経営はうまいのに起業は下手、という人は少なくありません。

それでも起業家が自身の事業を成功させるには、経営者にならなくてはいけない。使う筋肉が違うとなれば、これはもう大変なことです。それがサーチファンドなら、経営に長けた人間が経営者として走り出せる。先ほどの三つに当てはめると、事業継承です。

荻原:そうですね。事業継承の形をとるサーチファンドは、組織の中でマネジメントを成功させてきた方と相性がいいと考えます。サーチャーがトップに就く企業には、買収先の既存の社員さんがいらっしゃいます。すると、組織で培った経営能力もマネジメント能力も応用できる。サーチファンドなら起業家が必要とされている0→1の能力というより1→10、10→100の成長が得意な方が向いていると考えています。

蔵元:荻さんのお話に通じますが、僕はいつも、起業家、事業家、経営者という分類をするんです。起業家はしばらくすると事業家になる必要に迫られ、事業家は経営者になる必要に迫られる。ECサイトの運営に例えるならば、事業規模が大きくなるにつれ、デザインもコーディングもマーケティングも、すべてを一人で担うようなものですよ。

でもやっぱり、デザインが得意な人はデザインを極めるべきではないか。自分の得意を極めるからこそ、連続起業家という人たちが存在します。一方、経営に関しては、コンサルティング会社出身の人のほうがうまい可能性が高い。それなら起業家は起業に、事業家は事業に、経営者は経営に専念して、各々がバトンをつなぐほうが美しいと思うんです。

これは事業継承も同様に、家業の二代目、三代目が経営上手とは限らない。生かすべき個人の特性とは無関係の血縁だけによる事業継承には、不幸な事例も見られますよね。そうした不幸に陥らないためには、経営に長けた人にバトンをパスする。そうした個々の強みを生かすようなビジネスモデルこそ、SDGsの世界観じゃないですか。

荻原:蔵元さん、さすがです。本当に鋭い。僕もサーチファンドのことを説明するとき、第二走者という言葉をよく用います。誰かが起業した会社を僕が買って、経営の力のある人にバトンを渡す。もちろん、起業家を育てることも日本の課題であると思っています。世界に比して、日本には起業家が少なすぎるため増やさなければいけないと考えています。

一方、中小企業における事業継承も、日本が抱える大きな課題ですよね。せっかくの会社もバトンを引き継ぐ経営者がいなければ、つぶれてしまう。そして、中小企業の労働生産性の低さも問題です。労働生産性を高めなければ、中小企業のお給料は上がらないまま。これを何とかするには、徹底してITを取り入れるしかないと考えます。

しかし、蔵元さんのおっしゃった事業継承は、企業の新陳代謝を鈍らせてしまうケースもあるかもしれません。そうすると、新しいビジネスモデルもシステムも、なかなか導入できない状態に陥ってしまう可能性もあります。こうした課題にも、適切な人に経営のバトンを渡すサーチファンドは生きるのではないかな、と思っています

それにもう一つお伝えするなら、地方の過疎化。これにもサーチファンドが生きます。

蔵元:地方の過疎化も日本が抱える大きな課題ですね。その課題は、中小企業の事業継承とも密接に関わっています。未来ある若者が東京に出てしまい、地場産業の担い手がいない。東京一極集中に歯止めの掛からない状況にあります。

荻原:それが、意外なデータが明らかになったんです。あるデータによると、大学生に地元での就職意向を尋ねたところ、半数以上の人が「働きたい」と答えているんです。

地方に戻って働きたい。にもかかわらず、地方の過疎化は止まらない。このねじれが生じている理由は地方に魅力的な企業が少ないからだと思います。それなら、能力がある人にバトンを渡し、地方に戻りたいと考える方々が働きたい、と思える企業を増やすという方法もサーチファンドの役割ではないかと思います。

ゼロからではないからこそ、“素直さ”という重要な素質

蔵元:荻さんのお話を伺いながら考えていましたが、ちょっと言葉は悪いけど、サーチファンドは古くさい企業にこそ、力を発揮しますよね。まさに新陳代謝の部分というか、新しく来た人間が、古き悪しき慣習を断ち切る。すると、めちゃくちゃ効果が出る。自分がサーチファンドをやるなら、そうした企業から始めるかな、と。

荻原:おっしゃる通りです。もちろん、サーチファンドを事業として展開するからには、僕はあらゆる企業にあまねく注目しています。ただ、なかでも注視している領域は成熟産業です。

成熟産業の多くはなくてはならない事業であるものの、ここ何年何十年もビジネスモデルが大きく変化していません。そこに新しい経営者のアイデアによって、新たな仕組みを取り入れる。既存の企業にITやDXのエッセンスを加えて、ちょっと横にずらして勝つ。僕はこうした事例を作りたいと思っています。

蔵元:すると、サーチファンドというスキームによって経営者の立場に就く人、つまりサーチャーには、どのような能力が求められるとお考えですか? 冒頭のお話にもあったように、ビジネスの構想と経営能力、マネジメント能力は必須かと思いますが。

荻原:そうですね。どのようなビジネスの構想、アイデアを持っているかは、非常に注目するところです。同時に、これはマネジメント能力に通じる話ですが、既存企業のトップに立つからには、すでにそこで働いている方々を率いる覚悟、既存の社員さんたちを率いる覚悟を持ち、人格を磨く。これも非常に重要です。

蔵元:人格という面でいうと、素直さが大切ですよね。特にサーチファンドというスキームにおいては、荻さんのような優秀なメンターが側にいます。もしかすると最初のうちは、荻さんの経営哲学を理解できないかもしれない。「でも、やってみます」という姿勢です。そうした素直さがなければ、メンターの存在が宝の持ち腐れになりかねません。

荻原:その通りだと思います。

そもそも僕がサーチファンドを立ち上げようと考えたのは、経営者として、過去に失敗も成功も経験しているからです。大学卒業後すぐの一度目の起業は、残念ながら失敗に終わりました。しかし、そこから組織でのマネジメント経験を積み、二度目の起業は成功できました。

僕は一度目の起業に失敗した後、オプトという会社で働いていました。オプトでたくさんの経験を経て、たくさん学びました。そこから二度目の起業としてソウルドアウトという企業を立ち上げ、売上250億円、社員500人の組織に成長させられた。そして上場も果たしました。これは成功だったと言うことができると思います。

二度目の起業を成功させられたのは、一度目の失敗と、オプトの中で組織マネジメントの経験があったからこそだと思います。でも、それだけではなくオプトが資本提携をしてくれたからこそ、僕は二度目の起業ができたし、成功を手にしやすかったと思います。孤独な起業の経験だけでなく、支援のある起業も経験しているからこそ、僕にはサーチファンドの強みが深く理解できていると思います。

株を譲ってでも伝えたい、オーナー経営者こその醍醐味

蔵元:それでは、最後に聞かせてください。三度目の起業としてサーチファンドを設立された荻さんにとって、経営者であることの醍醐味とは?

荻原:自分のやりたいと思うことを実行できる。これに尽きるのではないでしょうか。こういう商品を作りたい、こういう組織を作りたい、こんな風に世の中に貢献したい。そのすべてを自分でデザインできるのが経営者であり、それに共感した従業員の方やクライアントの方がいらっしゃる。これが経営者であることの喜びです。

経営者を志す人には、この醍醐味を味わってもらいたいと考えています。サーチファンドの場合、それはいわば、雇われ経営者の立場です。でも、その人の力によって会社が成功したなら、経営者が望めば僕はすべての株を経営者に売却しようと考えています。もちろん、成功の具体的な線引きはしますが、そこをクリアしたなら、オーナー経営者になれるんです。

そうした仕組みを考えているのは、多くの人にオーナー経営者の醍醐味を味わってほしいからです。収入の面でも、オーナー経営者は桁が違います。収入の面はもちろん、オーナーになると、やれることの幅がさらに広がります。会社の株は経営者自身のものですから、より踏み込んだビジネスができる。僕は、この醍醐味をプレゼントしたい。

蔵元:経営者であること、オーナー社長であること。その醍醐味は、本当におっしゃる通りです。オーナー経営者はまさにown、会社が自分自身と一体化しているような感覚があります。僕はBNGパートナーズを立ち上げる以前、実印もキャッシュカードも持たせてもらっている副社長の立場にいました。要は、雇われ経営者です。

しかし、これが雇われ経営者からオーナー経営者になると、ガラッと変わります。僕がやっていないことでも、従業員のやったことは僕がやったこと。喜びの大きさはひとしおです。一方、すべての責任が自分にあるだけに、悲しみも苦しみも悔しさも大きい。

でも、だからこそ、生きている実感が増しましたね。ちょっとポエティックな表現ですけれど(笑)。自分が行き先を決め、乗り物を決め、従業員を率いながら目的地まで進む。オーナー経営者には、自分の人生を自分の足で歩んでいる実感があります。

荻原:そうした立場だけに、経営者になることを志しつつも、難易度の高さを感じる人もいるはずです。しかし、僕の経験からいえば、そんなに恐れることはないと思います。僕が経営していたソウルドアウトにしても、子会社のトップを務めていた人たちは、最初はみんなが未経験。経営者の経験なく、トップに就いた人ばかりでしたから。

それでも課長だったりマネージャーだったり、組織においてリーダーシップを発揮してきた人なら、経営者としての素養は十分にあります。もちろん、新たな挑戦には怖さが付き物です。でも、そこは僕が徹底的にサポートさせていただきます。

蔵元:荻さんのバックアップがあるのは、本当に心強い。11月のセミナーでも、こうしたお話ができるといいですね。セミナーへの参加に関しても、そこは怖がらず(笑)。先ほどのお話にもあったように、分からなくてもまずはやってみることが、経営者に求められる素質の一つです。ぜひ、多くの方に足をお運びいただきたいと思います。

セミナー概要

※このたびはご好評につき満員御礼となりお申込受付を終了いたしました。

日時2023年11月9日(木)18:00~19:00
開催方法オンライン(Zoomウェビナー)
定員20名程度(定員に達し次第、募集を締め切ります。ご了承くださいませ。)
受講料無料
お申込み方法下記フォームよりお申込みください。
対象者将来、経営者になりたいと考えている方
主催者株式会社ロケットスター 代表取締役社長 荻原猛
株式会社BNGパートナーズ 代表取締役 蔵元 二郎