ワークエンゲージメントとは?定義や測定方法について解説

ワークエンゲージメントは、従業員の仕事に対する心理状態を測る指標です。ワークエンゲージメントが高い従業員が多ければ、生産性や顧客満足度の向上といった効果があり、職場環境向上のひとつの指標として注目されています。この記事では、ワークエンゲージメントの定義や測定方法、高めるためのポイントについて解説します。

目次[非表示]

  1. ワークエンゲージメントとは
  2. ワークエンゲージメントが注目されている背景
  3. ワークエンゲージメントを高めるメリット
  4. ワークエンゲージメントの尺度と測定方法とは?
  5. ワークエンゲージメントの得点は国民性によって異なる
  6. ワークエンゲージメントを高めるためのポイント
  7. まとめ
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ワークエンゲージメントとは

ワークエンゲージメントとは、従業員の仕事に対するポジティブで充実した心理状態を測る指標です。

オランダのユトレヒト大学教授「シャウフェリ」氏は、ワークエンゲージメントを「ワークエンゲージメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。エンゲージメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である」と定義しています。

ワークエンゲージメントの3つの要素

ワークエンゲージメントは「活力・熱意・没頭」の3つの要素で構成されています。

引用:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析

活力

活力は、仕事に対してポジティブで活力がみなぎっている状態を指します。活力が高ければ、エネルギーや心理的な回復力が高く、困難な課題に対しても粘り強く取り組めます。

熱意

熱意は、仕事に対してやりがいや誇りを持っている状態を指します。熱意が高ければ、仕事に対する関心や探究心が高いため、業務改善や新サービスの開発に積極的に取り組めます。

没頭

没頭は、仕事に対して夢中になり、幸福感や時間が早く進む感覚を持っている状態を指します。没頭している状態が続けば、業務の品質や作業スピードの向上につながります。

ワークエンゲージメントと関連する4つの概念

ワークエンゲージメントと関連する用語に、以下の3つが挙げられます。

・ワーカホリズム(ワーカホリック)

・職務満足感(リラックス)

・バーンアウト(燃え尽き症候群)

ワークエンゲージメントを含めた4つの概念を、活動水準と仕事への態度や認知の高さで整理すると、以下のような関係性になります。

引用:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析

ワーカホリズム(ワーカホリック)

ワーカホリズムは、仕事に対し過度に一生懸命になっているものの、仕事に対してネガティブな感覚を持っている状態を指します。活動水準は高いものの、仕事への態度や認知は低くなります。

バーンアウト

バーンアウトは、仕事に対してエネルギーを費やした結果、意欲や関心を失った状態を指します。活動水準と仕事への態度や認知のどちらも低い状態のため、ワークエンゲージメントとは対極の状態といえます。

職務満足感(リラックス)

職務満足感は、仕事に対してポジティブな感情を持っているものの、意欲は低い状態を指します。ワークエンゲージメントと比べると、活動水準が低い点が異なります。

ワークエンゲージメントと似た用語との違い

ワークエンゲージメントと似た用語に、従業員満足度(ES)や従業員エンゲージメントがあります。従業員満足度は、従業員が業務内容や職場環境、人間関係に満足している状態を示す指標です。会社に対する心理状態を測る指標であるため、仕事に対する心理状態を測るワークエンゲージメントとは、測る対象が異なります。

従業員エンゲージメントは、会社に対する帰属意識や貢献したい気持ちを測る指標です。仕事に対する心理状態を測るワークエンゲージメントと比べ、測る対象の広さが異なります。

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ワークエンゲージメントが注目されている背景

ワークエンゲージメントは、2019年に厚生労働省が発表した「令和元年版労働経済の分析」(「労働経済白書」)で特集されたことにより注目を集めました。特集された背景には、労働人口の減少と人材の流動化、人的資本価値の高まりが挙げられます。

少子高齢化による労働人口減少の影響により、多くの企業では人材不足が課題となっています。働き方改革により、人材不足解消の施策として副業の解禁を推奨されていることもあり、ひとつの企業に執着しない働き方をする人がでてきました。終身雇用の崩壊とともに転職市場も活性化し、優秀な人材がひとつの企業に長く留まり続けるケースも少なくなっています。

また、ITやAI技術の進歩により、技術面で競合との差別化を図ることが困難な時代になってきました。そのため、情報を活用しイノベーションを起こせる「人材」こそ、企業の資産であるという考えが広まっています。

企業の未来を担う「人材」を大切にするため、仕事に対する心理状態を示すワークエンゲージメントが注目されはじめたのです。

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ワークエンゲージメントを高めるメリット

ワークエンゲージメントを高めるメリットには、以下の5つが挙げられます。

・生産性の向上

・顧客満足度の向上

・離職率の低下

・メンタルヘルス対策

・コミットメントの向上

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

生産性の向上

ワークエンゲージメントを高めるメリットとして、生産性の向上が挙げられます。ワークエンゲージメントを高めれば、従業員のパフォーマンスを引き出せます。仕事に対するモチベーションも高いため、新たな知識を得たり技術を習得したりといった行動をするようにもなるでしょう。

厚生労働省の労働経済の分析(令和元年版)によると、労働生産性が向上していると感じている従業員は、ワークエンゲージメントも高いことが明らかになりました。

顧客満足度の向上

ワークエンゲージメントを高めれば、顧客満足度の向上につながります。顧客にとって、ワークエンゲージメントが高い従業員がやりがいや自信を持って働く姿は、顧客に安心感を与えます。

厚生労働省の労働経済の分析(令和元年版)によると、従業員のワークエンゲージメントが高い企業は、顧客満足度が上昇していると感じていることが明らかになりました。ワークエンゲージメントの高い従業員は、間接的に顧客満足度を高めることになるのです。

離職率の低下

ワークエンゲージメントを高めれば、離職率の低下にもつながります。ワークエンゲージメントが高い従業員は、仕事に対してポジティブで充実した状態のため、長く勤務したいという気持ちが生まれ、離職の意思が低下します。

厚生労働省の労働経済の分析(令和元年版)によると、ワークエンゲージメントが高い企業は新入社員の定着率が高いことが明らかになりました。

メンタルヘルス対策

ワークエンゲージメントを高めれば、メンタルヘルス対策にもなります。ワークエンゲージメントが高い従業員は、業務においてストレスを感じにくいことが明らかになっています。

ワークエンゲージメントの向上は、従業員のストレスを予防することになるのです。ストレスを予防できれば、メンタルヘルスの問題に対する根本的な対策にもなります。

コミットメントの向上

ワークエンゲージメントを高めれば、コミットメントも向上します。仕事だけではなく、同僚や会社に対してもポジティブな感情を持ちます。同僚や会社に対しポジティブな感情を持てば、職務に対する貢献意欲も高まるでしょう。

労働経済の分析(令和元年版)でも、ワークエンゲージメントが高い従業員は、仕事に対する自発性が高いことが明らかになっています。

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ワークエンゲージメントの尺度と測定方法とは?

ワークエンゲージメントの代表的な測定方法は以下の3つです。

・UWES(Utrecht Work Engagement Scales)

・MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)

・OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)

ここでは、それぞれの測定方法について解説します。

UWES(Utrecht Work Engagement Scales)

UWESは、ワークエンゲージメントの測定方法として、広く使用されている方法です。「活力・没頭・熱意」の3つの尺度を17の質問により測定します。UWESには日本版UWES、短縮版UWESがあり、手軽に使用できることが特徴です。

MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)

MBI-GSは、ワークエンゲージメントの対極となるバーンアウトを測定することにより、逆説的にワークエンゲージメントを測定する方法です。「疲労感・シニシズム・職務効力感」に関する16項目の質問から測定します。結果が低ければ、ワークエンゲージメントが高いと評価します。

OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)

OLBIも、MBI-GSと同様に、バーンアウトを測定することにより、ワークエンゲージメントを測定する方法です。「疲弊・離脱」というネガティブな質問により測定します。MBI-GSと同様に、結果が低ければワークエンゲージメントが高いと評価します。

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ワークエンゲージメントの得点は国民性によって異なる

ワークエンゲージメントの結果は、国民性によって左右されることが明らかになっています。特に日本人は、海外と比べてワークエンゲージメントの結果が低くなることがわかっています。

その理由として挙げられるのは、日本人の「自己批判バイアス」が強いことです。また、日本人は、周囲に期待されているとおりに行動する「相互協調的自己」を持っています。そのため、周囲に対し自分の感情を主張しすぎないようにする力が働いています。

ワークエンゲージメントを測定する際は、このような国民性を考慮する必要があるのです。

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ワークエンゲージメントを高めるためのポイント

ワークエンゲージメントを高めるためのポイントには、以下の4つが挙げられます。

・個人の資源を充実させる

・仕事の資源を充実させる

・資源確保のためのツールを導入する

・従業員のパーソナリティを受け入れる

「個人の資源」と「仕事の資源」は密接に関係しており、仕事の資源が大きくなれば個人の資源も大きくなることが明らかになっています。ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

個人の資源を充実させる

ワークエンゲージメントにおける個人の資源とは、ストレスを軽減しモチベーションを上げるための内的要因を指します。具体的には、自己効力感や自尊心、ポジティブ思考が挙げられます。

個人の資源を充実させるためには、従業員が主体的に仕事を捉えるように促すことが重要です。たとえば、仕事の権限を委譲したり、希望する部署に配置したりといったことが挙げられます。

仕事の資源を充実させる

ワークエンゲージメントにおける仕事の資源とは、仕事に対するモチベーションを高める要因を指します。具体的には、業務効率化による負荷軽減や上司のサポート、裁量権の付与が挙げられます。

仕事の資源を充実させるためには、組織としてのパフォーマンスを引き出す「チームビルディング」に取り組むことが重要です。

資源確保のためのツールを導入する

ワークエンゲージメントを高めるためには、ツールの活用も有効です。エンゲージメントを測定できるツールを導入すれば、測定を効率的に実施できるだけではなく、収集したデータから課題を見つけ施策を考えることもできます。

コミュニケーションツールを導入すれば、従業員同士のコミュニケーションの機会が増え、ワークエンゲージメント向上につながります。

従業員のパーソナリティを受け入れる

ワークエンゲージメントを高めるためには、従業員のパーソナリティを受け入れることも大切です。ワークエンゲージメントは、本人の考え方や価値観に左右されます。

どんなに周りからアプローチしても、本人が変わろうとしなければ効果はでません。そのため、会社側は従業員の性格や行動パターンを把握し、考え方や価値観を見極めておく必要があります。

また、組織において、ポジティブな思考だけが良い影響を与えるわけではありません。不満や心配といったネガティブな思考から、新しいサービスの発想が生まれるケースもあります。従業員のネガティブ思考を受け入れ、それを活かすようなアプローチをすることが大切です。

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まとめ

ワークエンゲージメントとは、従業員の仕事に対するポジティブで充実した心理状態を測る指標です。ワークエンゲージメントは「熱意・没頭・活力」の3つの要素で構成されています。

ワークエンゲージメントを高めれば、生産性や顧客満足度の向上、離職率の低下などの効果が期待できます。従業員の質を高めるためにも、ワークエンゲージメントの向上に取り組んでいきたいものです。

責任や権限のある立場で、ワークエンゲージメントを高める施策を実行したいと考えている方は、成長フェーズであるベンチャー、スタートアップ企業への転職も検討してみてはいかがでしょうか。

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