HRTech（HumanResourcesTechnology）とは、従来の人材管理システムに、AIやSNS、アナリティクスなどの先進的な技術を組み込み、人事の業務を劇的に効率化できる可能性を秘めた技術のことです。本記事では、HRテックを導入するメリットや導入時の注意点について解説します。

HRテックとは？

まずはHRテックとはどのようなものなのか、定義や範囲について見ていきましょう。

HRテックの定義

HRテックとは「HR（HumanResource：人事）」とテクノロジーを合体させた新造語です。

主に企業の人的資源に関する調査・管理・分析をより高度化して、事業のパフォーマンスを高めるテクノロジーのことを指しています。

HRテックの明確な定義はなく、基本的に企業における人事や関連分野のテクノロジー全体が、HRテックとして呼ばれています。

HRテックの範囲

HRテックの主な範囲は以下のとおりです。

またこの他にも、企業に所属している従業員の健康を管理するツールやワークログのデータ収集、バイタルサインの測定などもHRテックの範囲に含まれる場合があります。

代表的なHRテックの種類

代表的なHRテックの種類として、次の3つが挙げられます。

それぞれの分野で、HRテックがどのように活用されているのか詳しく解説していきます。

採用管理システム

HRテックサービスの代表的なものとして、採用管理システムがあります。
採用管理システムとは、企業の採用における必要な業務やコミュニケーションなど、まとめて管理することのできるものです。

企業は採用管理システムを導入することによって、応募者とのコミュニケーションから管理、面接の日程調整、求人媒体への出稿と応募状況の確認、内定者へのフォローなど多岐にわたる業務を効率化することができます。

また人事担当者の間での連携や社内面接担当者との調整など、事業内部の採用に関わる業務の効率化や質の向上にも役立ちます。

労務・勤怠管理システム

労務・勤怠管理システムとは、労働時間の管理やそれに付随する給与の計算、出社・退社に関わるシステムのことを指します。
勤怠管理システムを導入することによって、労働時間を効率的に管理したり、有給休暇の取得状況を常に正確に把握したりなど、法律に基づいて企業運営がされているか簡単に管理することが可能です。

またシステムによっては、PC・スマートフォンから従業員が出社・退社時間を入力できたり、ICカード連携やPCの起動時間で正確な労働時間を把握したりすることもできます。

労務関連や勤怠管理、その他税務面に関する手続きなどは、それぞれの関連性が高いので、他のシステムと一体化もしくは連携されており、より簡単に利用できるシステムが主流です。

人材管理システム

人材管理システムとは、人事評価や人事異動、組織開発などにおける人事評価やマネジメントツールが利用できるシステムのことです。
従業員のプロフィールやこれまでの経験、資格や人事評価などを簡単に管理することができます。

システムによっては、人事評価やマネジメントにおけるフレームワークが搭載されており、管理職の人がより簡単に人材育成や能力開発ができるようになっているものもあります。

HRテックが急速に普及し始めた理由

日本では、2018年ごろからHRテックに関連するシステムやサービスが急速に普及し始めました。

HRテックが、日本において急速に普及し始めた主な理由は以下の3つです。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

IT技術の発展

HRテックが急速に普及し始めた最大の理由は、IT技術が発展したためです。特にAIなどの発達によって、大量のビッグデータを収集・解析・活用できるようになり、誰もがビジネスにおいてデータを簡単に分析できるようになったことが影響しています。

企業の人事戦略が重要視されるようになったから

近年では、時代の激しい変化に柔軟に対応できる企業運営というのが重要になっています。

特に日本においては、働き方改革の推進や新型コロナウイルス感染拡大への対応、ジョブ型雇用制度の導入などが活発的に行われており、こういった時代の激しい変化に対して企業の人事部門が対応するためには、常に高度な人事戦略に基づいて業務を進めていく必要があります。
HRテックは、高度な人事戦略を可能とするデータ分析がより簡単になるので、現在では多くの企業が取り入れ始めており必須のインフラになりつつあるのです。

働き方の急激な変化が起きたから

新型コロナウイルス感染拡大によって、日本でも急速にテレワークが発達しました。

多くの従業員が外部から社内システムにログインすることも当たり前になりつつあるので、企業もテレワークを前提とした労働環境を整える必要があります。

HRテックは、外部からアクセスするのが簡単な「クラウド型サービス」を採用しているものが多いです。そのため、テレワークなどの働き方の変化に対して柔軟に対応できるように、HRテック関連のサービスやシステムを導入する企業も増えています。

HRテックを企業が導入するメリット

HRテックを企業が導入した場合、次のようなメリットがあります。

それぞれのメリットについて以下で詳しく解説していきます。

人事に関連した業務が効率化できる

人事に関連した業務は細分化されており、求職者との面接の日程調整や履歴書などの個人情報に関するデータの管理、面接や面談における評価、内定後の連絡など多岐にわたります。

HRテックシステムを導入することによって、業務が一元的に集約され、データの管理から面接における評価まで効率化することができます。

また求職者とのやり取りもシステム内で行えることが多いので、採用活動における業務を大幅に効率化することが可能です。

採用活動がこれまでよりも効率的かつ最適に行えるようになれば、企業がよりよい人材を確保しやすくなるでしょう。

採用活動においてミスマッチを防げる

HRテックシステムを導入すれば、採用活動において企業と求職者とのミスマッチを防げるようにもなります。

あるシステムでは、求職者に対して適性検査を行いその結果をAIが診断・分析することによって、企業と求職者がどれくらいマッチしているのかチェックすることが可能です。

採用の初期段階からシステムを使用してマッチ度をチェックすれば、ミスマッチが減少し、内定承諾率を上げることも可能でしょう。

客観的データをもとに企業運営ができる

HRテックの中には、社員の能力や特性を分析して可視化できるシステムもあります。
それぞれの社員がどのようなスキルや能力を有しているのか客観的に把握できれば、適切な人事評価や人材配置を実現することが可能です。

また企業の人材や組織に関する情報が一元化されるので適材適所に人材配置を行えるようにもなります。

離職率を減らせる

HRテックを導入すれば、従業員の健康管理から日々のコンディションなども細かくチェックすることが可能です。
生産性やコンディションが落ちている従業員を早い段階で発見できるので、管理職の人が悩みの早期解決に向けて動くことができます。

企業がHRテックを導入する場合の流れ

企業がHRテックを導入する場合の流れは以下のとおりです。

自社には適さないシステムを導入して失敗することを防ぐためにも、しっかりと準備をして導入を進めていきましょう。

導入前に導入目的を明確にする

まずは、なぜHRテックを導入したいのか、導入する目的を明確にしましょう。

自社が抱えている解決したい問題やシステムを導入することで実現したいことを明確にして、システムを導入したあとに社員がどのように行動すべきなのかしっかりと決めておくことが重要です。

HRテックで代替可能な業務を洗い出す

HRテックを導入する目的を明確にしたら、次にシステムによって代替可能な業務を洗い出しましょう。

現在どのような業務があるのかはっきりさせて、その中からシステムで代替可能なものはあるのか一つずつ確認するのがおすすめです。

代替可能な業務に適したシステムを探す

代替可能な業務を洗い出したら、次に最適なソリューションが何か検討してみましょう。

採用関連の業務を効率化したいのであれば採用関連のHRテックを、エンゲージメント関連であればそれに適したシステムを検討してください。

システムを決める際には、いくつか比較検討してトライアルを実施することで、導入後にミスマッチが生じることを防げます。

HRテック導入プロジェクトを立ち上げる

導入するシステムの選定が完了したら、社内でHRテック導入プロジェクトを立ち上げましょう。
導入してからシステムをうまく使いこなせないという事態に陥ってしまうことを防ぐためにも、ITシステムや業務に慣れた担当者を置くことが重要です。

またどのような業務をシステムでどのように代替するのか、あらかじめ細かく決めておくことによって、システム導入後の混乱を防ぐことができます。

HRテックを導入する際の注意点

HRテックを初めて導入する場合、次の3つのポイントに注意しましょう。

それぞれの注意点について、以下で詳しく解説していきます。

機械的な人事評価になりすぎないようにする

確かにHRテックは人事評価においてかなり役立つシステムですが、人間はAIやロボットではありません。

個人の成長意欲やチームワーク、コミュニケーション能力など数値化することが難しい人事評価のポイントも数多くあります。

システムで表示される数字や売上だけで人事評価をしてしまうと、社員に不満や不信感を与えてしまう可能性があるので注意が必要です。

人事評価を行うにあたっては、システムで表示された数字や売上などはもちろんのこと、上司と部下でうまくコミュニケーションを取りながら評価に対するフィードバックをしっかりと行うことも重要となります。

AIの情報リソースに注意する

HRテックによる人事評価や採用面接は、AIが「どのような情報リソースで学習をするのか」が重要なポイントとなります。

これまでの採用データや現在働いている人たちのデータだけを人事評価の基準や採用基準にしてしまうと、人材が画一化してしまい多様性が失われてしまう可能性もあるので注意が必要です。

AIを絶対視せず、情報リソースとなるアルゴリズムやデータについても気を配って運用しましょう。

個人情報が漏洩しないようにする

HRテックを導入する場合、個人情報が漏洩しないように十分に注意して管理する必要があります。

定期的にセキュリティ対策は万全か確認して、HRテックを扱っている事業者との個人情報に関する取り扱いの契約内容(再委託の可否・事故発生時の対応・契約終了時におけるデータの取り扱いなど)なども慎重に吟味することが必要です。

まとめ

HRテックは、多くの企業の人事・労務に関する問題を解決しており、企業運営において必要不可欠のシステムになりつつあります。
HRテックを活用しながら今後のビジネスシーンにおいて重要なスキルを習得し成長したいのであれば、すでにシステムを導入している企業に転職するのもおすすめです。

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