使用者責任とは?制度の基本情報から事例やリスクヘッジ方法をご紹介

従業員が第三者に損害を発生させた場合に、会社も連帯して第三者へ損害賠償の責任を負う使用者責任をご存じですか?この記事では、使用者責任という法制度の概要から、実際に発生することのあるケース、発生を抑制するためのリスクヘッジ方法などをご紹介します。

目次[非表示]

  1. そもそも使用者責任とは?
  2. 使用者責任が成立する要件
  3. 使用者責任が発生する具体的な事例
  4. 使用者責任のリスクヘッジ方法
  5. まとめ
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そもそも使用者責任とは?

使用者責任とは、従業員が業務上の不法行為によって第三者に損害を与えた場合に、会社が従業員とともに被害者に対する損害賠償責任を負うことです。

使用者責任の根拠条文として、民法第709条第715条第1項および第2項が挙げられます。

第五章 不法行為(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

民法第709条では、不法行為により他人に損害を与えたとき、損害賠償責任が発生することが示されています。加えて、民法第715条からは、この損害賠償責任が使用者にも発生することが読み取れます。

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使用者責任が成立する要件

具体的に、どのような要件がそろったときに使用者責任が発生するのか、ケーススタディを見ていきましょう。

事業のために人を使用している

一つ目の要件は、事業と従業員の間に使用関係があることです。端的に言えば、無期・有期問わず、当該従業員を直接雇用をしている状態を指します。

業務委託契約(請負契約)を結んでいる場合でも、会社が当該人に業務の指揮命令を行っていれば、使用関係が認められると考えます。

なお、ここでの使用関係とは、「使用者」と「被用者」の関係を指します。

職務上の不法行為である

二つ目の要件は、不法行為が事業の執行において発生したことです。「事業の執行において」とは、必ずしも労働時間内に行った行為だけではありません。場合によっては、会社の飲み会や通勤時間なども含めて考えます。

従業員の行為が不法行為に該当する

三つ目の要件は、従業員の行為が不法行為であることです。不法行為の定義は、民法第709条第710条で次のように示されています。

第五章 不法行為

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

つまり、従業員が身体的・財産的な損害や、精神的な損害である不法行為を行ったときに使用者責任が発生すると解釈します。

使用者の免責事項にあてはまらない

四つ目の要件は、使用者の免責事由に当該行為があてはまらないことです。先にご紹介した、民法第715条の但し書きに、「使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない」と記載があります。

つまり、使用者が何らかの対処をしており、落ち度がないと判断されれば使用者責任は発生しません。

しかしながら、現実には免責事由が認められた事例がほぼない点をおさえておきましょう。

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使用者責任が発生する具体的な事例

続いて、使用者責任が発生する具体的な事例をご紹介します。

社用車を使用中の交通事故

従業員が社用車を利用している際に交通事故に遭い、第三者に被害や損害を与えてしまうケースは、使用者責任を負う代表的な事例です。営業車や運行用の車両などの事故だけでなく、マイカー通勤での事故の場合にも、使用者責任が発生する可能性があります。

詐欺や横領

従業員が会社名や役職を利用して第三者に詐欺を働いたり、会社のものを横領したときにも使用者責任が発生する可能性があります。

個人情報の漏洩

従業員が会社で扱う個人情報を漏えいした際も、使用者責任が発生する可能性があります。個人情報漏えいにより、実際の被害が起きていなくても「漏えいした」事実に対して使用者責任が発生することがあります。

いじめ、セクハラ、パワハラ

上司や同僚などによるいじめやパワハラ、セクハラが執拗に繰り返され、従業員が自殺してしまった事例で、過去に何度も使用者責任が認められています。

事例

水道局工業用水課に勤務していた男性が、同課の課長や係長から嫌がらせを受け、脅すような発言を繰り返し、いじめによって男性が自殺。この場合、企業は使用者責任(労働法で言う安全配慮義務違反)を問われ、国家賠償法上の責任を負うことになりました。

参考:厚生労働省『職場のいじめ・嫌がらせに関連すると考えられる裁判例(一例)

従業員同士のトラブル

従業員同士の個人トラブルであっても、事業の執行がきっかけとなるものや、社内で起きたトラブルには使用者責任が発生する場合があります。

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使用者責任のリスクヘッジ方法

最後に使用者責任を未然に防ぐ方法を3つ、ご紹介します。以下の対策を講じれば、全ての使用者責任を免れるわけではありませんが、リスクヘッジの1つとして取り入れてみてください。

就業規則を整備する

1つ目に取り組むべきことは、就業規則や社内ルールの整備です。特に、社用車や会社の備品など、会社の所有物の利用方法は必ず定めておきましょう。社用車での事故は使用者責任を問われる可能性が高く、また、マイカー通勤であっても一定条件下では使用者責任を問われます。
まずは会社の方針を就業規則などの根拠条文で明確に示すことが重要です。

従業員教育を徹底する

2つ目にやるべきことは、整備したルールを従業員に共有、浸透させることです。就業規則を作っただけで、全てのルールが従業員に行き渡るとは考えにくいです。

従業員がどのような事故、トラブルに巻き込まれる可能性があるのか、トラブルによって生じる賠償責任の大きさや、使用者責任について、事例を用いながら説明と理解を促すことが大切です。

損害保険に加入する

3つ目に行うべき対策としては、損害保険に加入することです。使用者責任をカバーする保険として、業務災害総合保険使用者賠償責任保険などがあります。

保険の種類によってカバーできる範囲が異なるので、第三者に対する損害賠償の保証がついているか確認してから加入をしましょう。

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まとめ

使用者責任とは、従業員が他人に損害を与えた場合に、会社が従業員とともに被害者に対して負う損害賠償責任のことです。使用者責任が発生するいじめやハラスメントなどは、事前に会社が対策をしていても100%防ぐことは難しいです。
想定外の事故に備えて保険加入を検討したり、就業規則をはじめとする社内ルールの整備、従業員教育などに取り組んで、地道にリスクヘッジしていく必要があるでしょう。

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