【CxO塾レポート】
CxO塾!とは?
BNGパートナーズでは、「CxO塾!」でベンチャー企業のCxOにご登壇いただき、自社のアップデートに役立つ情報をお届けしています。
BNGパートナーズが開催する「 CxO塾!」。
今回のテーマは「IPOに備えた攻めと守りの組織のリアル」でした。
IPOを経験されたクラウドワークス 取締役副社長COO 成田修造氏、株式会社LITALICO CFO坂本祥二氏に登壇いただき、上場前に起こること、リーダーと組織論、そしてIPOの最新事情についてお話を伺いました。
本記事ではディスカッションの模様をお届けします。
(撮影・取材・文:安住久美子)
【登壇者プロフィール】
株式会社クラウドワークス
取締役副社長 COO 成田 修造氏
大学在学中からアスタミューゼ株式会社に参画。株式会社アトコレを設立、代表取締役社長に就任。2012年5月よりクラウドワークス社に入社、新卒ながら執行役員に就任。2014年8月に取締役、2015年4月よりクラウドワークス取締役副社長に就任。同社は2014年12月に東証マザーズ上場。組織規模は上場時で29名、現在は350名。子会社含めると5社のグループ企業となっている。
株式会社LITALICO
取締役 CFO坂本 祥二氏
新卒でモルガン・スタンレーに入社し、M&AやIPOなどのアドバイザリー業務に従事。2015年3月にLITALICOに入社し、同年10月にCFO就任。2016年3月東証マザーズ上場、2017年3月東証一部市場に変更完了までは、コーポレートサイドのコーポレート全体の取締役として経営企画や人事、財務従などに従事。上場後は、新規事業立案、立ち上げ、事業拡大に注力。株式会社LITALICO取締役CFO兼株式会社LITALICOライフ代表取締役社長。
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目次
## 上場前に起こること「大切なのはストーリー」
## 上場における最大の壁は何だったのか?
## 強い組織づくりには意図的な揺さぶりが必要
## リーダーのもっとも大切な仕事とは
## 採用が強い会社は何を実践しているのか
## これからIPOを目指す企業に向けて
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## 上場前に起こること「大切なのはストーリー」
クラウドワークス本社で開催されたイベントには、各企業の取締役など30名以上が集まった。上場を直近で視野にいれている企業もあり、熱心にメモをとる姿が見られた。
BNG岡本:まず、事前に質問をいただいた中で一番多かったのが、上場前に何が起きるのかということです。会社の雰囲気はどうだったか、失敗談などがあれば教えてください。
坂本氏:上場1~2年前くらいの時期にやってみて付加価値が高かったと思うのは、IPOの物語化でしたね。どういうストーリーでIPOというものを捉えるのか。IPOの目的や戦略に対する解釈をいかに統一するか、ということです。特に役員や部長陣などに「こういうストーリーだよ」と、共通の解釈で理解してもらうようにしました。
成田氏:クラウドワークスの場合は、創業期に上場のタイミングを2016年末とイメージしていたんですが、結果的に上場は早まり、2014年12月に目標を置き直しました。
ちょうどその時期はサービスの手数料無料化キャンペーンというのをやっていて、売上がほぼゼロという状況。非常にドタバタで未成熟な中で、上場に向け逆算して事業計画を変えていったことを覚えています。
今思えば、スケジュールを早めたことは良い面もありました。緊張感もあり、自分たちがマーケットシェアをいかにとっていくかということでいえば、成長速度を最速にできたと思います。
ただ、坂本さんもおっしゃった通り、エクイティストーリーとか、なぜ上場するのかについて、しっかりと議論をされていたかというと、反省点も多かったかなと思っています。
IPOはゴールではなくて、サスティナビリティのスタートラインですよね。会社が継続的に社会の公器になっていくための入り口であると考えたときに、そのあとの成長戦略とIRストーリーがなければなりません。
そしてそれを実現するための大きな資金調達があり、上場市場だからこそできる勝負をする。それができないと上場市場にいる意味がないですよね。そこが、当時の僕らの経営観ではそこまで深い議論ができていなかったかもしれません。
特に2014年以降というのは未上場のマーケットがちょうど変化するタイミングで、我々が10億円調達して以降、ラクスルさん、freeeさん、マネーフォワードさん、コイニーさんなど、が数十億単位で調達をする企業が続々と出てきました。その中で、どのタイミングでIPOすべきか、どの時価総額でIPOすべきか、それはなぜか。それが長期的なIRストーリーにどう効くのか、というジャッジは非常に難易度が高かったです。
IPOを目標に置くことには異論はないんですが、一方でそのあとの戦略をどのように描くのか。IR、財務、事業の全部をセットで議論したり、洗練された考え方が経営陣にないと、IPOがゴールになっただけで終わってしまうのかなという感覚はあります。
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## 上場における最大の壁は何だったのか?
BNG岡本:上場に向けて準備する中で、一番のHARD THINGSは何だったのでしょうか。急拡大する中で、組織の課題も出てくると思いますので、そこも含めて教えてください。
坂本氏:IPOって創業期には「夢」みたいに語られることが多く、みんなそれぞれ違ったイメージを持っている。IPOについて言語化する機会が、ほとんどない。
それぞれがIPOに期待することが違うということに気づいたのは、上場が近付いてからでした。サスティナブルな期待値を作っていくよりもバリュエーション(valuation:企業価値評価)を最大化したいとか、こういう成長計画を見せたほうがいいんじゃないかとか、いろいろな考えを持つ人がいます。
それを置いたままでも上場はできたと思いますが、上場後に辻褄が合わなくなり瓦解(がかい)するおそれがあります。そこでIPOに対する価値観を統一しにかかりました。
すべてが有機的に繋がるストーリーにする。資本政策はこれ、こういう上場だからバリュエーションはこれくらい、ポジショニングはここまでしか言わない、戦略はここまで言ってこれは言わないとか。以上をひとつの物語にして社長や経営陣とコミュニケーションをとりました。
上場はみんなの夢にもなりがちなので、整理して対話するということが必要でした。
成田氏:僕らの場合は、IPO自体もそうなんですが、IPO後のほうがすごく難しかったですね。
上場後は、対外的に開示してる売上に対して10%以下の着地になりそうというタイミングで下方修正をしなくてはなりませんが、僕らは上場1年目に下方修正しました。
上場申請で業績予想を出す必要があり、、その予想はバリュエーションの重要な決定要因の一つですが、結果的にそれを達成するための具体的な筋道が描ききれずに未達になってしまったんですね。
さらに上場前は29名だった社員を、1年間で100名以上にまで増やしました。組織のスケールアップと、初の対上場市場に対するコミュニケ―ションというところで、業績のマネジメントが組織的にできず、下方修正し、株価が下がるという悪いスパイラルが起きてしまったわけです。
管理サイドでいうと、CFOに求められる役割が、上場前後で明らかに変わってきたと思います。上場前のCFOは、どちらかというとアカウンティング(企業会計)に強い、経理の実務経験が強い、マルチタスクをスピーディーにこなせるなどの要素が求められていたと思います。
一方上場後は、各事業やプロダクトがマーケット全体に対してどのくらいのポテンシャルを持つのか、どういうステップでマーケットシェアを獲得していくか、事業戦略やIRや資金調達計画をどう逆算して実行していくかといった力が求められます。総合的に計画をたて、3~5年スパンで考えながら実行しなくてはならないため、上場前とは求められる役割は全然違いますよね。
僕らの場合は、この上場前CFOと上場後CFOの役割の違いで、ケーパビリティにギャップが出てきて、組織を再構築するのが大変でした。
上場前後では、事業面・管理面の両方で、そもそものスタンスを変えないといけない。その切り替えが組織やチーム全体でできないと、上場できても苦しくなるし、難しい局面に立たされることになります。
BNG岡本:上場前と上場後のCFOという話が出ましたが、実は弊社のお客様からもCFOはどんな方がいいのかと質問されることは非常に多いんです。坂本さんはCFOについて、どのように考えていらっしゃいますか?
坂本氏:上場前と上場後という分け方はひとつあるとは思うのですが、上場に限らず、事業の目指す方向によって、CFOの仕事は変わってきますよね。
僕自身は今CFOを名乗っているのですが、1年や四半期ごとに自分の時間の使い方はどんどん変わっています。現状と目標のギャップを埋め、何が一番企業価値を最大にするのかを考えることが重要だと思っているからです。
上場前にとにかく大型のエクイティ調達が必要だということであればそれに強い人が求められるし、利益が十分出ている会社であれば、また違いますよね。
たとえば、LITALICOは利益が出ていたので、デット・ファイナンスが中心。上場時はエクイティストーリーのワクワク性より、あるべき資本政策の実現や資本市場へのコミットメントを重視しました。必然的に見せるべき中計(中期経営計画)も変わり、CFOに求められる役割も変わります。
また、組織の面では、経営陣全体でチームとして成果を最大化するマシーンを作るというイメージでとらえています。既存の経営陣との組み合わせだと思うんですよ。
たとえばCOOでもエクイティストーリーを語るのがうまい人がいたら、そこは任せてしまえばいい。僕も過去はいくつか部長兼務をしていましたが、BNGさん経由で上場前後に部長職の採用が決まり、CFOとしての仕事はそこからガラリと変わりましたね。
組み合わせが変われば、役割も変わるということなんです。
BNG岡本:COOや他の役職との組み合わせが重要ということですが、成田さんはCOOの立場としてどうお考えですか。
成田氏:今おっしゃっていたことはそのとおりだと思います。以前、シニフィアンの小林さんとディスカッションしたときに「成田がCFOをやるべき」と言われたことがあるんです。CFOもCOOも、経営として求められる素養はほぼ一緒だと。
財務に詳しい、事業に詳しいという専門性の違いはあるものの、素養があればキャッチアップできるし、たしかにそうだなと思いました。
クラウドワークスでは、CEOの吉田が投資家に会いにいきますし、自分も投資家とのコミュニケーションを行っています。CFOというタイトルがない中で、機能はそれぞれが補い合いながら経営する、というスタイルもありえるとは思います。
重要なのは経営素養。経営のスタイルとか事業の規模、事業のパターンに合わせて自分自身をどのように変化させられるか。その柔軟性と視座の高さがあれば、どの仕事でも適応できるということなのかもしれませんね。
でも、そんな人材はなかなかいないんですよね。結局は専門性でフィットさせるとか、意図的にそういう人材を入れるということが必要なのかもしれません。
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## 強い組織づくりには意図的な揺さぶりが必要
BNG岡本:弊社も幹部採用をお手伝いしているとき、いい人材がなかなかいないというご相談をよく受けます。実際に強い組織を作っていくために、お二人は具体的にどんなピースを作っていったのでしょうか。
坂本氏:私は、事業サイドとして成果を出すための課題は何で、そこで生じるリスクや守りをどうするか、という観点で採用を進めてきました。
特に上場前後は、上場まわりの課題解決が中心になりがちですが、組織は1年~2年後から先読みしていかなくてはなりません。採用にも時間がかかるし、採用した人が慣れるまでにも時間がかかりますから。
また、組織のサイズが変わってきたタイミングで、活躍していたけど活躍しなくなる人がいるというお話しは先ほども出ていましたが、組織の中で求められるものが変わっていき、能力が見いだせなくなるようなことは起きますよね。
アートではなくあえてサイエンス的に考えた配置転換も心がけています。
成田氏:組織は経営者の人格を投影すべきだと、僕はすごく思うんです。どういう組織にしていくのかというのは、100社あったら100社の違うカルチャーがある。
その時に軸となるのは、経営者の人格だと思うんです。非常に緻密にマーケットを見ながらやっていくタイプなのか、感性に訴えかけるビジョナリーなタイプなのか、それとも体育会系がすごくフィットするタイプなのか。作りたい組織像は、経営者によって違いますよね。
ですから、経営者はどういう人格であり、どういう経営者なのかということをクリアに理解している必要がある。そして、それをそのまま組織カルチャーに投影していくと非常にスムーズにいくと考えています。
その基軸をもってからやらなければならないのは、意図的に組織に揺さぶりをかけることです。
あえて逆の考え方を持った人を入れてみる、今フィットするかわからないけどを採用してみる、よく見えていないけれども大量に採用してみるとか。そういう組織的な揺さぶり、配置転換を意図的にしていますね。
あとは、幹部やメンバーがいかに「全体性を持って会社をとらえるか」ということには気をつけています。大きな組織になると、個人・チーム・部門・事業・会社・グループのように階層ができていきます。そうすると、一人ひとりが自分の範囲内に閉じていってしまい、系が閉じがちになります。そうなると、会社は弱くなっていきます。
うちの会社では、たとえば社員の働き方やエンプロイー・エクスペリエンスを考えるチームをプロジェクトベースで作ったり、ミッションブックをメンバーに作ってもらう取り組みをしています。うちは労働に関する事業をやっているので、労働の歴史を考えるプロジェクトを立ち上げる、などもそのひとつです。
社会と会社を含めた全体性の中に自分がいるのかを意識的に考える機会を作り、一人ひとりの閉じる考え方を広げていく狙いですね。
BNG岡本:クラウドワークスさんは上場後に、新卒採用を大量に行いましたよね。あれも揺さぶりだったんでしょうか。
成田氏:そうですね、正社員100名のときに31名の新卒採用をしたというのは、完全に揺さぶりでした。失敗も成功もありましたけど。見えてないことにベットするというのが、うちの経営の人格でしょうね。リタリコさんも、似ている部分がありますよね?
坂本氏:私の場合は、9割は王道行って1割遊ぶというのが経営人格かもしれません。
意図的に揺さぶりをかけるというよりは、勝手に揺さぶりが起きる仕組みを組み込んでいるという感じです。人間って何かを変えるのは難しくて、ついついこれまで通り継続になってしまいがちなので、どんな揺さぶりをかけたいのかを言語化して、仕組みや制度に組み込んでおく。
たとえば、うちは3か月に1回、自分でチーム変更できるという制度を作ったのですが、ここでは私も意外に思うような入れ替えが起きています。優しい人が好きだと思っていたのに、めちゃくちゃ厳しい人の下を自ら選んだなとか(笑)。この制度は自浄作用につながっていると思いますね。
揺さぶりと改修を定期的に行わないと、小さな揺れに耐えられなくなっていったり、不確実性から利益を得るみたいなことがなくなってしまいますよね。
BNG岡本:ジョブローテーションも活発にやっていらっしゃる印象ですが、あれも意図的なものですか。
坂本氏:はい。最近はちょっとさぼちゃっていますが(笑)。意図的にやっていましたね。
経営の方針や価値観に合うことしかやらないという大前提がありつつ、それに沿う形で組織が許容可能な揺らぎを作る。属人性の排除など、長い目で許容不可能な大きすぎる揺らぎを作らないためにやっている感じですね。
成田氏:クラウドワークスでは、僕らから指示はしていないんですが勝手にいろいろなチームが出来上がっていきます。新しいものが勝手に生み出される風土を止めない。これを意図的にやっているというのが、クラウドワークスっぽさのひとつですね。
ボトムアップ型で、新規事業も勝手に動いて、いよいよ影響力が大きくて判断が必要だぞとなると経営会議に上がってくるみたいな(笑)。そういうカルチャーですね。
もちろん既存事業が伸びているという前提ではあるんですが、新しいものが生み出される風土がなければ、会社としてサステナブルに成長し続けることができない。それが良くできているなと思うのは、リクルートさんとか、サイバーエージェントさんがありますけど、彼らも意図的にそれを作っているんじゃないかと思うんです。
上場後、そういった風土の必要性を感じはじめて。新規事業だけではなく、とにかく自分たちが気づいたことを自発的にやっていこうという風土づくりをやってきました。
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## リーダーのもっとも大切な仕事とは
BNG岡本:風土を作ったり、ルールを作ったり、誰がそれを先導するのかというのはベンチャーにおいては重要だと思います。リーダーというと定義が広いですが、坂本さん、成田さん自身の中で、それぞれリーダーのもっとも大切な仕事は何か、というのを定義して教えてください。
坂本氏:「目標を定めて成果を出す」ということだと思います。自分の中でそういう定義があるので、やっていることが1年ごと、四半期ごとに違うんだと思います。
IPO直前は、全社の戦略を作り直し上場にフォーカスしていたし、そのあとはコーポレートの組織化、それを自動運転にするという明確な目標のために部長採用しました。
今は、このままのビジネスモデルとは異なる新規事業を作るところに目標を置いてます。
成田氏:リーダーは、目標セッティングがすべてですよね。ただ、目標の見極めというのは非常に難しくて、組織の中では緊急性の高いことについ目がいきがちです。
でも、「緊急性は高くないが重要性が高い」ことを組織全体でどのようにとらえて、自分なりに手をうつか。それが目標設定の時に重要になるんだと思っています。
坂本氏:重要の定義の仕方というのは、本当に難しいですよね。
感情的に、どうしても気になっちゃうとか自分自身が歪んだ判断をしてしまうことがあると思うんです。緊急か緊急じゃないかはすぐにわかりますが、重要性は見誤ることもありますよね。
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## 採用が強い会社は何を実践しているのか
BNG岡本:採用で具体的にどんなことをやっていらっしゃるのか教えてください。
成田氏:人がその会社に入らなければならない理由がない限り、当然ですが入社しないですよね。ですから、入らなければならない必然性を、会社としてどう作り、どう見せるかだと思うんです。
重要な要素は、4つあると言われています。
まずは哲学。ミッション、会社としての在り方。僕らでいうと「働き方を変える」とか、リタリコさんで言えば「障害のない社会をつくる」とか。そのミッションや哲学が人の心を震えさせるものなのか?ということが非常に重要だとおもいます。
2つ目は、人材。優秀な人、魅力的な人がその組織にいる。この人と働きたいと思えるか。
3つ目は、プロフェッション。つまり仕事内容ですね。この仕事がしたい、エキサイティングな仕事がある、わくわくする仕事があるか。
最後にプリビレッジで、福利厚生とか給料とか、この会社で働くことで得られる実利的なメリット。これはなくてもいいんです。これを捨てるというのもひとつの判断。
会社として何を持っているのかを、自分たちで相当言語化できていないと、その会社に入る必然性は生み出せないんじゃないかと思いますし、それを作るのが経営として大事な仕事ですよね。
坂本氏:我々はまだやり切れていない部分もあるんですが、成田さんがおっしゃっていたのはその通りだと思うんです。
それをどう実現するかということで、私自身が心がけているのは、採用を経営マターとして、ビジネスと同じ視点でとらえるということです。そこから、真剣に実行の仕組みを整えるべきです。
たとえばセールスでは、リードジェネレーションして、インサイドセールスして、営業が成約して、カスタマーサクセスして、という流れの中で、それぞれがプロフェッショナルとして何を求められているかということを緻密に設計しますよね。
採用も、ただ呼んで、面接して、口説いて、見極めるというだけでなく、ひとつひとつの具体的な役割に必要な人と予算は何なのかを考えて、仕組みを整えていくべきだと思うんです。
当社の場合は、職種ごとにスカウトが有効な場合もあれば、媒体で効率的な母集団形成ができるところもあり、それぞれ採用担当者が求められるスキルは違います。
一重に「採用がうまい」とくくってしまいがちなんですが、求められる能力はそれぞれの役割で異なるので、緻密に役割分担をすることをやっている。今はその途上で、ようやくPDCAが回りだしたという感じですね。
BNG岡本:採用の見極めはどのようにしていらっしゃいますか。
坂本氏:見極めは一番難しくて、失敗もありますし、まだまだ大きなことは言えないんですけど。だからこそ、構造化面接のシートを一部で導入してみたり、Webテストとか言語テストとかをやってみたり試行錯誤しています。
成田氏:幹部採用をやるんだったら、僕は数をやることがいいんじゃないかなと思っています。数をたくさんほしいなら、ミスを恐れず採用して、合わないこともあるかもしれない。ただ、それはお互いが合わない中でやるのは不幸になるので別れるという判断もある。それは一定確率は仕方がないと思います。でも全て成功するというのはありえません。自分達がいいと思う人材をどれだけたくさん採用できるか?その中でしか成長もしないと思っています。一方で、もし一人だけ採用するのであれば、社員全員が面接して全員がOKというまで採用しないとか、それくらい極端にやっていいんじゃないかと思いますね。
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## これからIPOを目指す企業に向けて
BNG岡本:最後の質問になります。IPOの最新事情や上場の経験などから、これからIPOを目指す企業に向けてアドバイスをお願いします。
成田氏:未上場マーケットの資金調達環境が5年前とはガラリと変わっているので、それをふまえてIPOを考えるべき、というのが僕の意見です。
資金調達のメリットを考えると、100億~300億円くらいの時価総額で上場マーケットにいるというメリットはあまりないと思います。なぜかというと、そのバリュエーションは未上場でもつきますし、未上場のほうが自分たちのイメージするバリュエーションを主導的につけやすいためです。それだけ未上場のバリュエーションは高まってきています。
IPOを資金調達メリットでとらえるならば、ラクスルさんやSansanさんに代表されるような、それなりの規模のIPOを目指せるようになるまで、未上場でしっかり伸ばしていくというのも選択肢にあがってきている気がします。
一方で、資金調達目的ではないIPOもあるとは思います。我々もそうでしたが、ブランドや認知をとりにいくため、社会の公器になるため、採用力を高めるため、など、様々な目的がある。自社の状況を見極めて、タイミング、規模、その後の成長戦略、エクイティストーリーを決めていくのがいいのではないでしょうか。
坂本氏:上場で、致命的なミスとか、やっちゃいけない意思決定をしているケースはありますよね。当時は成功事例ばかりを見ていたんですが、失敗例からのほうが学べることが多いなというのは感じています。
成功事例は表に出やすいですが、失敗は意外とそれぞれ違っていたりするので、表に出てこない。それを拾いにいって、自社にあてはめて考えてみると、その対策などが見えてくるのではないでしょうか。
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スタートアップ・ベンチャーの多くはIPOをひとつの目標に置いています。しかし今回のディスカッションの中で、IPOはあくまで事業を推進するための通過点であり、その先のストーリーをどう描くかが重要であることを、お二人は繰り返し語っていました。この機会に、自社にとって必要なことは何なのか。数年先のありたい姿から逆算し、検討してみてはいかがでしょうか。
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