自社株が買える権利を意味する「ストックオプション」。企業が上場したときなどに権利を行使すると、自社株の価格が上昇している場合に大きな利益を得られる可能性があることからベンチャー企業をはじめ、さまざまな企業で導入され始めています。この記事では、ベンチャー企業でストックオプション制度を導入する理由やメリットをはじめ、制度を利用する場合の注意点やよくある質問をご紹介します。
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そもそもストックオプションとは
ストックオプションとは、企業が従業員や経営陣に、将来的に特定の価格で株式を購入する権利を与える制度のことです。
以下では、ストックオプションについて下記3つの観点から分かりやすく解説します。
・指定期間内なら定額で株式を購入できる ・自由に売却可能 ・権利を無理に行使する必要はない |
指定期間内なら定額で株式を購入できる
あらかじめ定められた期間内であれば、ストックオプションの権利を付与された従業員や取締役は、定額で株式を購入できます。
購入後は、時価で株式を売却することになり、権利行使価格と株価上昇分の差を利益として得ることができます。
自由に売却可能
ストックオプションの権利はいつでも行使できます。つまり、権利をもっている従業員や取締役は、指定期間内であれば自由に株式を売却することが可能です。
たとえば、「本年から7年間であれば自社株を2,000株まで1株1,000円で購入できる」というストックオプションを付与された後、会社の業績が上向き1株3,000円になったとします。この場合、1株を1,000円で購入して売却できるため、差額分の「2,000円×購入株式数」の利益を得えられるのです。
権利を無理に行使する必要はない
ストックオプションの権利を無理に行使する必要はありません。
そのため、会社の業績が悪化して株価が下落したとしても、ストックオプションの権利を行使しなければ損することはありません。
つまり、ストックオプションを付与された従業員や取締役は、得することがあっても損することはないということです。
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ストックオプションを付与できる対象者は?
ストックオプション制度は、前述の通り従業員や経営陣に付与ができるほか、入社予定者や社外のアドバイザー、業務委託契約者に対しても付与することができます。
ストックオプション制度のある会社に入社予定の方や業務委託契約中の方は、自身が付与対象になっているかを確認してみてください。
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ベンチャー企業がストックオプション制度を導入する理由
ベンチャー企業がストックオプション制度を導入するべき理由は次の通りです。
・従業員のモチベーションアップにつながる ・優秀な人材を確保できる ・ボーナスの代わりにできる |
それぞれの理由について解説します。
従業員のモチベーションアップにつながる
ストックオプション制度を導入することで従業員のモチベーションアップにつながります。
本来、自社株の株価が上がっても従業員に大きなメリットはありません。しかし、ストックオプション制度があれば、株価の上昇を全社一体となって喜ぶことができます。
株価を上昇させるためには会社の業績を向上させる必要があるため、従業員のモチベーションも上がりやすくなるでしょう。
優秀な人材を確保できる
優秀な人材を確保するためにストックオプションを導入するのも効果的です。
待遇のよい企業で働いている人材でも、ストックオプションの権利をもらうために転職を決意するケースは意外と多いです。
また、中にはストックオプション制度を導入しているベンチャー企業だけに絞って転職活動をしている人材もいます。
ボーナスの代わりにできる
創業から間もないベンチャー企業は収入が不安定なため、ボーナスの支給額が少なくなりやすい傾向にあります。しかし、ストックオプションを導入することで、少ないボーナスを補うことが可能です。
業績が向上した後に大きなリターンがあることを事前に説明しておけば、優秀な人材の採用にもつながるでしょう。
また、ストックオプションはボーナスの代わりとして支給できるため、高い給与を支払うのが厳しいという企業は導入を検討したり実施したりしていることもあります。
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ベンチャー企業でストックオプション制度を利用するメリットは?
従業員がベンチャー企業でストックオプション制度を利用するメリットは次の通りです。
・大きなキャピタルゲインを得られる可能性がある ・早く入社するほど獲得可能株数が多くなる |
それぞれのメリットについて見てみましょう。
大きなキャピタルゲインを得られる可能性がある
ストックオプションは、あらかじめ定められた価格で株式を取得できますが、権利行使価格は企業により異なります。ほとんどの場合は、ストックオプションの権利を付与した際の時価ですが、企業によっては1円や100円など、通常の株価よりも大幅に低い価格に設定している企業もあります。
権利行使価格を低価格に設定している企業に入社し、ストックオプションの権利を行使することで大きなキャピタルゲインを得ることも可能です。
IPOにより株価が大幅に上昇したあとにストックオプションを行使すれば、数億円の資産が手に入る可能性もあるでしょう。実際、そういった数億円規模のキャピタルゲインがあった事例は、メガベンチャー企業を含め複数あります。
早く入社するほど獲得可能株数が多くなる
早く入社することで獲得可能株数が多くなります。企業のフェーズを大きく分けると「創業期」「成長期」「安定期」となり、創業期に近いほど獲得可能株数が多くなりやすいです。
ストックオプションを発行し過ぎると、株主が保有している株式の価値が相対的に落ちてしまいます。そのため、企業は従業員が増加するにつれてストックオプションの付与率を少しずつ下げるのです。
もしストックオプションを導入している創業期のベンチャー企業に入社できれば、獲得可能株数も多いため、大きなキャピタルゲインを得られる可能性が高まります。
また、創業期は従業員が少なく、一人当たりの作業量が多くなりやすい傾向がありますが、代表取締役と顔を合わせる機会が多いため成長につながりやすいというメリットもあります。さらに創業したばかりの企業が運営する事業に参画し、業績を伸ばしたという実績があれば、今後の転職活動も有利に進められるでしょう。
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ベンチャー企業でストックオプション制度を利用する際の注意点
ベンチャー企業でストックオプション制度を利用する際に注意すべきポイントは次の通りです。
・在籍期間等の行使条件が設定されている場合がある ・自社株の価格が上昇しない可能性がある ・ストックオプション目当てで転職をしない |
一見するとメリットが多いストックオプション制度ですが注意点もあります。以下で確認しておきましょう。
在籍期間等の行使条件が設定されている場合がある
ストックオプションは、在籍期間等の行使条件が設定されている場合があります。行使条件が設定されている場合は、自由にストックオプションの権利を行使することができません。
行使条件は基本的に、権利を行使した従業員がすぐに退職することを防いだり、得られる利益の偏りを防いだりするために設定されてます。
たとえば「ストックオプション権利が付与されてから2年経過するまでは権利を行使できない」「退職後10日以内に限り権利を行使できる」といった行使条件があります。
したがって、ストックオプション目当てでベンチャー企業に入社する場合は、事前に行使条件を把握しておく必要があると言えるでしょう。行使条件を把握しておかないと、思わぬ落とし穴にはまってしまうリスクもあります。
そういったリスクを未然に防ぎたい人は、転職エージェントに相談しながらベンチャー企業を選ぶとよいです。転職エージェントは、その企業についても詳しいため、行使条件はもちろん入社することで得られる副産物や、注意点などもあらかじめ伝えてくれます。
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自社株の価格が上昇しない可能性がある
自社株の株価が上昇しない可能性がある点にも注意しておきましょう。ストックオプションの権利が付与されていても、株価が上昇しなければ大きな利益を得ることはできません。
また、株価が上昇しているときは仕事にも気持ちが乗りますが、株価が下落しているとモチベーションも下がりやすいです。
そのため、ストックオプションを導入しているベンチャー企業への転職を考えている場合は「今後の業績が伸びる企業であるかどうか」「企業が展開するビジネスの将来性はあるか」などの点を事前に把握しておく必要があります。
ストックオプション目当てで転職をしない
ストックオプション目当てでの転職はできるだけ控えましょう。ストックオプションの権利は魅力的ですが、行使条件や株式に関することが原因で思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあるためです。また、自身のモチベーションをキープできず、IPOをする前に退職してしまうケースもあるでしょう。
そのため、ストックオプションの権利は、あくまで「福利厚生の一部」程度に見ておくのがおすすめです。給与面や業務内容など、ほかの重要な点もしっかりと見ておきましょう。
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ストックオプションに関するよくある質問
ここからはストックオプションについて求職者や従業員からよく聞かれる質問に回答します。
Q. 「ストックオプション」と「株式報酬」の違いはなんですか?
株式報酬とは、一定の条件(勤務期間、業績目標の達成など)を満たした際に、従業員が「株式そのもの」を報酬として受け取ることができる制度です。この株式は市場で売却することができ、その時点での市場価格によって利益を得ることができます。
ストックオプションとは異なり、株式報酬は株価の上昇や下落リスクと直接連動しないという特徴があります(ただし、株価の上昇による配当や資本利得の恩恵は受けられます)。
Q. 従業員によってストックオプションの内容が違うようです。不公平に感じるのですが…。
企業内でストックオプションの条件が従業員ごとに異なることは珍しくありません。企業は、ストックオプションを効果的な報酬やモチベーションツールとして使用するため、その条件を柔軟に設定することが多いです。入社時期や役職、経験やスキル、採用時の交渉などによって、ストックオプションの内容に違いが生じます。
Q. ストックオプションが付与される際に、税金はかかりますか?
一般的にはストックオプションを付与されたタイミングでは税金はかかりません。
Q. ストックオプションを行使する際に、税金はかかりますか?
ストックオプションを行使すると、行使価格で株式を購入することが出来ます。本来はこの株式を売却することで利益を得られるわけですが、株式を売却する前であっても、株式の市場価格とストックオプションの行使価格との差額に対して課税されることがあります。
ストックオプションには「税制適格ストックオプション」と「税制非適格ストックオプション」があり、下記の表のような違いがあります。「税制非適格ストックオプション」の場合は現金が得られる前に納税が発生することになるため、注意が必要です。
なお、どちらの場合であっても、株式を売却した際の利益(売却価格と行使価格の差額)には課税されます。
ストックオプション行使時 | 株式売却時 | |
税制適格ストックオプション | 課税なし | 課税あり |
税制非適格ストックオプション | 課税あり | 課税あり |
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まとめ
本記事では「ベンチャー企業がストックオプションを導入する理由」「ストックオプション権利のメリットと注意点」などを紹介しました。
ストックオプションを導入しているベンチャー企業に入社することで、キャピタルゲインによる大きな利益を獲得できる可能性があります。
しかし、ストックオプションは基本的にIPOをすることが前提条件としてあるため、必ずしも利益を得られるとは限りません。ベンチャー企業に転職する際は、ストックオプション導入の有無のほかに見るべきポイントがいくつもあるということです。
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