IT化が進むにつれて、メディアなどで聞く機会が増えてきた「ベンチャー企業」と「スタートアップ企業」。混同して使われることが多いのですが、実はまったくの別物なんです。この記事では、スタートアップとベンチャーのそれぞれの違いや特徴から、働くときに覚えておきたいことをご紹介します。
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スタートアップとベンチャーの違いとは?
ここではスタートアップとベンチャーの違い、そしてよく比較されている中小企業との違いについても解説します。
スタートアップの定義とは?
そもそも「スタートアップ」という言葉は、世界のIT企業が集まるアメリカのシリコンバレーで使われ始めたものです。スタートアップは「新しく設立されたばかりの企業」を意味しており、現在でも明確な定義はありません。日本では、一般的にスタートアップ企業を「革新的・最新的なアイデアやビジネスモデルで短期間で成長する創業2〜3年の企業」と定義づけていることが多いですが、経済産業省ではスタートアップ企業の特徴を次のように定義づけています。
【スタートアップ企業3つの特徴】
- 成長スピードが速い
- ビジネスに斬新性があり、イノベーション、社会貢献を意識している
- 出口戦略(イグジット)を検討している
ベンチャーの定義とは?
そもそも「ベンチャー」とは、ベンチャービジネスという和製英語から派生した言葉であり、現在では一般的に「大企業の枠組みでは取り組みにくい独自の技術や新しいアイデアを積極的に実践して成長する企業」のことを指します。
明確な定義付けは行われておらず、学的歴史の浅い企業のことを総称して「ベンチャー」と呼ぶケースが日本では多いですが、経済産業省で定期的に行われている「ベンチャー有識者会議」では、ベンチャー企業のことを次のように定義づけています。
【経済産業省によるベンチャー企業の定義づけ】
- ベンチャーとは、新しく事業を興す「起業」に加えて、既存の企業であっても新たな事業へ果敢に挑戦することを包含する概念のこと
- ベンチャーとは、、産業における新成長分野を切り拓く存在であり、雇用とイノベーションを社会にもたらす、経済活力のエンジンである
中小企業との違いは?
スタートアップと中小企業では「資本金と従業員数」という点で大きな違いがあります。中小企業は「中小企業基本法」という法律で、資本金と従業員数が業種ごとに定められており、具体的な数字は以下のとおりです。
【中小企業基本法で定められた業種ごとの資本金・従業員数】
業種分類 | 中小企業基本法の定義 |
製造業その他 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人 |
卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
小売業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人 |
サービス業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
(※なお上記にあげた中小企業の定義は、中小企業政策における基本的な政策対象の範囲を定めた「原則」であり、各法律や制度によって「中小企業」として扱われている範囲が異なるケースがあります。)
一方、スタートアップの場合は、中小企業のように法律によって資本金や従業員数が定義づけられてはいません。
またスタートアップと中小企業では、企業としての「目標達成と事業成功率」という点でも違いがあります。
スタートアップは最先端・未知の領域で積極的にビジネスを行うので、時には成功率が低いハイリスクな選択をとることも多く、事業が成功するかどうか見通しを立てるのは難しいというケースが多いです。
一方で中小企業の場合、既存のビジネスモデルに従って着実に成功する選択をとるので、事業がどれくらい成功するのかある程度見通しを立てることができます。
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ビジネスモデルからみるスタートアップとベンチャーの違い
ここでは以下の4つの柱に分けて、スタートアップとベンチャーには会社としてビジネスモデルにどのような違いがあるのか解説していきます。
- 成長速度の違い
- 収益性の違い
- 資金調達方法の違い
- EXIT戦略の有無
成長速度の違い
スタートアップ企業とベンチャー企業では、成長速度に大きな違いがあります。
一般的にスタートアップ企業の場合、創業してから約5年以内に資金調達をしてIPOを目指すことを目標として掲げるケースが多いです。
一方でベンチャー企業の場合、創業してから約10年以内のIPOを目指すケースが多くなっています。
そのためスタートアップ企業とベンチャー企業を比べると、スタートアップの方が創業してから数年は大きな赤字を出しながら事業拡大していく傾向が強いと言えるでしょう。
【スタートアップ企業の成長速度イメージ】
引用元: 地方創生に向けたスタートアップエコシステム整備促進に関する調査事業報告書|経済産業省中国経済産業局
収益性の違い
スタートアップはこれまでまったくないビジネスモデルが未開拓の領域への挑戦を行っていくケースが多いため、サービスやプロダクトが確立するまでは赤字が長く続く傾向にあります。もっともサービスやプロダクトが確立してから、急成長して一気に黒字化するケースが多いです。
一方でベンチャー企業の場合、これまでのビジネスモデルを基本として、スケールを拡大し売上を増大したり、収益性を高めるために大企業が行っていない工夫をしたりするケースが多いと言えます。
そのためスタートアップ企業と比較すると、着実な経営を行い早い段階での黒字化で、安定した収益を上げるケースがベンチャー企業には多いです。
EXIT戦略の有無
スタートアップの多くは「EXIT戦略」を持っています。EXIT戦略とはいわゆる出口戦略のことで、成長した会社の株式上場やM&Aを通して投資資金を回収し、利益を生み出すことを指します。
事業を立ち上げる際に莫大な資金を投資するスタートアップは、初期の段階では収益が上がらないことがほとんど。このため運転資金をベンチャーキャピタル(VC)からの出資などでまかなうことが一般的です。VCから資金調達するには将来的な利益を見据えた事業計画を作成し、出資者に納得してもらう必要があるため、EXIT戦略は欠かせません。
一方、ベンチャー企業の中には、創業時から事業拡大や多角化を目指していて、EXIT戦略を持たないところも少なくありません。
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国も注目するスタートアップ
国もスタートアップ企業の可能性に注目し、さまざまな支援制度や振興策を用意しています。ここでは経済産業省のサイトから、そのうちのいくつかを紹介します。
スタートアップの支援制度
スタートアップの支援制度は、主に資金面の支援と税制面の支援、人材育成や開発に関する支援に分けられます。
【資金面の支援】
新規開業支援資金
新創業融資制度
創業支援貸付利率特例制度
スタートアップチャレンジ推進補助金
【税制面の支援】
特別試験研究費税額控除制度
ストックオプション税制
【人材育成・開発に関する支援】
官民による若手研究者発掘支援事業
研究開発型スタートアップ支援事業 Seed-stage Technology-based Startups(STS)
研究開発型スタートアップ支援事業 SBIR推進プログラム
スタートアップの振興策
経済産業省では、スタートアップに対する認知を広げ、新たなスタートアップの活躍を促進するための振興策を用意しています。
【日本スタートアップ大賞】
日本スタートアップ大賞は、次世代を担う若者や起業家のロールモデルとなるような、社会的インパクトのある新事業を創出したスタートアップを表彰する制度です。
【J-Startup Impact】
J-Startup Impactは、インパクトスタートアップ(社会課題の解決と経済的な成長を両立して、社会に良い影響を与えるスタートアップ企業)に対する認知向上や支援の気運醸成を目的に、潜在力の高いインパクトスタートアップを選定する制度です。
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スタートアップで働くときに覚えておくこと
ここではスタートアップで働く際に、覚えておきたい3つのポイントについて解説します。
スタートアップで働くときのメリットとデメリット
スタートアップで働く場合のメリットは、以下のとおりです。
【スタートアップで働くメリット】
- 新しい価値を社会に提供できる
- 一人ひとりに裁量権がある
- 決定権を持ったポジションで働きやすい
- 企業としての成長を身近に感じられる
- 経営陣との距離が近い
スタートアップは大企業や中小企業と比較して、従業員数も少なく企業規模も小さいです。しかしその分、一人ひとりが裁量権を持った立場で働くことができるため、企業としての成長を感じやすく、個人としても勉強や成長できる機会が多いと言えます。
次にスタートアップで働く場合のデメリットを見ていきましょう。
【スタートアップで働くデメリット】
- 給与面や福利厚生などの待遇面はよくない
- ハードワークになりやすい傾向がある
- 大企業や中小企業と比較すると安定していない
スタートアップで働く最大のデメリットは、大企業や中小企業と比較すると安定していない点です。事業が赤字のケースも多いので、場合によっては会社が潰れてしまい働き先がなくなってしまうケースもあります。
また給与面や福利厚生などは、大企業や中小企業と比較しても整っていないことがほとんどです。従業員の数も少ないため、一人ひとりの働く量が増えてしまいハードワークになりやすい傾向もあります。
スタートアップに向いている人
スタートアップに向いている人の特徴は、以下のとおりです。
【スタートアップに向いている人の特徴】
- 積極的に仕事へ取り組める
- 経験のない事態に柔軟に対応できる
- 常に変化や刺激がある環境を求めている
- 将来自分も独立や起業を考えている
企業として短期間で成長を目指すスタートアップでは、いきなり業務の進め方や事業の展開が大きく変化するというケースも多いです。
そのため経験のない事態に対しても柔軟に対応でき、楽しみながら積極的に仕事へ取り組める人がスタートアップに向いていると言えます。
また企業によっては立ち上げ段階の場合もあるので、将来的に自分も独立や起業を考えているという人にもスタートアップは適していると言えるでしょう。
スタートアップを選ぶときのポイントとは?
スタートアップ企業へ転職する場合、以下の4つのポイントを基準にして選ぶのがおすすめです。
【スタートアップを選ぶときの4つのポイント】
- 企業のビジョンやサービスに共感できるか
- 事業の規模と自分の能力や考えが適しているか
- 市場の成長性があるところで事業を展開しているか
- 他の企業と比べて優位性はあるか
もしスタートアップ企業に転職を考えているのであれば、転職支援サービスを利用するとよいでしょう。
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まとめ
スタートアップは、ベンチャーや中小企業と比較しても、一人ひとりに与えられる裁量権が大きく、迅速な意思決定を求められます。
また、これまでにない新しいビジネスモデルやサービスを生み出すことを目的としており、それを身近で感じながら働くことできる楽しさもスタートアップの魅力です。
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