【後編】バックテック・満沢将孝 × BNGパートナーズ・岡田丈広|世の中をより良くするために。VUCAの時代に求められる組織力強化の方法論

企業の健康経営を支援するサービス「ポケットセラピスト」を提供し、多くのクライアントから支持されるばかりか、誰もが知る大企業とも業務提携を結ぶ、株式会社バックテック。2023年6月、そのバックテック社に取締役COOとしてジョインしたのが満沢将孝氏です。

満沢氏は新卒入社した不動産会社で取締役となり、その後名古屋を拠点とするHRtechのスタートアップ、スタメン社に転職。取締役として事業責任者からCHROまで経験し、事業の成長と組織基盤の強化を牽引してきた人物です。

前編では不確定要素が多く、なおかつ、情報が民主化した現代に求められる強い組織の姿が明らかになりましたが、後編では組織を強化するための“HOW”にフォーカス。前編に引き続き、BNGパートナーズのエグゼクティブサーチ事業部に所属し、チームリーダーとして企業の幹部採用を支援する岡田丈広が迫ります。

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強い組織を育むための“HOW”は、迅速なフィードバック

岡田:情報が民主化された現代だからこそ、企業には組織の強さが求められ、強い組織はメンバー全員が事業や自社の成長を主語に、同じ方向へ進んでいく。では、そうした強い組織を育むには、どうすべきなのでしょうか。満沢さんが考える、強い組織を育むための“HOW”をお教えください。

満沢:メンバーが共に成長へと向かえている企業を強い組織と定義するなら、経営方針にしても戦略にしても、あらゆる情報共有の頻度を増やすことと、精度を高めることが欠かせません。経営方針も戦略も、メンバー全員が知っている、では事足りず、メンバー全員が理解し、共感できていることが重要ではないでしょうか。そうでなければ、緊急事態に対応できない。自社の方針が自分ゴト化になっていないと、危機感を覚えづらくなります。

岡田:自社が厳しいときに、すぐに危機感を持てる。なるほど、非常に重要ですね。言い換えれば、常に緊張感を持ちながら仕事に臨む、ということでしょうか。自分たちが掲げた目標を達成することに満足していては勝ちきれず、すぐに追い抜かれてしまう。自社の物差しだけに甘んじることなく、メンバー全員が常に緊張感と危機感を有していることも、強い組織に必要な要素かもしれません。

満沢:では、自社の方針を自分ゴト化するためには、どうすべきなのか。共有する情報に齟齬があってはいけません。齟齬が生じないよう、伝える情報をドキュメント化することが大切ですが、意外と見落としがちなのが、情報の受け手であるメンバーに対する迅速なフィードバックです。なぜなら、情報をきちんとドキュメント化したとしても、一定の齟齬は生じます。これは仕方のないことです。

大事なのは情報の送り手である経営側がその齟齬に気づき、迅速に軌道修正できるかどうか。情報をもとに動いたメンバーに向け、「それは違うよ。正しくはこうだよ」とスピーディーに伝えなくてはなりません。これは齟齬なく情報を受け取り、動いてくれたメンバーに対しても同様です。経営側がきちんと「グッドだよ」とフィードバックすれば、「なるほど、これが正しいのか」と、ほかのメンバーも認識できます。

生じた齟齬をいかにスピーディーに軌道修正するかは、私自身、常に意識しているところです。この手の情報共有は、何より新鮮さが大事になります。情報を伝えた一週間後に「あの件だけど」と切り出しても新鮮味が欠けますし、その結果、危機感や緊張感を削ぐことにもなりかねません。明らかな齟齬はもちろん、ちょっと気になったときにもメンバーに声をかけ、認識を摺り合わせることを徹底しています。

スタートアップのCxO転職の面談とフォローのリアル

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転職とは、人生を変えるに値するだけの意思決定

岡田:軌道修正のための、迅速なフィードバック。確かに重要ですね。私も意識するようにしていますが、特に気を配っているのが、話の棚がそろっているかどうかです。情報共有の精度を高めるには質より量。抽象度や具体度の濃淡も伝えるべき情報のテーマ性も、棚がそろっていないと、受け手が理解するまでに時間かかかってしまいます。逆に言えば、話の棚をそろえることで、情報共有が迅速化するはずだ、と。

満沢:“棚をそろえる”という表現、めちゃくちゃいいですね。発信側が論点を整理してこそ、きちんと伝わります。というのも、発信した瞬間に責任から離れる人は意外と少なくない。発信とは、受け手側に齟齬なく届き、行動が変わったときに初めて意味を成します。マネジメントする立場にある人なら、しっかりと意識すべきです。

岡田:では、強い組織を育むために必要な、人物像についてはいかがでしょう? 私たちBNGパートナーズもバックテックの人材採用を支援させていただいていますが、人なくして組織は形成できません。

満沢:私はまずもって、強い組織の基盤になるのはスキルよりもカルチャーだと考えています。スキルが高い人だけを採用しても強い組織を作ることはできないと考えており、経営側のマネジメントによって自社のカルチャーをメンバー全員に浸透させられてこそ、結果的に強い組織になっていく。そうした考え方を前提に、人材採用において重視しているのがエネルギー量。これは自社の採用を支援いただくに当たり、BNGさんにもお伝えしていることです。

正直なところ、実際のスキルは一緒に働かないとわからない。もちろんお話しいただくスキルや経歴自体も魅力的と感じることはありますが、その人単独で出せたバリューはどれくらいなのかを見極めるは極めて難しいし、何より再現性があるかわからない。環境が変われば色々なことをアンラーニングしながら、成果にコミットする環境が待っているからこそ、転職にかけるエネルギー量を知りたい。

同時に面談などでは、言動が一致しているかを見ています。過去の成功や失敗も将来へのビジョンも、そこに一貫したストーリー性があると、その方のキャリアが立体的に見えてきます。その立体性に人としての深みを感じますし、採用後の活躍が見て取れるな、と。

私自身もそうであったように、転職とは人生を変えるに値する意思決定であり、言い換えるなら、自分が向き合うべきビジネスへの覚悟ですよね。

あなたの職歴。スタートアップ企業の幹部候補かも

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組織強化の施策も制度も、機能しなければ意味がない

岡田:転職とは、人生を変えるに値するだけの意思決定。その言葉の重みは、御社の採用を支援させていただく立場としても、ひしひしと感じます。そして、結果的に強い組織を育んでいくカルチャーの浸透に関しても納得ですが、スピード感ある情報共有のほかに、何か具体的に採られている施策はあるのでしょうか?

満沢:そうですね。情報の発信側として意識していることはお話ししましたが、組織全体としてはリズムの構築を大切にしています。具体的には私がバックテックにジョインして以降、週に一度の全体会議やチームミーティング、月に一度の懇親会を定例化しています。こうした機会がリズム良く行われると、社内で共有すべき意思決定だけでなく、動きにも統一性が生まれます。これも強い組織につながる要素です。

ほかにもオフィス移転に伴って、出社とリモートの比率を切り替えたのをきっかけに、期間限定のシャッフルランチを試みたんです。本当にただのシャッフルランチなのですが、いかに根付かせるのかが重要。そこで、オフィスの移転先である芝浦になぞらえ、“Shibaランチ”と命名しました(笑)。これがくだらないようで、意外と侮れない。ネーミング一つで組織への浸透度がガラッと変わりますから。

岡田:なるほど。満沢さんらしさを感じるのと同時に、組織への浸透性にも納得です。これはバックテックのビジネス領域である健康経営も同様ですが、どんな施策を講じても、根付かなければ意味がありません。そのためにネーミングを工夫されるというのは、やはり、満沢さんならではです(笑)。

満沢:ネーミング、けっこう重要ですよ(笑)。それにおっしゃるとおり、施策にしても制度にしても、導入した瞬間に終わり、となるケースは少なくありません。あらゆる企業が当然のように取り入れている1on1も然り。バックテックでも私のジョインをきっかけに1on1を導入しましたが、これをやるにも、きちんと効果測定を伴う体制にしています。施策の効果をしっかり検証しなければ、次第に形骸化してしまうので。

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「人生変わったな」と思えるくらい、挑戦できる組織に

岡田:ありがとうございます。これは今日のお話からも、日ごろから御社を拝見していても感じることですが、満沢さんは非常に緻密に、体系的に組織戦略を練られている一方、バックテックに入社され、活躍されている方は幸せだろうな、と思うんです。とても稚拙な表現になってしまいますが、満沢さんの緻密なマネジメントがあるからこそ、お互いが馴れ合わずとも、メンバー同士が肩を組んで前に進めるような。

満沢:こちらこそ、ありがとうございます。人材採用は、やはり難しい。簡単ではありません。バックテックに入社される方にとっては、人生の転機です。一方、企業にとっても採用は大きな投資です。だからこそ、事業と組織を成長させるために背中を預け合える方々とご一緒したいと強く考えています。

これからも共に成長に向かって進んでいくには、やはり、エネルギー量のある人材が必要です。今後、「ポケットセラピスト」をより広めていくのはもちろん、さらなる事業の展開も考えており、事業拡大や新規事業の立ち上げに挑戦したい方を求めています。求める以上は、より多くのチャレンジや機会を提供し続ける組織でありたい。「転職して良かったな」ではなく、「転職して人生変わったな」と思っていただけるくらい、大きな挑戦を続けていく先に、より強い組織の姿があるはずです。


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